第29話:カミカムの街
戦闘の疲れが残る中、俺たちは再び歩みを進め、ようやくカミカムの街の門が見えてきた。
「ついた……!」
リーナが安堵の息をつく。俺も思わず肩の力が抜けた。
カミカムの街はソーメンラーメン王国の中でも比較的大きな交易都市らしく、城壁に囲まれた門の前には、多くの商人や旅人が列を作っていた。街の内部からは活気のある声が響き、市場の賑わいが伺えた。
「さて、まずは依頼の報告をしようか」
ガルスが馬車を止め、商人と何やら話している。その間、俺とリーナは荷を下ろす手伝いをした。
「透、体は大丈夫?」
「まあな。初仕事にしちゃ、なかなかキツかったけど」
「そりゃそうだよ。でも、無事に終わってよかったね」
リーナは笑いながら俺の肩を軽く叩いた。
ギルドへ向かう道すがら、街の雰囲気をじっくりと観察する。道沿いには露店が立ち並び、異世界らしい果物や肉が売られている。商人たちの威勢の良い声が飛び交い、通行人も多い。
「へぇ……こっちの市場は結構賑わってるな」
「ここは交易の拠点だからね。いろんな国から人が来るし、品揃えも豊富なんだよ」
リーナの言葉に納得しながら、ギルドの建物が見えてきた。
扉を開けると、ギルドの中はいつものように活気に満ちていた。受付には、俺たちと同じように依頼を終えた冒険者たちが並んでいる。
「じゃあ、報告してくるよ」
ガルスが受付へ向かい、俺たちは後ろで待機した。しばらくして、彼が戻ってくると、一人ずつ手のひらに小さな革袋を渡していく。
「一人500バイト、確かにな」
俺は袋を受け取りながら、ようやく初めての報酬を手にしたことを実感した。リーナも同じように袋を開け、中のコインを確認している。
「透、初報酬おめでとう!」
リーナが笑顔で祝ってくれた。
「ありがとう。これで何か買えるな」
ガルスは腕を組みながら言った。
「お前ら、しっかり稼いでしっかり使えよ。じゃないと、冒険者はすぐ詰むからな」
彼の言葉に俺は頷いた。
「透、これからどうする?」
リーナが尋ねてきた。
「そうだな……まずは少し休みたいけど、次の依頼も考えないとな」
「うん、私ももう少し街を見て回りたいし、一緒に市場でも行こうか?」
「いいな、ちょっと面白そうなものが見つかるかもしれない」
街を歩いていると、妙に背の低い屈強な男たちが目についた。彼らは立派な髭を生やし、鍛えられた腕で重たい荷を運んでいる。
「なんか、小さいけどガタイのいい奴らが多いな……」
俺が呟くと、リーナがクスクスと笑った。
「それ、ドワーフだよ。カミカムはドワーフが多い街だからね」
「ドワーフ……?」
異世界ファンタジーの設定では聞いたことがあるが、実際に目の当たりにするのは初めてだった。
「彼らは鍛冶や工芸の名人だし、酒も大好きなんだよ。カミカムの名物の一つは、ドワーフが作る金属細工なんだから」
「へぇ……面白いな」
俺は改めて、目の前の屈強なドワーフたちを観察した。
こうして俺たちは、異世界の交易都市・カミカムの街をじっくりと探索することにした。