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風・芒  作者: REI-17
155/159

第155章 鏡風は夫諸の唯一の伝人

第155章 鏡風は夫諸の唯一の伝人

*

鏡風は水リボンをふり上げて鎖霊網の縄を押し、異界の包囲から力を借りて脱し、光のように網口を突き抜け、叫んだ。「收めろ!」

舜華将軍は即座に呪文を唱え、網の開口を収め、内側の六つの欠片と異界を再びロックさせ、ゆっくりと縮こまり小さく弱くなった。

*

小鹿が完全異界を押し出した瞬間、勾芒と朱厭、孰湖の三人は左手を伸ばし、それに合わせて力を施し、小蒼穹を放った。

小蒼穹とは、任意の目標を捕捉し、暫く収容する法陣だ。小さな白い水球のように目立たぬが、三人の掌から生成された後、空へ飛んで急速に拡大し、異界のサイズを超えると、それを内部に吸い込み、再び鳥卵大に収縮して勾芒の手に戻った。

小鹿と鏡風はすでに安然と着地していた。

鏡風は空を見上げ、「氷芝、収め!」と唱えた。

先ほど放った数千枚の氷芝が一列になって戻ってきた。鎖霊網内のものだけでなく、小蒼穹に吸い込まれたものも、一つ一つ殻を破って土中へ帰還した。

朱厭と孰湖は勾芒を見やり、彼は二人の意を汲んだ。鎖霊網や小蒼穹レベルの法器法陣は、鏡風には無効だ。彼女の強さは想像を超えていた。

さっきの氷芝の操縦だけでも、目から鱗だった。兄はかつて地霊を使って氷芝を作ったが、地中での利用に限られていた。ところが鏡風はそれを普通の兵器のように戦闘で使い、終了後に再び地中へ回収する。この一点で、すでに兄を超えていた。うれしいことか怖いことか、素晴らしいことだ。

しかも、見た氷芝の大きさと形は、孰湖が丹熏で発見したものと極めて似ており、当初兄の代わりに水禍を治理したのは鏡風に違いない。勾芒は瞬時に彼女への好感を増した。

兄は正式に義女とは迎えていないが、後人も弟子もおらず、鏡風は唯一の伝人と言える。

*

奪炎が前に来て九千草の薬缶を開け、勾芒は小蒼穹を入れ、缶ごと孰湖に渡した。

凛凛は早くも小鹿の元へ駆けつけ、抱き締めたり抱えたりして、次々に大丈夫か、怪我はないか、体は痛くないかと尋ねた。

小鹿は彼を引きながら数歩退き、笑った。「元気だよ!」彼もようやく役に立った気がして、とても嬉しかった。

師伯の凶暴さに感謝します。

*

その後、また二回邪霊を放ったが、未汚染の異界はなかった。最後に幼海に六つの完全異界だけが残った時、湖水はかなり澄んでおり、鎖霊網越しに梵今も二つの未汚染を辨認できた。鏡風は小鹿に御水術をつかって湖中で分離するよう指点し、それぞれ放出した。

日没前に、全ての邪霊が黄牙島へ移送され、天溶大陣で再利用可能な霊力に消化された。わずかな三つの未汚染完全異界は全て小蒼穹に収められ、九千草の薬缶に浸して湖に戻し、安全のため湖上は二重の鎖霊網で封鎖したままとした。

**

住居と財産の保護結界が設けられた後、洛清湖は下の多数の弟子を暮雲城から撤収させ、玉拢煙、蘇舞、および各部の大弟子、合計十何名だけを残した。

今や洗濯や食事も自給自足だ。洛清湖は食べないので気にせず、内室に戻って各方と連絡を取った。お嬢様たちは互いに見やり、全員が湯を沸かすことすら知らない。

玉拢煙は罵った。「役立たずめ。」

蘇舞は笑ってやり返した。「お前が役立つみたいだね。」

軽羽も笑い、「副堂主はもう島からの消息を得たそうで、明日には邪霊を全部移せると。1、2日飢えるくらい問題ないよ、食べなくてもいいさ。」

玉拢煙は頷き、「それなら、耐えられない者は自分で台所をどうにかせよ。統一して決めない。」と言い、蘇舞とそれぞれ二名の弟子を連れて正堂を出た。

月出は彼女たちが門を出るのを待って、錦瑟の元へ寄り、「師兄は? しばらく見ていないんだけど、ワンタンを作ってほしいの。」と尋ねた。

錦瑟も知らず、二人はあっちこっち見てみたら、君儒が側院から歩いて来て、手に果物の皿を持ていた。

*

君儒は笑った。「君たちが困っているのはわかっていたから、台所へ行って何でもいいから作ってみた。ところが米も小麦粉も魚も肉、野菜も、何も残っていない、果物がこれだけだ。」

彼は果物の皿を机に置き、軽羽たち三人を呼んで食べさせた。

月出は直接手を伸ばしたが、軽羽に叩き返され、「師兄の前では上品に。」と叱られた。

月出は口を尖らせ、食べないことにした。

錦瑟は林檎を食べ、目を輝かせ、「蘇家の庭に野菜があるよ。摘みに行って、戻ってワンタンでも麺でも作ろう、師兄、どう?」

今回の行動では、天界は仙門の直接参加を要さず、後方支援のみでよかった。今や全て整い、彼らも手持ち無沙汰だ。ただ君儒は独断を避け、躊躇した。

軽羽はそれを見て、内室へ洛清湖に相談に行き、戻って笑った。「君たち行って。私は宮主に付き合うよ。」

*

挿絵(By みてみん)

蘇家の庭の結界は錦瑟自身が設けた。三人はほどく呪文を唱えて院内に入った。

院中は花木繁盛、日没の頃で、全て淡い金色に染まり、君儒に親しみを倍加させた。ここに二十余日住んだだけなのに、どうして家のような気がするのか?

惜しいことに、家族はまだ戻っていない。

錦瑟と月出は籠を持って野菜を摘みに行き、君儒は「各部屋を調べて不具合がないか見てくる。」と言った。

錦瑟はキュウリ棚の後ろから頭を出し、「師兄、波波の部屋に行く時、私のために作ってくれた服を取ってきて。もう服は全部汚れて着替えがないの。あのピンク上着と紫ローブのやつ。」

君儒は困り顔で、「師妹、自分で取りに行け。女性の服など僕に分かるはずがない。それに、波波のクロゼットを勝手に漁れない。」

錦瑟は考え、「確かに。それじゃ私が行くよ。」

君儒が屋内に入った後、彼女は月出に向き直り、「お前の家二凡なら、喜んで行ったろうね。」

月出はナスの茎を強く引きちぎり、豪快に、「あいつが敢えて!」

「気をつけなさい!」錦瑟は月出が根こそぎにしかけたナスを支え、土を踏んで固め、文句を言った。「波波が帰ってきて、家に泥棒が入ったと思うわ!」

彼女はさらに数種の野菜を摘み、錦瑟は月出に林檎を摘ませ、手を洗って玉海波の住む西側の部屋に入り、クロゼットを開けて自分の服を探した。

*

君儒は正堂内の各部屋を調べ終え、鍵をかけて出て西側の部屋へ。扉が開いており、錦瑟が中にいた。クロゼットの仕切にうつぶせになって、笑いが肩を震わせている。

君儒は開いた扉を叩き、「服は見つかったか?」

錦瑟は振り向き、手で口を押さえ、顔を真っ赤に堪え、努力して手招きで君儒を呼んだ。

君儒は訳が分からず、ドアのところで動かず、「女物のものを見るのは不便だ。」と言った。

錦瑟は堪えかね、彼が動かぬのを見て、強引に引き入れて、絵を広げて眼前で振った。「師兄、よく見て。」

夕方の時、部屋内は薄暗く、君儒は見えなかったが、真剣に、「波波がいないのに、勝手に物を漁れない。君の服を取ったら、他は元に戻せ。」

錦瑟は溜息をつき、「師兄の人品を信じてないか、君の頑固を信じちゃうよ。自分で確かめて。」

彼女は絵を君儒に押しつけ、くすくす笑いながら服を持って屋を出た。

*

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