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風・芒  作者: REI-17


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第300章 これじゃ本当に恋に浮かれた小娘じゃない

第300章 これじゃ本当に恋に浮かれた小娘じゃない

*

この日、皆の懸命な労働に対し、農家たちから豪華な食べ物が贈られた。サツマイモ、トウモロコシ、落花生のほかに、様々な野菜や家で飼っている鶏やアヒルまでもが含まれていた。帰り道、兵士たちは声を張り上げて歌い、和気あいあいとした雰囲気に包まれていた。

凛凛はこっそり天火を引き止め、まだ自分を「お父さん」と呼んでくれる気があるか尋ねた。天火は首を振り、小声で言った。「ダメだよ。これからは『朱凛君』って呼ばなきゃいけないんだ」

凛凛はひどく落ち込んだ。小鹿はいつも優しくお人好しだが、今日突然見せた強硬な態度は、実に恐ろしいものだった。

*

前方では、小鹿が蓮磨と楽しそうに談笑していた。

「あいつ、その後また『側室を迎える』なんて馬鹿なことを言いましたか?」

「その話はもう出していませんよ。ただ、私の『飛蛮ひまん』を欲しがって、一つ譲れとしつこくてね。断るのに苦労しましたが、断った後も別に機嫌を損ねる様子はありませんでした」

飛蛮は蓮磨の秘蔵の武器であり、蓮の実に百年の育成とじゅをかけて練り上げたものだ。索敵や精密攻撃だけでなく、服用すれば緊急時に膨大なエネルギーを急速に供給できる。彼にとって極めて重要なものであり、簡単に人に譲れるものではなかった。

小鹿は拱手きょうしゅした。「お恥ずかしいところをお見せしました。本当に失礼な奴です」

「構いませんよ。実際、彼の天賦は非常に高い。基礎もすでに出来上がっているし、修行の苦労も厭わない。将来は必ず大成するでしょう。彼の頭にある常識外れな考えや型破りな発想も、必ずしも間違いとは限りません。あまり厳しく教え込みすぎないことです」

小鹿は笑った。「側室さえ迎えなければ、他の考えは自由に伸ばしていいと思っていますよ」

蓮磨もそれを聞いて笑った。

*

鏡風が勾芒の側に寄り添うと、勾芒は彼女を遮って言った。「今日はたくさん汗をかいたから、体が匂うかもしれない。少し離れていた方がいいよ」

鏡風はくんくんと匂いを嗅いで、「別に気にならないわ」と言い、やはりぴったりと寄り添った。

勾芒は笑って彼女の手を握った。しかし、手のひらはまだむず痒く、彼が少し身をすくめると、鏡風は姿勢を変えて彼の腕を抱きしめた。

彼女がこうして自分に密着しているのを見て、勾芒の心は充足感で満たされた。さらに奪炎が言っていた「彼女はプレゼントを枕元に置いて寝て、顔に跡がついていた」という話を思い出し、得意げな気分になった。彼は頭を下げて小声で言った。「妻よ、君が好きだ」

鏡風は答えなかったが、より強く寄り添った。勾芒は彼女の呼吸が少し荒くなるのを感じた。

*

主神区に戻ると、皆それぞれ自分の宿舎へ帰っていった。鏡風たちは大王宮へ自分の着替えを取りに行き、立ち去ろうとした。

勾芒が歩み寄った。「体を洗ってからまたおいで。一緒に夕食を食べよう。今日の食事は、私も楽しみにしているんだ」

皆は承諾し、一緒に大王宮を出た。

**

扉を閉めると、小鹿が尋ねた。「一緒に風呂に入るかい?」

その笑顔がいつも通り優しかったので、凛凛は聞いた。「もう怒ってないの?」

「そんなにずっと怒っていられるわけないだろう。今日、蓮磨護衛と一緒に動いてみてどうだったか教えてくれ」

「……結局、お仕置きの時間なの?」

「お仕置きじゃないさ。ただ、君が楽しかったかどうか知りたいだけだよ」

凛凛は小鹿の顔をじっと見つめ、罠ではないと判断してから言った。「楽しかったわ。でも、ええと……」

「でも、何だい?」

「彼を側室にするのは、もうやめるわ」

「どうして?」

「彼、すごく厳しいんだもの」

小鹿は内心吹き出した。彼は近づき、凛凛の首に腕を回して額を突き合わせた。「僕だって、すごく厳しいよ」

凛凛は今日叱られた時のことを思い出し、恨めしそうに言った。「あんなに怖くしなくてもいいじゃない」

「また側室なんて言い出したら、また怖くするからね」

彼は小さな声で「意地悪……」と呟いた。その姿は少し可哀想で、無限に愛らしかった。

小鹿は彼の顎を持ち上げ、力強く口づけした。凛凛は「ん……」と声を漏らし、体がぐにゃりと柔らかくなって彼の胸に倒れ込んだ。

*

夫諸は呼吸が苦しくなるのを感じ、小鹿に釘を刺した。『適度にしておけ。さもないと一緒に風呂に入れなくなるぞ』

小鹿は答えた。『もう、無理ですよ』

夫諸は小鹿の体の変化を感じ取り、ひどく狼狽した。すぐに静心呪じょうしんじゅを唱えて彼を落ち着かせようとした。

しかし、凛凛に気づかれてしまった。彼は小鹿をぐいっと掴み、からかうように言った。「旦那様、なかなか勇ましいじゃない」

夫諸の嘆きを聞きながら、小鹿は小声で「ごめんなさい」と謝り、顔を赤くして凛凛を突き放した。「さ、先に風呂に入ってくる!」

「私と一緒にじゃないの?」

「君は……君は自分で浄化しなさい!」

凛凛はニヤリと笑い、彼が浴室へ逃げ込むのを見送ると、収穫したサツマイモを持って庭のノロ君に餌をやりに行った。

*

鏡風は奪炎に小鹿と凛凛を呼びに行かせ、自分は一人で大王宮に戻った。

宮人が挨拶に来ると、彼女は尋ねた。「帝尊は?」

「まだお体をお洗いになっているはずです」

鏡風の心臓がどきりと跳ね、立ち去った。

*

勾芒は簡単にシャワーを浴びるだけのつもりだったが、浴室には見事な温泉があり、その湯質の良さに誘われて中へ浸かってしまった。たちまち心地よさに抗えなくなった。彼は傾斜した玉造りの池の壁に寄りかかり、少し顔を上げて目を閉じた。全身を流れるお湯の柔らかな感触は、まるで女性の滑らかな指先が肌を滑っていくようで、少し心が浮き立つような感覚を覚えた。

*

挿絵(By みてみん)

鏡風はそっと屋根瓦を一枚剥がした。しかし鼓動が速すぎて息が苦しく、彼女は瓦を胸に抱えて気持ちを落ち着かせなければならなかった。自問自答が始まる。

(そこまでする?)

(ええ)

(恥ずかしくないの?)

(恥ずかしいわよ)

(それでも見るの?)

(見たいのよ)

(こんな破廉恥なことをしたら、一生自分を蔑むことになるわよ)

(……いいわよ、私、面の皮は厚いから)

(やれやれ、女ってやつは!)

*

勾芒の肉体は三十五歳。男として、おそらく最も脂の乗った年齢だろう。健康的な肌の色、艶やかで滑らかな肌質。身長は小鹿より頭半分高く、実に堂々として威厳がある。肩から腕、胸から腹、そして太腿からふくらはぎに至るまで、筋肉のラインはどれも流れるように美しく、まるで名工が一寸ずつ彫り上げた彫刻のように完璧だった。

恥じらいを捨て去ると、視界が一気に開けた。鏡風は瓦を脇に置き、身を乗り出して、片手で顎を突きながら、自分だけの男を心ゆくまで鑑賞した。もう片方の手は空中で優しく動き、彼の肉体の起伏をなぞるように動いた。実のところ、彼女は普段から勾芒にべたべた触っており、ほとんど触り尽くしている。しかし服の上からでは、結局は「隔靴掻痒かっかそうよう」、もどかしいだけだった。

今、彼はこうして完璧な姿で目の前にあり、すべてが露わになっている。しかし、彼女には触れる勇気がない。

次第に口の中が乾き、体も熱を帯びてきた。

(まずいわ、これじゃ本当に恋に浮かれた小娘じゃない……)

*

奪炎が小鹿と凛凛を連れて大王宮に戻ってきたが、鏡風の姿が見当たらない。彼は蓮磨に尋ねた。

蓮磨は言った。「宮人の話では来ているようですが、私と天火は見ていません」

「帝尊は?」

「まだお風呂ですよ」

奪炎は礼を言うと、勾芒の部屋の方へ向かった。心の中で思った。(まさか? 二人で『越矩えつく』してるんじゃないだろうな?)

外の扉が開いていた。彼は中に入り、大声で呼ぼうとして思いとどまった。(二人は婚約しているし、お互い合意の上なら、俺が邪魔する理由はない。まさか嫉妬か?)

結局、彼はあきらめて外に出たが、好奇心で心がかき乱されていた。

凛凛が歩み寄って尋ねた。「師伯と帝尊は部屋で何してるの? なんで出てこないのよ」

「子供は大人の事情に首を突っ込むな」 奪炎は彼を引っ張って行こうとした。

凛凛は抵抗した。「私だって結婚してるんだから、全部わかってるわよ!」

「わかっているなら、なおさら避けるべきだろう。『見ざる聞かざる』だ」

凛凛は驚いて聞いた。「二人は本当にイチャイチャしてるの?」

「声を落とせ!」 奪炎は慌てて彼の口を塞いだ。「知らないよ、中には入ってないんだから」

「じゃあ、八割方そうね!」 凛凛は思わずクスクスと笑い出した。

*

その時、鏡風が天から舞い降りるように目の前に着地した。下の騒ぎを聞いて、慌てて屋根から降りてきたのだ。もしこのことが朱凛に知られたら、彼女は一生「妖」として胸を張って生きていけなくなる。

凛凛はがっかりしたように聞いた。「師伯、帝尊と一緒にいたんじゃないの?」

「違うわ。来ても誰も話し相手がいなかったから、屋根の上から主神区の夜景を眺めていただけよ」

「ふーん、つまんないの」 凛凛はそう言うと、天火のところへ遊びに行ってしまった。

でも奪炎はすべてを察し、ニヤリと笑って聞いた。「屋根からの眺めはどうだった?」

「最高だったわ」

彼は吹き出した。

「何がおかしいのよ?」 鏡風は警戒した。

「別に」 奪炎は平静を装った。

鏡風の顔は一瞬で真っ赤になり、言葉を失った。

「安心しろよ」 奪炎はついにこらえきれず、走りながら叫んだ。「必ずチャンスを見つけて帝尊に伝えてやる。お前の『熱い想い』をな!」

**

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