第18話:騒然とするギルド
訓練場は静寂に包まれていた。俺の手元に転がるのは、武蔵野天然水のペットボトルと一本のボールペン。
「お、おい……あれはなんだ?」
見守っていた冒険者たちの間で、どよめきが広がる。
「なんだあの透明な水の入った奇妙な容器は?」
「いや、それよりも、あの細長い棒……魔道具か?」
俺自身も困惑しながら、手の中のボールペンを見つめた。
「透……やっぱり、精霊召喚じゃないみたいだね……」
リーナが神妙な表情で言う。試験官の女性は眼鏡の奥から俺を鋭く見つめ、咳払いをした。
「……どうやら、君の召喚は一般的な精霊召喚とは異なるようね。説明してもらえる?」
「ええと……俺もよく分かってないんですが、どうやら無機物を召喚する能力みたいです」
試験官の女性は少し考え込みながら、羊皮紙に何かを書き込んだ。
「無機物召喚……珍しいどころか、聞いたことがないわね。これは……うん、一応召喚魔法に分類されるとは思うけど……」
俺の能力に興味を持ったのか、見守っていた冒険者の一人が近づいてきた。
男の名はケション・ケチョン。屈強な体つきをしたAランク冒険者で、戦場を渡り歩いてきた歴戦の猛者らしい。背中には巨大な鉄球が鎖でつながれた武器——モーニングスターを背負っている。大柄な男で、鎧を着込み、大剣を背負っている。
「新入り、ちょっとその力を試してみてもいいか?」
「試すって……?」
「実戦でな。そこの訓練場で軽く模擬戦をやろうぜ。召喚士としてどこまで戦えるか、確かめさせてもらう」
周囲の冒険者たちがさらにざわめき、面白そうだと囁き合う。
「えっ、ちょっと待って、透はまだ戦闘経験が——」
リーナが慌てて止めようとするが、俺はぐっと拳を握った。
「……いいぜ。自分の力を試してみたいしな」
こうして、俺は突如として模擬戦を行うことになったのだった。