第30話:市場での出会い
カミカムの市場は活気に満ちていた。通りには多くの露店が並び、果物や香辛料の匂いが漂っている。リーナと一緒に歩きながら、俺は物珍しそうに周囲を見渡した。
「へぇ、ドワーフが作った金属細工か……確かに頑丈そうだな」
鍛冶屋の店先では、ずっしりとした鉄製のナイフや装飾が施された銀の腕輪が売られていた。客の多くは屈強な男たちで、時折、値段交渉の声が聞こえてくる。
「透、何か興味ある?」
リーナが尋ねてくる。俺は少し考えたが、今はまだ装備を買うタイミングではないと思い、首を横に振った。
「まだいいかな。とりあえず、いろんなものを見てみたい」
俺たちはさらに市場の奥へ進んだ。すると、雑貨を扱う露店の前で、ひときわ目を引く少女がいた。
細身で背が低く、エルフのように尖った耳を持つ。しかし、ドワーフのように屈強な腕をしているという不思議な見た目だった。彼女は小さな木箱を抱えながら、熱心に店主と話している。
「ねえ、リーナ……あの子、エルフ? それともドワーフ?」
俺がそっと尋ねると、リーナは苦笑しながら答えた。
「ミックスドだよ。エルフとドワーフの混血。珍しいでしょ?」
「なるほど……そんなこともあるんだな」
その少女は店主と何やら揉めている様子だった。
「だから、ちゃんと正規の値段をつけてよ! これは本物の魔法鉱石なんだから!」
「へっ、そんなもん誰が信じるか。見た目じゃ判断できねえしな」
少女は憤慨しているが、店主は軽くあしらっている様子だった。
「ねえ、透。ちょっと助けてあげようか?」
リーナが俺の腕を軽く引いた。
「……まあ、せっかくだしな」
俺たちは、その少女に近づくことにした。