表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/62

第64話:市場の衛生管理と改革の最終段階

市場改革が進み、各店舗の売上も右肩上がりになり始めた。しかし、それに伴って新たな課題が浮かび上がった。


「……売れ残りの食材が増えてるな」


市場の通りを歩きながら、俺は目に映る光景に眉をひそめた。商品が豊富になったことで、これまでなかった「廃棄」という概念が生まれたのだ。


「これまでは足りないのが当たり前だったから、残ることなんて考えもしなかったんでしょうね」


リーナが言う通り、商人たちは「仕入れたものはすべて売れる」前提で商売していた。しかし、供給が安定し、市場が発展するにつれて売れ残る品も出始めた。特に生鮮食品は、翌日には腐り始めるものもある。


「何か対策を考えないと、これから先、大量の廃棄物が出るぞ」


市場を維持するためには、単に売上を上げるだけでなく、食材の管理方法も見直す必要がある。イワノフ商会に戻ると、さっそくイワノフと対策を話し合った。


「鮮度管理か……確かに重要だな。しかし、今の市場にそういったシステムはない。どうするつもりだ?」


「いくつか考えがある。まず、一番手っ取り早いのは冷蔵施設を作ることだ」


「冷蔵施設?」


俺は少し考え、あるものを召喚した。


ゴウンッ……!


イワノフたちが目を丸くする中、そこに現れたのは大型の氷室。内部には現代の冷蔵庫に匹敵する冷却機能を備えている。


「こいつを市場の端に設置して、生鮮食品の保存期間を延ばす。保存が効けば、売れ残りを翌日に回すこともできるし、遠方からの仕入れも増やせる」


「……こりゃすげぇな。だが、氷はどうする?」


「氷魔法が使える商人と提携すれば、どうだ?」


イワノフはしばらく腕を組んで考えた後、頷いた。


「よし、試してみる価値はあるな。市場の一角を提供する」


こうして、市場初の「氷室」が設置されることになった。


---


翌日、市場の商人たちを集め、鮮度管理の講習会を開いた。


「まず、生鮮食品は売り場での陳列時間を短縮し、一定時間が経ったものは氷室に移す」


「氷室を利用すれば、遠方からの仕入れも可能になる。例えば新鮮な魚を市場に並べられるようになるぞ」


「さらに、加工品を作ることも検討しよう。売れ残った野菜や果物は乾燥させて保存し、魚は干物にすることで長持ちする」


商人たちは最初こそ困惑していたが、次第に興味を持ち始めた。


「たしかに、腐る前に干物にすれば、捨てる必要がないな」


「野菜の干し物は保存が効くし、冬場の備蓄にもなる……」


氷室の設置、鮮度管理の徹底、売れ残りの加工品化。


市場の商人たちは、これまでの常識を覆す「食品管理の新時代」に突入した。


---


市場の清掃管理も改革を進めることにした。


「市場のゴミが溜まりすぎてる。清掃メンバーの稼働はどうなってる?」


俺はイワノフに質問した。


「低ランク冒険者や、職を失った者たちを雇っていたんだが、市場で商人が儲かっているから、逆に人手不足だ。それに倉庫が効率化されたことで、そっちでも募集が多いな」


「市場の改革で雇用を生むとは……」


「ギルドと提携して作った掃除組合は、短時間の労働者や子供に人気だ。しかし、これ以上人数は増えねえな」


「そっか、みんなの生活が良くなって嬉しい反面、掃除する人がいないのは困るな」


---


市場の改革が進む一方で、俺たちの影響力も大きくなりつつあった。


「市場の運営を見ていると……まるで一つの都市みたいだな」


リーナが呟いた。


「確かにな。もうただの商人たちの集まりじゃない。これは「組織」になりつつある」


「……国がこの動きをどう見るか、気になるわね」


リーナの言葉に、俺は無意識に拳を握った。


市場の発展が続けば、やがて王国の政策にも影響を及ぼすだろう。


「……まあ、今は目の前の課題を片付けることに集中しよう」


改革は順調に進んでいる。だが、それが「誰かの脅威」になったとき、俺たちの立場はどうなるのか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ