第150章 鏡風師伯、いい人じゃなさそう。
第150章 鏡風師伯、いい人じゃなさそう。
*
夢の中で、小鹿はまだ鏡風と対戦していた。
自分がこんなに強いとは知らず、鏡風をどう形容すべきかも分からなかった。どんなに速く、霊力が強くても、彼女は軽々と受け流し、淡々とした顔で、まるで退屈な仕事をしているようだった。
鏡風は彼の体内の霊力を徐々に引き出し、彼が限界だと思った瞬間、彼女の攻撃が一段階上がり、彼もそれに合わせて高めざるを得なかった。そう繰り返し、一晩で彼は随心訣をかなり習得した。
五臓が痛み、四肢が弱っていたが、彼は楽しかった。
*
凛凛が温かい布巾で彼の頬と手を拭き、服を解き始めた。
何するつもり?
小鹿は緊張した。
凛凛は彼の胸元を開き、掌に霊力を込め、そっと左胸に当てた。
その手は柔らかく、霊力は温かく優しく、すごく心地よかった。自分の霊力で回復できたが、凛凛の愛情を静かに受け入れるのが好きだった。一刻後、体の痛みは完全に消えた。
凛凛は霊力の送出を止め、彼の胸元を整えた。
意外とおとなしいじゃん。
小鹿が心で褒めた瞬間、凛凛が小さく口笛を吹き、胸元をまた開き、両手で胸筋を掴んで押し上げ、「悪くないけど、柔らかさが足りないね」とつぶやいた。
小鹿が目を開けると、凛凛の視線とぶつかった。凛凛はビクッとして手を胸から引っ込め、慌てて言った。「悪いことしてないよ!」
小鹿は彼を腕に引き寄せ、優しく尋ねた。「悪いことって何?」
凛凛は悪戯っぽく笑い、腰下を揉んで言った。「これ、絶対悪いこと。」
「うわ!」小鹿は驚き、凛凛のお尻を叩いて叱った。「お前のスケベな行動、レベルアップしてるぞ!」
**
錦瑟は玉海波、蘇允墨、猟猟を呉中城の千華堂に避難させる手配をした。昨夜、三人は必要な物をまとめ、早朝に人群と共に出発した。見送った後、君儒はすぐ望合堂へ向かい、洛清湖に報告した。
「沈侍衛は荘園で避難民の対応に当たっている。君儒は私のそばにいなさい。」
「はい。」
洛清湖は君儒に朝食を共にさせ、食事をしながら海末雲間宮で何か情報がなかったか尋ねた。
君儒は帝尊や大司命に会わず、孰湖からも有用な情報は聞いていなかったので、そのまま報告した。
**
午後、凛凛は奪炎と共に九千草の第一陣を黄牙島に届けた。硫黄の匂いがきついため、二人とも小さな透明な結界を張っていた。
白夜の指揮下、天兵は黄牙島の岩を切り開き、広大な平らな石面を整備していた。数十人の天界法師が霊場を検査し、寸法を測り、陣の中心を定め、そこから放射状に五芒星の陣形を描き、要所に法器や符咒を配置していた。天溶大陣は形を成し始めていた。
黒いフード付きマントを着た法師たちは神秘的だった。
奪炎と凛凛は遠くの低い峰に立ち、興味深くその光景を見ていた。
凛凛は羨ましそうに言った。「あんなマント欲しいな。くるっと巻いて、中は何も着ないで、バッと開いて小鹿をドキッとさせたい。」
奪炎は小さくため息をつき、技術だけ教えて、こうなるなんてと思った。
彼は凛凛の腕を支え、「人をドキッとさせて、自分は恥ずかしくない?」と尋ねた。
「全然」と凛凛は得意げに言った。「でも安心して、君に恥かかせないよ。小鹿がいろんなマナーを教えてくれたし、朱達文教官が字を教える時に使ったのもそんな役立たずの本だから、やりすぎることはないよ。」
奪炎はうなずいた。
「あ、忘れてた。小鹿のマナー、君が教えたんだよね?」凛凛は奪炎の袖を振って甘え、「まず飛鏡に変身して見せてよ。」
奪炎は体を振って紅衣の飛鏡になり、凛凛に明るく微笑んだ。
凛凛は一回転させ、もう一回転させ、満足して「戻って」と言った。
*
「小鹿をどう育てたか教えて。いや、最初から、全部話して。」
奪炎は平らな石を見つけ、ゆっくり話し始めた。
「妖王が鏡風に連絡して、光山を通った時に小鹿を見つけたと言った。噂が広まれば鹿狩人に狙われると心配し、面倒を見るよう頼んだ。鏡風は修行中だったから、僕が山に連れに行った。まだ4、5ヶ月で、膝くらいの小さな子鹿だった。毛は柔らかくてふわふわ。」奪炎は膝で高さを示した。
「臆病で、洞窟の草の後ろに隠れてた。僕が笑って手招きしても近づかず、何日も一緒にいたら、初めて近づいてきて手からキャンディを食べた。」
凛凛は笑って、「雪団?」
「その通り。」
「やっぱり誘拐犯だ。」
「その通り」と奪炎は笑った。「君たち、みんな私の子だ。」
小鹿の信頼を得て、奪炎は彼を暮雲城に連れ帰り、丁寧に修行を指導した。19歳で人形になり、優しく活発だが、甘えん坊で怠け者で、めっちゃくっついてきた。
「君が好きだからなのに、くっついてくるって?」凛凛は少し嫉妬した。
「それはもしか、嫉妬?」
「まさか。」
奪炎は優しくて叱れず、後に先生を雇って礼儀や読み書きを教えた。
「だからそのマナーは先生が教えたんだ。僕のせいじゃないよ。」
「堅物な先生を雇った君が悪い。」
*
「7、8年学んで礼儀を身につけ、修行を始めた。」
「小鹿の深い霊力、あの時に得たの?」
「違う」と奪炎は首を振った。凛凛の左腕を掴み、金糸の枷に環状の結界を開き、「これで話は囚人書に記録されない」と言った。
凛凛は大喜び。
奪炎は続けた。「その霊力は鏡風が奪ったものだ。」
凛凛は驚いた。「奪った!? どこから?」
「聞かないで。ただ、これは妖溶之術という禁術だ。」
凛凛はうなずいた。彼の納入と馴服は妖溶之術の核心だった。下で法師が作る天溶大陣は、その無限強化版のようだ。
「奪った霊力が多すぎて馴服できないと、散逸したり、反噬したりする。だから鏡風は小鹿に分け与えたが、彼は弱すぎて耐えられず、鏡風は封印した。三護法が悪魔果実で無意識にそれを呼び覚ました。」
凛凛はドキドキした。鏡風師伯、いい人じゃなさそう。
凛凛の心を見透かしたように、奪炎はなだめた。「安心して、師伯は霊力を奪うために無辜を殺したりしない。」
それでも、小鹿が霊力が奪われたものだと知ったら、喜ばないだろう。幸い、彼は深く考えないタイプだ。
「師伯、なんで君に分けてくれなかったの?」
「僕と鏡風は九蝶血契で結ばれてる。彼女が修行すれば、僕の霊力も上がるから、わざわざ分ける必要はない。」奪炎は襟を下げ、左鎖骨の血の蝶を見せた。
優雅で美しい蝶だったが、凛凛は鏡風が怖いと感じ、彼女の知識が多すぎると思った。
「昨夜、師伯は小鹿がその霊力を制御するのを手伝ってた?」
奪炎はうなずいた。「霊力が目覚めてから、鏡風は彼が制御を失うのを心配して、随心訣を作り、制御の練習をさせた。」凛凛の心配そうな顔を見て、額を弾き、笑って言った。「恥知らずなのに、よく心配するね。」
「スケベだけどバカじゃないよ」と凛凛はつぶやいた。
奪炎は笑い、雪団を剥いて凛凛の口に放り込んだ。
*