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風・芒  作者: REI-17
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第160章 タブー:禁術創世

第160章 タブー:禁術創世

*

鏡風と奪炎は黒衣の女を追って異界の方向へ向かった。

その女は戦う気がないようで、彼らとただかわし合い、ほとんど攻撃を仕掛けてこなかった。彼女は異界を何度も旋回し、試探を繰り返したが、その意図は不明だった。

異界は海岸の方へゆっくりと移動しながら回転し、海水を吸収し続け、引力がますます強くなっていた。島に遭遇すると、島ごと根こそぎ巻き込んでいた。

鏡風と奪炎は女を追いながら、異界の引力を避けるのに苦労していた。

前方では孰湖と舜華が援護に駆けつけ、後方では雲沖将軍が天兵を率いて支援に現れた。天兵は踏非と似て、修行年数は数千年程度だったが、異界の増す引力に抵抗するのは極めて難しかった。それでも踏非と合わせて総勢約四千人に及び、孰湖は二人の将軍と協力して巨大な防護網を結成し、異界の移動速度を遅らせようとした。もし異界が陸地に到達すれば、暮雲城が空城であっても、建物や住居が大規模に破壊され、庶民にとって壊滅的な災害となる。さらに暮雲城を越え、五十里先に連なる数々の町に大量の民が集まっている場所へ到達すれば、異界に吸い込まれ、想像を絶する結果となる。

*

鏡風と奪炎は霊線を手に、黒衣の女を左右から挟み撃ちしたが、彼女は異界の霊場の縁に張り付いて逃げ回った。二人は近づくことができず、立ち止まって機会を待った。

奪炎は不思議そうに尋ねた。「なぜ彼女には引力が効かないんだ?」

鏡風は、女が異界を統合させる呪文を唱えたことを思い出し、悟った。「彼女は異界を操ることができるんだ! 絶対に気をつけなきゃ。一度吸い込まれたら、彼女の足元の塵になるだけだ。」

言葉が終わる前に、女が手を振ると、異界の霊場が突然爆発し、巨大な腕が伸びて二人の間の霊線をつかみ、彼らを内側へ引き寄せた。

「まずい!」鏡風が叫び、霊線を切って後退した。奪炎は一瞬遅れたが、すぐに彼女に従った。「危なかった!」と彼は息をのんだ。

女は異界の霊場の縁に留まり、鏡風と奪炎は近づくのを恐れ、遠くから霊剣を放ち、彼女を異界から引き離そうとした。

双方がかわし合いを続ける中、女は異界を数周旋回した。

鏡風はつぶやいた。「彼女の目的はいったい何だ?」

突然、女が立ち止まり、鏡風を振り返って軽蔑の笑みを浮かべ、異界の霊場内に指を差した。そこに金色の枠に嵌められた輝く水晶の鏡が現れた。

挿絵(By みてみん)

「これが異界の入口か?」奪炎が驚いた。

鏡風は頷いた。雲蘇が勾芒に、夫諸が鏡を通じて霊力を送ったと話していたことを思い出したからだ。

女は片手を鏡に置き、もう片方の小指を唇に当て、妖しく魅惑的な旋律を吹き鳴らした。

*

巨大な魚から発せられる音波が徐々に消えた。

勾芒は小鹿に軽く頭を下げ、小鹿は意を汲んで彼と向かい合い、互いの両腕をつかんだ。二人は縄のようによじれ、急速に回転して鋭い霊場を形成し、魚の目を覆う膜の隙間を突き刺し、光線とともに魚の目の中へ突入した。そこは果てしない暗い海のようで、腐敗と死の气息が漂い、魑魅の影が周囲を漂い、恐怖を呼び起こした。射入した光線は闇に呑まれ、跡形もなく消えた。

「目を閉じなさい」と勾芒が命じた。

恐怖に震えていた小鹿はすぐに従った。

二人は支え合い、霊場で闇と幻影を切り裂き、ひたすら突き進んだ。

小鹿は勾芒の腕を強く握り、随心訣を黙念し、恐怖が消え、霊力が一気に増した。勾芒は彼の変化を感じ取り、力を強めた。二人の霊力は瞬時に数里伸び、深い闇の海を突き破り、救世の天窓を開くように外の光を導き入れた。目を閉じていても、小鹿は光の照射を感じ、喜んで勾芒の腕を振った。「帝尊、成功した!」

だが、脱出する前に、外から細く怪しい笛の音が聞こえた。闇の海は目覚めた巨獣のように咆哮し、血色の波がうねり、二人を溶かすかのようだった。

勾芒は危険を察し、全力で小鹿を引き、天窓から矢のように飛び出した。

二人は空高く舞い上がり、背後で轟く水音を聞いた。振り返ると、巨大な波が立っていた。黒い魚は目を破壊され瀕死だったが、奮闘して再び空へ上がり、急速に縮小していた。魚は勾芒と小鹿を無視し、異界の縁にいる黒衣の通霊女の元へ直進した。

*

鏡風は、女が通霊獣を連れて異界に入ろうとしていると直感した。女に近づくのは危険だったが、魚を阻止することはできた。奪炎に囁きかけ、二人は分かれて縮小した魚の周りを飛び回った。魚は弱り、音波を発さず、二人の行動は全く妨げられなかった。

最初、女は二人の意図に気づかなかったが、すぐに彼らが魚の周りに霊線の網を張り巡らせ、魚を閉じ込めたことに気づいた。

「まずい!」女は叫び、小指を下げて笛を止め、「魔羅黯、気をつけて!」と叫んだ。

しかし、鏡風と奪炎は両側に分かれて網を引き、無堅不摧の武器に変え、魚を瞬時に粉々に切り裂いた。冥界出身の妖物は魂魄散乱し、三界から完全に消滅した。

女は悲鳴を上げ、鏡から転げ落ちた。鏡風は隙をつき、彼女を捕まえようと突進した。女は抵抗し、横に逃げたが、鏡風は彼女の裙の裾をつかみ、半分を引きちぎった。女の足首に断ち切られた霊鎖が現れ、鏡風は驚き、「海神様?」とつぶやいた。

女は鏡の近くに戻り、鏡風を睨みつけた。「お前は本当に私の天敵だ!」と吐き捨て、深い溜息をつくと、一瞬にして数十歳老け、白髪の東海海神、師魚長天に変わった。

*

奪炎、勾芒、小鹿が到着し、師魚長天を見つめたが、異界には近づかなかった。

勾芒は冷たく言った。「私はお前に悪くなかった。なぜこんな悪事を? もうお前に居場所はない。」

師魚長天は冷笑した。「帝尊がなぜ私を許したか、自身が一番分かっているはず。数万年も他人の下で生きれば、私以上に狂うだろう! それに、お前!」彼女は鏡風を指差し、罵った。「お前のような小物までが私を抑えつけ、沈緑と結託して紫貝朱宮に閉じ込めた。お前の汚い秘密のために。」彼女は苦々しく笑った。「お前は私を閉じ込められるとでも? 私はただ運命を受け入れただけだ。天界全体に勝てないなら、お前一人に勝つ意味もない。無意味だ。」

勾芒と小鹿は鏡風を見、師魚長天の言う秘密が何なのか気になった。

鏡風の顔が曇り、彼女に数本の霊箭を放ったが、師魚長天は異界の霊場に逃げ込み、霊箭は吸収され、音も立てなかった。

再び現れた師魚長天は嘲笑した。「若さゆえに我慢が足りないな。でも安心しろ、勾芒こそ私の敵だ。お前なんて何だ?」彼女は勾芒に向き、「帝尊、この女を大切にしろ。最後はどちらがどちらを殺すか、見物したかったが、三界は帝鴻氏一族のものだ。お前が死んでも我が一族には戻らない。さらばだ。私はお前らのいない新世界へ行き、私の天地を築く。」

失望と自由の笑い声を上げ、師魚長天は呪文を唱え、異界に完全に消えた。

勾芒は驚愕した。その呪文は禁術創世の第一の大呪だった。

*

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