第38話:異質なる斬撃
俺たちは試し切りのため、鍛冶ギルドの中庭に出た。陽の光が届きにくく、鉄の焼ける匂いと煤けた壁が立ち込める、陰鬱な空間だった。空気は湿って重く、地面には無数の黒ずんだ鉄屑が散らばっている。
サーシャが作り上げた小剣の力を確かめるため、試し斬りが行われる。場を囲むギルドの職人たちも、鉄粉で汚れた顔をしかめながら、興味深そうにこちらを見ている。ギルドの職人たちも興味津々といった様子で見守っている。
「さて、何を斬ればいい?」
サーシャが小剣を手にしながら尋ねる。
「普通の木材じゃ、この剣の本当の力は測れないだろうな……」
俺は考え込み、ふと自分の召喚の力を思い出した。
「じゃあ、ちょっと試してみるか」
俺は右手を前に出し、脳裏に思い描く。
コンクリートブロック——
シュウッ……ゴドン!
光が瞬き、一つの巨大なコンクリートブロックが地面に現れる。ギルドの職人たちは目を丸くし、一瞬静まり返った。
「な、なんだこれは……?」
「すごい……こんな硬そうな石材、どこから出したんだ?」
「まぁ、俺の能力だよ。それより、こいつで試し斬りしてみてくれ」
サーシャは少し驚きつつも、小剣を握り直した。
「やってみる!」
彼女は深く息を吸い込み、一歩踏み込む。
ヒュンッ!
刃が空を切り裂く。そして——
バギンッ!
コンクリートブロックが真っ二つに裂けた。
「……!? 斬れた……?」
俺もリーナも信じられないような表情で、割れたブロックを見つめた。
「すごい……!」
しかし、それだけでは終わらなかった。
刃の目玉が再びギョロリと動き、青白い光が脈打つ。
その瞬間、割れたコンクリートの破片が、まるで生命を持ったかのように蠢き始めた。
「な、なんだこれ……!?」
サーシャは思わず後ずさる。
「もしかして、この剣……単に斬るだけじゃなく、何か別の力を持ってるんじゃ……?」
ゲロリンギョスさんが腕を組みながら呟いた。
「ふむ……やはり普通の武器ではないようだな」
試し斬りは成功した。だが、この小剣には、まだ謎が多く残されていた。