第22話:冒険者ギルド登録完了
自動販売機を消去したことで、俺の体は重くなり、少しふらついた。体力の消耗を強く感じながらも、俺はギルドの試験官を見た。
「透、休んだほうがいいって!」
リーナが俺の腕を引き、心配そうに顔を覗き込む。
「いや、大丈夫だ……とりあえず、登録手続きを終わらせたい」
試験官の女性が俺の様子を観察しながら、羊皮紙に何かを書き込んだ。
「あなたの能力は特殊だけど、戦闘に応用できる可能性は十分にあるわね。召喚士として正式に登録を認めるわ」
彼女は俺に **金属プレート付きの革紐** を手渡した。金属部分には俺の登録名が刻まれているが、文字が異世界語で書かれているため、俺には読めなかった。
「最初はみんなFランクよ。実績を積めば昇格するわ」
「Fランクか……」
試験官の言葉に頷きながら、俺はギルドカードを手の中でじっと見つめた。これで俺も正式に異世界の冒険者だ。
そのとき、リーナが俺の腕を引いた。
「ちょっと透! そのままじゃダメだよ!」
「え?」
「ほら、腕とか顔とか血が滲んでるし……戦闘のときに飛んできた破片のせいで傷だらけじゃん!」
言われてみれば、腕や頬の痛みがじわじわと広がっている。俺が無理をしていたことに気づいたリーナは、ため息をつきながら小さなポーチを取り出した。
「ちょっとじっとしてて」
リーナは器用に傷口を拭い、小瓶から取り出した薬草のペーストを塗り込んだ。
「うっ……!」
「少し染みるけど、我慢してね」
リーナが取り出した包帯は、ところどころ黄ばんでいて、あまり清潔とは言えなかった。
「え、これ……」
俺が少し引くと、リーナは苦笑いしながら答えた。
「異世界ではね、包帯は洗って何度も使うものなの。新品は高いから」
確かに、この世界に滅菌ガーゼや消毒済みの医療用品があるとは思えない。俺は少し躊躇したが、今はそんなことを言っている場合じゃない。
手際よく包帯を巻きながら、リーナは少し怒ったような、それでいて心配そうな表情を浮かべた。
「無理しすぎだよ、透。もう少し自分の体、大事にしなきゃ」
俺は苦笑しながら頷いた。
「ありがとな、リーナ」
「……まったく」
リーナは腕を組みながらため息をついたが、その顔には少しだけ安心したような笑みが浮かんでいた。
「よし、じゃあ初仕事を探してみようか!」
リーナが元気よく言う。
「おっと、その前に飯でも食うか?」
ケションが俺の肩を叩きながら笑う。
「お前の戦い、なかなか面白かったぜ。せっかくだから祝ってやるよ」
俺は驚いたが、悪い気はしなかった。こうして、俺の異世界での冒険者生活が本格的に始まるのだった。