第13話:呪いのTシャツの真価
店を出ると、リーナは何度も俺の顔を覗き込んだ。
「透、本当に大丈夫なの? 変な気分になったりしない?」
「平気だよ。ただのTシャツだって」
俺は買ったばかりのローリングストーンズのTシャツを眺めながら肩をすくめた。異世界にあるはずのない品を手に入れた驚きはまだ残っているが、呪いに関してはまったく気にしていない。
「でも、男爵家の人たちは本当に踊り狂って死んだんだよ? それって普通じゃないよね?」
「確かにな。でも、もしかしたら別の理由があるかもしれないだろ?」
リーナは心配そうに俺とTシャツを交互に見つめたが、やがてため息をついて首を振った。
「まぁ……透がそう言うなら。でも、そのTシャツ、本当に呪いがないのか確かめる方法ってある?」
「そうだな……試しに着てみるか?」
俺は冗談めかして言ったが、リーナの顔が一瞬真っ青になった。
「えっ……や、やめたほうがいいと思うよ!」
「冗談だよ」
俺は苦笑しながらTシャツをビジネスバッグにしまった。現状、着るつもりはないが、機会があれば試してみるのも面白いかもしれない。
「それにしても、透って本当に変わった人だね。呪いのTシャツを平然と買っちゃうなんて」
「そうか?」
「うん。でも……なんだか気になるな」
リーナは少し考え込むように唇を噛んだ後、俺の腕を引いた。
「よし! こうなったら、しばらく透の様子を観察しよう! 何か変なことが起こったら、すぐ気づけるようにね!」
「え、それってつまり……?」
「決まり! 透が呪われてないか、私が見守るよ!」
突然の宣言に俺は目を瞬かせた。リーナは自信満々の笑顔で頷いている。
こうして、呪いのTシャツの真価を確かめるために、リーナが俺の行動を監視することになったのだった。