表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風・芒  作者: REI-17
135/183

第135章 お願いがあるんだ。

第135章 お願いがあるんだ。

*

扉が閉まる音で小鹿は長く安堵の息をついた。彼は静心咒を何度も唱えたが、今回は心が静まっても熱が冷めなかった。

このいまいましい白海芽茶!

*

小鹿は涼しい服に着替え、寝所を出ると、館長室から出てきた白澤と鉢合わせした。

「凛凛と一緒に修行に行かなかったのか?」白澤は驚いた。

小鹿は帝尊の調べ物の口実を繰り返した。

一緒に階段を降りながら、小鹿は少し考えて尋ねた。「館長、天界にすごい医仙はいますか?」

「もちろん。白象城の桂詩堂には五人の医仙がいて、それぞれ得意分野がある。どこか具合が悪いのか?」

「いえ、ただ何となく聞いてみただけです。」

白澤は疑わしげに彼を見て、「書官に『桂詩堂紀要』を頼めばいい。どんな病気でどの医者に診てもらうか、詳しく書いてあるよ」と言った。

*

盛夏でも天界は涼しく快適だった。凛凛は水から顔を出し、テントから漏れる灯りを見て、小鹿が待っているとわかり、すぐに元気になった。

二人はじゃれ合いながら崇文館に向かった。突然、小鹿の懐から本が落ちた。凛凛が拾うと、表紙に『桂詩堂紀要』とあった。彼はめくりながら尋ねた。「これ何?」

小鹿は慌てて取り返し、ごまかした。「待ってる間退屈で、一階で適当に取った本。医書だったなんて、つまんないよ。」

凛凛は目を輝かせた。「医書? 読みたい! 奪炎は医術も巫術も得意じゃないから、教えてくれること少なかった。崇文館にこんなのがあるなんて、最高! 医術わかると修行にも役立つよ。」

小鹿は本を懐に戻し、なだめた。「帰って読めよ。外、暗いから目が痛くなるぞ。」

「わかった、君の言う通りにする。」

「そういえば、猎猎の脈を診たことあるよね。医術、ちょっと知ってるんじゃない?」

凛凛は首を振った。「あれは医術じゃない。ただ脈で霊力の流れを確認しただけ。」

「じゃ、自分の脈を診てみて。どこか霊力が詰まってないか見てよ。」

凛凛は手を上げ、金絲梏を睨んだ。「診なくてもわかる。このバカなもので縛られて、全部詰まってるよ。」

それが原因か? 小鹿は眉をひそめて考えた。

いや、金絲梏をつける前も、抱き合ったりいちゃついたりしてた。彼、触りまくるの好きだし、俺何度か盛り上がったけど、彼はいつも平気な顔だった。

初めて凛凛を見た時、彼は全裸だったから、発達してないわけじゃないと知ってる。じゃあ何が原因?

やっぱり医仙に診てもらうしかない。

**

桂詩堂は小内府の通りにある。その時間は皆が出勤する忙しい時で、人通りが多い。小鹿はこそこそ通り抜け、道端の彫刻影壁の後ろでしばらくうろつき、誰もいない隙に中に入った。

挿絵(By みてみん)

入口で受付の若い医官が顔を上げず、「神君、どの科?」と尋ねた。

「えっと、無山医仙に」と小鹿はどもり、紀要を読んでてよかったと思った。でなきゃ、「男科」と答える羽目だった。

「左の二番目の部屋、ドアに名札があります。今、空いてますよ、神君、どうぞ。」

*

無山医仙は小鹿が想像した医仙そのものだった。青い衣、白い髭と髪、痩せて矍鑠とし、仙気漂う姿。

小鹿は顔を赤らめ、なんとか気まずく本題を口にした。

無山は微笑んだ。「囚人朱凛の問題は、大司命がすでに私に相談に来ました。」

「大司命がどうして知ってるんですか!」小鹿は雷に打たれた気分で、半分死んだ。

「彼は囚人の記録の抜粋を見せてくれました。」

小鹿の残り半分も死に、身体全体が真っ赤に熱い石になった。

無山は気にせず続けた。「朱凛の経歴を分析し、三つの可能性を考えました。一つ目、彼は三千年の修行中、知性を開かず、初めて化形したのは妖形、人の形ではないため、精神も肉体も発達が不完全かもしれない。二つ目、彼は修行に夢中で、霊力の増進は他人の数倍だが、此消彼長で、過度な修行が正常な機能を妨げた可能性がある。三つ目、彼は飲食しない。俗に言う『腹が満たされれば欲が生じる』、腹が空だとその気持ちも生まれにくい。仙人が清修のため断食するのも同じ理屈です。ただ、これらは推測です。本人を診ず、望聞問切しなければ、結論は難しい。」

これを聞いて小鹿は少し落ち着き、頬を扇いで熱を下げ、囁いた。「大司命は彼を診てくれと頼まなかったんですか?」

「大司命は急がないと言いました。彼に本を読み、道理を理解させてから治療しないと、余計な問題を起こしたり、小さなことで大きな損失を招くかもしれないと。」

「本を読み」の本ってどれくらい? 三年分じゃないよね?

「私がお願いしたら、彼を診てくれますか?」

無山は首を振ってため息をついた。「彼は囚人です。大司命の許可なく、診ることはできません。」

小鹿はがっかりして唇を噛み、無念そうに言った。「医仙、ありがとう。ただ、私がここに来たことは大司命に内緒にしてください。」

無山は微笑んだ。「ご安心を、神君。」

**

凛凛は昼に一時間の休息が取れる。彼は寝所に飛び戻り、小鹿が荷造りしているのを見た。彼は午後、孰湖と合流し、鏡風と奪炎の知らせを待つ準備だ。

凛凛は彼を抱き、ベッドに転がった。

小鹿は甘く言った。「お願いがあるんだ。」

「何? 言ってみて。」

「君、俺よりずっと強いから、プレッシャー大きくて、釣り合わない気がする。ちょっと…止まって、俺を待ってくれない?」

「でも、俺、君を守るために頑張ってるんだよ。」

「俺が女なら守ってもらうけど、俺も男だよ。こんな弱かったら、面目ないじゃん。頼む、待ってて?」小鹿は全身の甘さを振り絞り、ぞっとするほどだった。

凛凛はまんまと引っかかり、花のように笑い、小鹿の頬を揉んだ。「わかった、約束するよ。」

「君、最高!」小鹿は凛凛の顔を両手で持ち、びしょ濡れのキスをした。

「でも、条件があるよ。」凛凛は狡猾に笑った。

小鹿は嫌な予感がした。

「『お兄ちゃん』って呼んでくれたら、三か月修行やめるよ。」

ゆすりだ! でも、目的のためなら手段選ばず。小鹿は覚悟を決め、目を閉じ、「お兄ちゃん」と三回叫んだ。凛凛は驚いて口を塞ぎ、「もういい!」と言った。

でも小鹿は指の隙間からもう一回、「お兄ちゃん」と漏らした。

*

昼間、凛凛は崇文館を出られないので、小鹿を入り口まで送った。

「仕事行って。こんな目で見られたら、離れられないよ。」

「わかった、中入るね。」

「すぐ戻るよ。こっそり修行しないで。俺のこと考えて、本読んでね。」

「わかった。」凛凛は手を振って本棚の後ろに消えた。

崇文館の医書は天下の集大成と言える。

凛凛は目録と概要をざっと見て、まず入門用の数冊を選んだ。

*

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ