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風・芒  作者: REI-17
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第001章 戦神の命令

第001章 戦神の命令

*

三月三日、天界の中枢、白象城。

勾芒帝尊は心腹を率い、天河の岸に恭しく立つ。西を向き、母后、戦神魅逻の聖駕を待つ。

以前、戦神の来訪にこのような陣容は不要だった。しかし、今回は違う。

*

「来た。」少司命孰湖が静かに告げる。

勾芒は姿を整え、厳かに待つ。

魅逻が雲端から降りる。衆人は速やかにおじぎをする、聖駕を迎える。

彼女は勾芒に軽く頷く。目を合わせず、大羅天宮へ向かう。

勾芒は立ち上がり、ついて行く。衆人は言葉なく、黙って従う。

*

魅逻は座に就き、冷たく命じる。「跪け。」

勾芒が先導し、天界の重臣たちは一斉に跪く。

小仙が茶を差し出す。魅逻は手を振って退け、視線を下に向け。衆人は息もせず、彼女は憐憫なく、冷笑して言う。「大司命、少司命、大祭司、大法师、諸将、医仙大人、悔しいか?」

衆人は声を揃える。「いいえ。」

「では帝尊は?覚悟はあるか?」

勾芒は頭を下げ言う。「母上、此事は芒が手配済み。急ピッチで進めており、近日中に報告あると信じ。母上もご安心を。」

「どんな手配だ。言ってみろ。」

「芒は政務に追われ、下界に降りる機会が少ない。傑出した人物との出会いを阻まれた。天界に適任者がいない以上、近日中に下界へ赴き、人間と魔域を視察する。機会は多く、芒も心から探すつもりだ。此事は難しくない。」

魅逻は鼻で笑い、嘲る。「期限なき約束は、空言にすぎない。」

勾芒は少し考え、言う。「芒は母上に約束する。十年を期限に、必ず婚姻を果たす。」

「十年?そんな苦労は必要ない。太尊と私が手配済み。今、修羅族の長公主、真齢三千年、戦力抜群、新たな戦神に封じられた。私と彼女は一面の縁がある。彼女は私と違い、優しく愛らしい。肉身は二十三歳、最適な出産年齢だ。私は修羅王に書を送り、話し合った。彼は大賛成で、速やかに手配すると。二人で一年以内に結婚できる。」

勾芒は聞き、内心で苦悶する。

かつて三界は紛争に明け暮れ、戦乱が絶えなかった。父は魅逻を娶り、反叛の修羅族を一挙に友に変え、帝祖の最大の脅威を解消。修羅族は強力な後ろ盾となり、後の帝位争いで優位に立った。婚後、戦神は四方を征討し、三界を再び平定、功績は計り知れない。だが魅逻は頭が単純で気性が荒々しい。太尊が普段どれほど苦労したか、天界の誰が知らぬ?

かつ、修羅族はすでに衰退。新封の戦神の功力は魅逻と雲泥の差。娶って何の役に立つ?逆に修羅王に付け込まれ、様々な要求を突きつけられるだけだ。

それに、優しく愛らしい?修羅は蛮族だ。古来より開化を拒む。修羅族の女子は、絶対に考えない。

*

勾芒の顔に難色を見せ、魅逻が言う。「帝尊は我々の手配に不満か?」

勾芒は頭を急回転させる。暗に思う。九千余年前に自分が即位後、魅逻は太尊と隠居し、修羅族とは長年疎遠だ。長公主を自分の側に置き、母族の前程を謀る意図は絶対にない。長公主と一面の縁と言って、それは縁が薄い。恐らくこの話は自分を試すための嘘だ。彼は咳払いし、朗声で言う。「十年が母上に不満なら、芒は急ぐ。五年はどうか?」

「一年。」

ふ、長公主はやはり口実だ。

「一年は短すぎる。瞬く間に過ぎる。三界の運命に関わる事、慎重にせねば。母上、許して、三年はどうか?」

「一年。」魅逻は譲らぬ。「十年、五年、三年、汝には違いがない。やらぬだけで、どうやって成す?九千年も瞬く間に過ぎたではないか?」

勾芒は気まずく、後悔する。九千年も引き延ばした事が、今、一年以内に成さねばならぬ。自業自得だ。だが話はここまで来た。反論もできず、答える。「母上の仰せのまま。一年を期限に、必ず帝后の候補を定める。」

「私と太尊が求めるのは、一年内に結婚だ。」

勾芒は苦笑し、言う。「たとえ意中の者がいても、しばらく付き合い、品行や素養を見極めねば。父上母上の承認も必要だ。一年はさすがに急すぎる。」

魅逻は眉をひそめ、しばらくして溜息をつく。「よかろう、そのように。」

「母上のご理解に感謝!」

*

「汝の根拠なき三つの選妻基準、今日より二度と言うな。」

「は。」

「今、三界は平和だ。何のためそんな強者を探すの?まさか汝の心では、配下の者たちは皆無能か?」

「そうではない。あの三つの基準は口にしただけ。誰の多弁が母上の耳に入れ、父母を無駄に心配させたか。芒はかつて傲慢だったが、今、真齢は一万二千年。依然としてそんな天真か?」

「ふん!天真な者は死ぬまで天真だ。汝が即位した日から、長老たちは心を砕いてきた。立派な隠居の老神仙が、九千年来、このために騒々しく、まるで田舎の孫を急ぐ土豪のよう。何と滑稽か?死すら安心して死ねぬ。」

「母上がそう言うと、芒は面目ない。だが父母と諸帝輔に安心を。芒は一年の期限を立てた以上、決して食言せぬ。」

魅逻は嘲笑う。「帝尊は人前では従順、裏では反逆。食言が少ないか?」彼女は手を上げ、御製をでき、勾芒に投げる。「帝尊、捺印せよ。」

挿絵(By みてみん)

「そこまでせねば?」勾芒は苦笑し、帖文を拾う。一読して驚愕する。

魅逻は真剣に言う。「帝尊の婚事は三界の大事業。皆で捺印し、一年以内に成らねば、全員が責任を負い、解職して隠居する。大司命、汝の責任は最も重い。解職後は長留で太尊と私の世話をし、渎職の罪を贖え。」

「母上。」魅逻が本気と見て、勾芒は少しでも挽回を試みる。

大司命朱厌は文帖を取り、率先手印を押す。誓う。「太尊と戦神大人に仕えるは朱厌の栄誉。だがその前に、必ず帝尊を督し、称職の帝后を見つけさせる。」

魅逻は頷き、言う。「帝尊より、むしろ汝を信頼する。」

朱厌は文帖を渡す。衆人が次々に捺印し、最後に勾芒の手に戻る。彼は無奈に捺印し、恭しく魅逻に返す。

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