第15話:異世界での初仕事
そういえば、異世界に送られる前、管理人が言っていた。
「町田くんには"召喚"の力を与えてあげるよ。無機物なら、見たものをいつでも取り出せる。便利だろ?」
しかし、それをどう使えばいいのか、実際に試す機会はなかった。
リーナと街中を歩きながら、自分の能力を試したい気持ちが湧き上がってきた。
ただ、異世界での生活基盤を整える方が優先順位は高いため、まずは仕事を探そう。
「透、本当に働くの?」
リーナが少し驚いたように尋ねる。
「そりゃそうだろ。この国で生きていくには金が必要だし、何よりこの国のことを知るには、実際に体験してみるのが一番だ。まずは自分が何をできるのか試してみないとな」
「うーん……これまではどんな仕事をしていたの?お金持ちそうな服着てるし。」
「あー…商人だよ。でも少し疲れちゃって」
「かわいそうに。疲れちゃって、国を出てきたのね。じゃあ、簡単にできそうな仕事を探してみようか」
リーナは市場の人々に尋ね、比較的初心者でもできる仕事をいくつか紹介してくれた。
1. 荷運び(市場での力仕事・日給300バイト)
2. 皿洗い(食堂での仕事・日給250バイト+食事付き)
3. 文字書きの手伝い(書記仕事・日給500バイト ただし、異世界文字が読めないと難しい)
「透の服装だと、荷運びよりも書記仕事が向いてるかも。でも、この国の文字はまだ読めないんだよね?」
「そうなんだよな……」
だが、俺には『召喚』の能力がある。
試しに試したことはなかったが、無機物を召喚できる力が俺にはあるはずだ。
「……試してみるか?」
俺は静かに手を伸ばし、頭の中で思い浮かべる。試しに、ポケットに入れていたはずのボールペンを——
次の瞬間、俺の手のひらにボールペンが現れた。
「えっ!?」
リーナが目を丸くして俺の手を見つめる。
「い、今、何したの!?」
俺は驚きつつも、じっとボールペンを見つめた。確かにこれは、俺が日本から持ってきたものだ。
「……召喚したみたいだな」
「召喚!? そんなことできるの!?」
「どうやら、俺は無機物なら一度見たものを自由に呼び出せるらしい」
リーナは興奮した様子で俺の手元を覗き込んだ。
「すごいよ、それ! もしかして、すごく役立つんじゃない?」
俺は改めて自分の手を見つめた。
この力を活かせば、冒険者としてやっていけるかもしれない——
俺は腕を組んで考えた。この世界の文字を覚えるのは必須だが、すぐにできる仕事ではない。今はまず、金を稼ぎつつ、異世界の生活に慣れることが大事だ。
「とりあえず、冒険者としてやってみるか」
俺は冒険者としての道を選ぶことにした。安定はしないが、経験を積めば大きく稼ぐこともできる。
「じゃあ、ギルドに行って登録してみよう!」
リーナの案内で、俺は異世界での初仕事に挑むことになった。