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風・芒  作者: REI-17
174/180

第174章 君の兵器は、天兵営のものじゃない。

第174章 君の兵器は、天兵営のものじゃない。

*

奪炎が二人にハンカチを渡した。二人は体を拭き清めたが、まだ全身がだるく、床に座ったまましばらく立ち上がれなかった。

「これは一体何の酒なの?」鏡風の声にはまだ息切れの気配が残っていた。

「これは魅羅大人へのご挨拶の品だよ。」

「まさか伝説の烽火狼煙!?」鏡風は信じられない様子だった。

奪炎は頷き、少し得意げだった。

鏡風は突然喜んで飛び上がり、連呼した。「すごいよ!」

奪炎は満足げに笑って言った。「実は小緑がすごいんだ。東海はもう全部彼のものさ。今じゃ何を探すのも簡単だよ。」

「私は君だけに感謝するよ。」鏡風は彼の腕を軽く叩いた。

小鹿は起き上がり、疑わしげに聞いた。「この酒、本当に飲んでいいの?」

奪炎は言った。「戦神大人は強い酒がお好きで、世界中を探してこの烽火狼煙を手に入れ、宝物のように扱っておられる。可哀想なことに、醸造師の白糊涂が突然酒に酔って死んでしまい、後継者も残さず、この酒は絶えてしまったんだ。」

ここまで聞いて、鏡風は思わず聞いた。「じゃあ小緑はどうやってこれを見つけたの?」

「東海におおざけのみの章魚がいるんだ。あいつはこの酒を飲んで以来、忘れられず、数千年かけてあの味を再現したんだ。原料の配合は少し違うかもしれないが、魅羅大人を喜ばせるには十分だよ。」

鏡風は頷いて同意し、突然また聞いた。「もし彼女が私と一杯対飲したいと言ったら、どうしよう?」

奪炎は神秘的に笑って言った。「ズルができるよ。」碧玉兜から小さな瓶を取り出した。「これを護体解酒薬を事前に飲めば、何ともない。ちょうどいい具合に酔うだけさ。」

「やるねえ。」鏡風は賞賛の視線を向けた。

「それでも小緑さ。」

**

崇文館から帰ると、荷物を下ろすのも待てず、凛凛は奪炎の手から猎猎がくれた返事の書簡を奪い、興奮して破ってみた。ところが中には数文字だけ:『朱凛凛、カードをやりたくない。お前を殴りたい。蘇猎猎敬上。』二ページ目には絵があり、人一人が眉を吊り上げて両手を腰に当て、下に別の人を踏みつけ、横に小さな字で注釈:『次にまた適当にやったら、これがお前の末路だ!』

凛凛は大笑いした。「小烏鴉、ほんとに幼稚!」

挿絵(By みてみん)

「君たちはどっちも半々だよ。」小鹿はよく見て、猎猎の絵は粗雑でシンプルだが、なかなか生き生きとしていて、冗談めかして聞いた。「額に入れて飾る?」

「うん。」凛凛は頷いた。「明日崇文館に持ってって、字画部の書官に頼んで額装してもらって、帰ったら僕らの部屋に掛けるよ。」

冗談のつもりだったのに本気にするなんて? 小鹿は少し後悔し、慌てて言った。「殴られてる絵なのに掛けるなんて、恥ずかしくないの?」

「僕の目を二つの×に描いてるのが可愛いよ。」

小鹿は首を振って溜息。「確かに可愛いね。」

凛凛は絵をしまい、奪炎にくっついてあれこれ聞いた。猎猎の作った飯を食べたと聞き、ひどく羨ましかった。小鹿と三叔も食べたと言って美味いと褒め、彼という一番の親友はまだ匂いすら嗅げていない。考えているうちに、思わず唾を飲み込んだ。

**

夜、鏡風と奪炎は二階で一緒に修行。小鹿はナッツを食べながら鹿語呪文を復習し、凛凛は宿題。晚の風は穏やかで涼しく、時間は柔らかく美しい。

凛凛が顔を上げた。「一つ食べさせて。」

「本気で食べるの?」小鹿は逆に不安になった。

「うん。」

「じゃあお茶を用意するよ。」今日奪炎が持ってきた新茶の中から、香りが清々しく初飲でも受け入れやすいものを探した。

「前回の白海芽、美味しかったよ。まだある?」

「あるよ。」小鹿は急いで白海芽を出した。これいいな。凛凛の血を養い精を生むよ。もしかしたら…

すべて整い、小鹿は大きさ形完璧なナット一枚を凛凛の口に入れ、緊張して彼が数回噛んで飲み込むのを見守った。

「どう? 大丈夫?」茶杯を手に、いつでも渡せるように。

凛凛は笑って。「いい香りだよ。」

小鹿はようやく安心して笑った。

凛凛が舌で口内の残りを掃除するのを見て、小鹿は急いで茶を口元に。凛凛は少しずつ味わい、一杯全部飲み干した。

*

明け方、まだ空が薄暗い中、小鹿は凛凛の鋭い泣き声で飛び起きた。すぐ這い寄って緊張して聞いた。「どうしたの!?」

凛凛はベッドに座り、両手を後ろに支え、両脚を広げ、びしょ濡れのパジャマと下の水溜まりを恐怖の目で見つめ、涙目で一言も出せなかった。

小鹿は目をこすり、よく見て匂いを嗅ぎ、確認してホッとした。笑いを抑え、平然と。「大丈夫、ただの夜尿だよ。」

凛凛は長く息を吐き、安心して乾いた方に移動し、胸をさすって。「怖かったよ! 僕が溶けちゃうのかと思った!」

小鹿はベッドから飛び降り、バスタオルを取って拭き、風呂に押し込んだ。

凛凛は今まで風呂なんて入ったことなく、汚れはいつでも自己浄化でいいが、この臭いは耐えがたく、鼻をつまんで出た。浴房に入り、小鹿がドアを閉めると、振り返って。「笑わないの?」

小鹿は首を振った。「食べたり飲んだりしてくれるのが嬉しいよ。夜尿なんて笑うことない。小さい頃僕もしたよ。」

「君、優しいね。」凛凛は彼の頰をつねり、ドアを閉めた。

*

奪炎が階段に立ち、「こんなに早く起きたのか?」

小鹿は振り返り、「ごめん、師匠と師伯をまた起こしちゃった。小さなトラブルだけど、大丈夫。戻って休んで。」

奪炎は頷いて上がろうとしたが、鏡風は眉をひそめ、「何の臭い?」

「夜尿しちゃった!」凛凛が浴房から大声。

鏡風は嫌そうに頭を振り、すぐ二階へ。

奪炎は喜んで聞いた。「ようやく飲んでくれたのか?」

小鹿は笑って頷いた。

奪炎は安心して去り、呪文を詠んで臭いを払った。

*

小鹿は汚れた寝具をすべて替え、外向きに横になり、凛凛が戻ると手招きした。

凛凛は小鹿の胸に飛び込み、「もう臭くないよ。」

「臭くてもいいよ。」小鹿は髪を撫で、「風呂、気持ちよかった?」

「別に。でも君が一緒にくれたら違うよ。」凛凛はエロく小鹿を見て、いつもの掴む仕草。

小鹿は咳払いして話題を変え、「最初、あの醜くて無用のものを消したかったよね? ほら、今使えたでしょ。」

それを聞いて凛凛は落ち込み、「昨夜お茶飲む時、この結果考えもしなかった。飲まなきゃよかった。」

「だめだよ! 僕がトイレを思い出させなかったんだ。数日で慣れればいい。せっかくのものを止めるな。」

「夜尿が怖いんじゃない。おしっこしたくないんだよ、ましてやあれ…言うのも言いたくない。」

「そんな風に思うなよ。少し面倒だけど、たくさんの楽しみがあるよ。」

「食べ飲みする楽しみはいらないよ。とにかく、あのものの主な役目は別だって知ってる。」凛凛は意味深に笑って小鹿を見た。

「何か知ったの?」小鹿は怖いのに期待した。

「うん。」

「教えて。」小鹿は不安で、話したいのに恥ずかしく、心拍数が上がった。

「まだ全部わかってない。でも…」凛凛はわざと焦らして、小鹿の目をじっと見つめ、小鹿の顔をピンクに、赤に、真っ赤にさせた。

「でも、もうわかったよ。君の兵器は、天兵営のものじゃない。」

小鹿はスローモーションで横になり、黙ってシーツを顔に被せた。可能なら、今日出たくない。

**

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