第24話 はじめての護衛依頼
翌朝、俺とリーナはギルドへ向かった。昨日の宴の余韻がまだ残っているが、俺にとっては異世界での初仕事を探す大事な日だ。
ギルドの依頼掲示板には、さまざまな依頼書が並んでいる。紙はどれも古びていて、文字も雑に書かれているが、それでも掲示板の前には多くの冒険者が集まり、適当な仕事を物色していた。
「さぁ、どんな依頼を受ける?」
リーナが腕を組みながら俺を見た。
「最初は簡単なものがいいな。戦闘は避けたいし、体力もあまり自信がない」
「そうだね……じゃあ、これなんてどう?」
リーナが指さしたのは、**『街道沿いの荷馬車護衛(Fランク)』** という依頼だった。
「護衛ってことは、戦う可能性もあるんじゃないのか?」
「基本的にはないよ。盗賊や野生の魔物が出ることもあるけど、護衛の仕事は大抵、脅しが効けば済む話。荷馬車の御者と一緒に街道を移動するだけだから、初心者向けの依頼のひとつだよ」
「報酬は?」
「一人につき500バイト。半日ほどの仕事だから、まずは様子を見るにはいいと思うよ」
500バイトか……昨夜のギルドの酒が一杯10バイトだったことを考えると、まずまずの額に思える。
「よし、それにしよう」
俺は依頼書を手に取り、受付へ向かった。
受付に座っていたのは、50代くらいの男性だった。がっしりとした体格に、古びた革鎧を身にまとい、顔には傷がいくつも刻まれている。明らかにただの事務員ではない。
「Fランクの依頼だな。よし、登録しとく。護衛の集合場所は明日の朝、市門前だ。遅れんなよ」
ぶっきらぼうな口調だが、どこか気遣いのある声だった。
「ありがとうございます」
「ま、最初の仕事なら無理すんな。街道の護衛はな、油断すると痛い目見るぜ」
彼は羊皮紙の依頼書にスタンプを押しながら、ちらりと俺を見た。
依頼を受けた後、リーナと一緒にマーケットへ向かった。初仕事に備え、最低限の道具を揃えておく必要がある。
「護衛とはいえ、長時間の移動になるし、準備はしておかないとね」
リーナが言いながら、市場の賑わいの中を歩く。露店が立ち並び、商人たちが声を張り上げている。
「まずは薬草だな。怪我したときに備えて」
路地の一角にある薬屋で、簡単な治癒効果のある乾燥薬草を数束購入する。次に、頑丈そうなロープも手に取った。
「ロープって何に使うんだ?」
「何かと便利だよ。荷物を縛ったり、緊急時に崖を降りるのにも使えるしね」
確かに、何が起こるかわからない異世界では、万能な道具だ。
次に鞄を探しに行った。今使っているのは現代のビジネスバッグで、異世界の旅には不向きすぎる。丈夫な革製のリュックを見つけ、購入。
「鍋も持っておいたほうがいい。スープや煮物を作れるから、旅では必須だよ」
リーナの言葉に従い、小型の鉄鍋を手に取る。そして、保存食として干し肉や干しパンもいくつか袋に詰めてもらった。
「これで準備は万全かな?」
「そうだな。荷物も増えたし、一度宿に戻ろうか」
こうして、俺は異世界での初仕事に向けた準備を整えた。
「透、いよいよ初仕事だね!」
リーナが嬉しそうに俺の背中を叩く。
「そうだな……とにかく、やるしかない」
俺は改めて気を引き締めた。ソーメンラーメン王国での冒険者生活が、本格的に動き出すのだった。