第16話:冒険者ギルドへ
ギルドへ向かう途中、リーナは興奮した様子で話しかけてきた。
「透、本当に冒険者になるんだね! でも、ギルドの登録ってちょっと大変だよ?」
「何か試験でもあるのか?」
「うん、登録するには基本的な体力測定とか、簡単な実技テストがあるの。あと、戦えるかどうかも見られるよ」
なるほど。登録するだけで済むわけじゃないらしい。
「召喚の力を見せれば、問題なく登録できるんじゃない?」
「うーん……試してみる価値はありそうだな」
俺たちは市場の外れにある大きな建物の前にたどり着いた。
『冒険者ギルド』と書かれた木製の看板が掲げられている。異世界の文字はまだ読めないが、リーナが教えてくれた。
「よし、行くか」
扉を押し開けると、中は広く、活気に満ちていた。酒場のようなカウンターがあり、テーブルでは屈強な男たちやローブ姿の魔法使いらしき人々が談笑している。
「新入りか?」
受付のカウンターに座っていた女性が、俺をじっと見つめて言った。
「はい、冒険者登録をしたいんですが」
「わかった。登録には、年齢、名前、身体能力の簡単な測定、そして実技試験が必要になる。それと、職業は決まってるか?」
職業か。俺の能力は『召喚』——となると……
「一応、召喚士……ですかね?」
召喚の力があると言われたが、まだ試したことはない。だが、異世界では召喚士といえば精霊を呼び出すのが普通らしい。俺も同じようにできるはず……たぶん。
「召喚士? ちょっと珍しいね。召喚士といえば精霊召喚が主流だけど、君もそうなの?」
精霊召喚——この世界では、召喚士と言えば精霊を呼び出し、それぞれの特性を活かした魔法を使うのが一般的らしい。しかし、俺の力はそれとは違う。
「ええと……精霊を呼び出せる、と思います……たぶん」
俺は少し不安になりながら答えた。召喚士として登録するなら、精霊召喚が前提なのか? でも、やってみなければわからない。
「じゃあ、実技試験で君の召喚能力を見せてもらおうか」
リーナが俺を横目で見ながら小声で囁く。
「透、本当に精霊を召喚できるの?」
「……正直、やったことない。でも、試せばできるかもしれない」
「……まぁ、やるしかないか」
ギルドの受付嬢は微笑みながら、試験場への案内を指示した。
「透、大丈夫?」
リーナが心配そうに聞いてくる。
「まぁ、やるしかないな」
こうして、俺は冒険者登録の試験に挑むことになった。