第39話:旅立ちの刻
鍛冶ギルドの中庭での試し斬りを終えた俺たちは、ギルドの一角に集まっていた。
コンクリートブロックを真っ二つにした小剣は、未だにその異質な光を帯び、刃の中の目玉が静かに脈動していた。異変の正体はまだ不明だが、それを解明するのはサーシャに任せるしかない。
「サーシャ、これからどうする?」
俺が問いかけると、サーシャは小剣をしっかりと握りしめながら答えた。
「この剣の力をもっと知りたい。鍛冶師として、もっと腕を磨くためにも、しばらくここで修行を続けるつもり」
その言葉を聞いて、俺は静かに頷いた。
「そうか……俺たちはそろそろ元いた街に戻るよ。今回の護衛依頼も無事に終わったしな」
リーナも軽く息をつきながら、サーシャに微笑んだ。
「サーシャ、あなたが作った剣、すごく面白いわね。でも、次に会う時はもっと普通の剣も作れるようになっててよ?」
サーシャは苦笑しながら頷いた。
「そうだね……今度は普通の剣も作るよ!」
「またどこかで会うかもしれないし、サーシャの腕前が上がったら、今度は武器を作ってもらおうかな?」
サーシャは少し驚いた顔をした後、満面の笑みを浮かべた。
「もちろん! 次に会う時は、もっとすごい武器を作れるようになってるから!」
サーシャは改めて俺の顔を見て、深く頭を下げた。
「透、本当にありがとう。鍛冶道具をくれたおかげで、私はここで修行を続けられる。あの道具がなかったら、きっと何もできなかったよ」
「気にするな。俺にできることをしただけさ」
俺はそう言うと、一枚の鉄板を召喚し、サーシャに手渡した。
「これ、俺の世界の鉄板だ。きっとお前の鍛冶に役立つと思う」
サーシャは目を丸くしながら鉄板を両手で受け取った。
「すごい……こんなに均一で、滑らかな鉄板……! ありがとう、絶対に無駄にしない!」
「じゃあな、サーシャ。元気で」
「透もリーナも、気をつけてね!」
こうして俺たちは鍛冶ギルドを後にし、街の門へと向かった。
カミカムの街を出ると、馴染み深い街へと続く道が広がっていた。帰りは二人だけだ。1日歩けば、街に戻ることができるだろう。