第25話:護衛任務の開始
### 第25話:護衛任務の開始
翌朝、俺とリーナは市門前へ向かった。馬車の荷台に荷物を積み込む商人や、護衛として集まった冒険者たちの姿が見える。
「お前が新人か?」
護衛のリーダーらしき男が近づいてきた。40代くらいの厳つい体格で、片目に傷がある。彼の名はガルス。
「はい、町田透です」
「まぁ、最初はビビるだろうが、しっかりやれよ」
彼は軽く肩を叩き、他の護衛たちに指示を出していく。今回の護衛は俺とリーナを含め、全部で5人。俺たちは馬車の左右を歩きながら、道中の安全を確保する役目だった。
護衛するのは三台の馬車で、それぞれ生活物資や食料を積んでいる。商人たちはこの荷を運び、二つ先の街カミカムへ向かう予定だ。
「この道は比較的安全だけど、最近は野党が出るって噂もある。気を抜くなよ」
商人の言葉に、俺は少し緊張した。
馬車がゆっくりと動き出す。道は舗装されておらず、車輪が砂埃を巻き上げながら進んでいく。周囲には低い丘や林が広がり、見通しは悪くないが、どこか不安を感じる。
二時間ほど進んだ頃、日差しが高くなり、馬たちの息が荒くなってきた。俺も長時間の歩行で足がだるくなり始める。
「このまま順調にいけば、夕方には中間地点の宿場に着けるな」
「透、大丈夫?」
リーナが隣で声をかけてきた。
「ああ。でも、野党が本当に出たら……」
「落ち着いて。戦いになったら私もサポートするから、透はできる範囲で動けばいいよ」
彼女の言葉に少し安心する。
そんな中、ガルスが前方に向かって叫んだ。
「馬車を止めろ!」
突然、道の真ん中に倒木が横たわっていた。明らかに不自然な位置にあり、誰かが意図的に置いたものだと分かる。
「野党か……?」
ガルスが剣を抜き、周囲を警戒する。俺も緊張しながら周囲を見渡した。
その時、茂みの中から何かが飛んできた。
ゴツッ!
拳大くらいの石が俺の肩に当たる。
「なっ……?」
次の瞬間、林の中から十数人の影が飛び出してきた。ボロボロの布を身にまとい、手にはナイフや棍棒を持っている。目には怯えと飢えが入り混じった、獣のような光が宿っていた。
「こいつら……!」
年齢はどれも15歳前後。痩せ細った体で、それでも必死に襲いかかってくる。
「おい、野党のガキどもだ!」
ガルスが叫び、護衛たちが迎え撃つ。だが、相手は命懸けだ。容赦なくナイフを振りかざし、棍棒を叩きつけてくる。
「くそっ……!」
俺は反射的に召喚を発動した。
ガラン!
目の前に現れたのは鉄パイプ。
「よし、これなら……!」
だが、手に取った瞬間、想像以上の重さに腕がぶれる。
(重い……! こんなもの、うまく振れるのか!?)
その間にも、野党の少年がナイフを持って俺に飛びかかってきた。
「くっ……!」
異世界での初めての戦闘が、今まさに始まろうとしていた。