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第52話:清掃計画の導入 & 同棲の提案

市場のゾーニングが決まり、商人たちの配置換えが進む中で、新たな課題が浮かび上がった。


「ゴミが多すぎる……」


通路には野菜くずや紙くずが散乱し、どこからか腐敗したような臭いが漂っている。地面には乾いた泥が固まり、風が吹くたびに埃が舞い上がる。


「これじゃあ、せっかく市場の配置を整えても台無しだな」


俺が顔をしかめると、リーナが腕を組みながら頷いた。


「市場はずっとこうよ。掃除なんて各店が気が向いたらやる程度だから……そもそも掃除用具がろくにないのよね」


「じゃあ、用具を用意して、掃除を習慣化させればいい」


俺は手をかざし、召喚の力を使った。


「出てこい、頑丈なブラシ、鉄製の塵取り、ゴミ袋!」


青白い光が走り、目の前にブラシと塵取り、分厚い布製のゴミ袋が現れた。ブラシの毛は硬く、地面の汚れをしっかりとこすり落とせそうだ。


「これなら市場の掃除に使えるな」


リーナが試しにブラシを手に取り、地面をこすってみる。すると、泥が剥がれ、下から本来の石畳の色が見えた。


「すごい、ちゃんと落ちるわね」


「これを市場全体に配布して、毎朝と営業終了後に掃除するルールを作る。店の前をきれいにしていたら、その分目立って客も入りやすくなる」


「なるほど……」


市場の管理者オルセンにも提案し、清掃活動を促進するために「店の前を掃除したら翌日の配置優遇」制度を導入することに決まった。しかし、オルセンはさらに大きな提案をしてきた。


「いっそ、掃除専門の者を雇ってしまったらどうだ?」


「掃除専門?」


「ああ、市場の衛生管理を徹底するために、ギルドと組んで組合を作るんだ。掃除を仕事にすれば、低ランクの冒険者や浮浪者、親のいない子供たちが生計を立てられる」


その言葉に、俺は以前の護衛依頼のことを思い出した。食い詰めた少年たちが俺を襲ったあの事件。彼らのように生きる手段を持たない者たちがいることを、俺はこの世界に来て初めて痛感した。


「……それは良い考えだ」


俺はオルセンから積極的な提案が出てきたことに驚いた。ただ、たしかに良い考えだ。俺には思いつかなかった。


「そうだろう? 冒険者ギルドと商人組合が共同出資して組合を作れば、市場は清潔になるし、困っている奴らも仕事が得られる」


その後オルセンからギルドマスターに話が通り、市場の清掃活動を正式な仕事として確立し、組合の設立が決まった。


---


その夜、リーナと共に宿へ戻る道すがら、俺はふと思った。


「リーナ、お前もそろそろ腰を落ち着ける場所が必要なんじゃないか?」


「……は?」


リーナは驚いたように俺を見上げた。


「いや、俺もずっと宿暮らしだし、そろそろちゃんとした部屋を借りようかと思ってるんだ」


「……それで?」


「お前も一緒に住むのはどうだ?」


リーナは一瞬言葉を失い、顔を赤くしながら口を開いた。


「ちょ、ちょっと待って! それって……つまり……」


「嫌なら無理にとは言わないけど」


「嫌とは言ってないけど! でも、それって……」


彼女はしばらくの間、何かを考えるように俯いた後、小さく息を吐いた。


「……まあ、考えておくわ」


「了解。じゃあ、近いうちにいい物件を探してみるか」


俺はそう言いながら、リーナの少し困惑した横顔を見つめた。彼女がどんな結論を出すのかは分からないが、俺としては一緒に暮らすことを前向きに考えていた。

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