表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/62

第10話:異世界の興味

 「お兄さん、その服、すごく変わってるよね。こんななめらかな生地、見たことないなぁ」


 リーナは興味深げに俺のシャツの袖を指でつまんで眺めている。


 「これは……綿と化学繊維が混ざった生地だな。向こうの世界では普通の服だよ」


 「ふーん、すごく丈夫そう。けど、こんな服を着てる人、ここじゃ見かけないよ」


 リーナは次に俺の足元へ視線を移した。


 「それに、その靴……これ、すごくしっかりしてるね! 革靴ってこんな形してるの? 針で縫ってるように見えないけど……」


 「ああ、これは特殊な製法っていう作り方で——」


 説明しようとして、俺は口をつぐんだ。この世界にグッドイヤー製法なんてないだろうし、説明しても通じるかどうかわからない。


 「まあ、向こうの職人技ってやつさ」


 「へぇ……職人技かぁ……」


 リーナは興味津々な様子で俺の靴を眺めている。布が好きらしい彼女にとって、俺の服や靴はかなり珍しいものに映っているのだろう。


 「そうだ、お兄さん、ちょっと座っていかない? お話ししたいこと、たくさんあるし」


 リーナが店の奥にある木製の椅子を指さす。


 「いいのか?」


 「もちろん! それに、何か食べながらのほうが話しやすいでしょ?」


 俺は少し考えてから、ビジネスバッグの中を探った。手元には、日本から持ち込んだチョコレート菓子がある。


 「じゃあ、これでも食べながら話そうか」


 「その前に、俺の名前を言っておくよ。町田透。透でいい」


 「透? うん、わかった!」


 そう言って、俺は小さなチョコレート菓子の包みを取り出し、リーナに差し出した。


 「なにこれ?」


 「甘いお菓子さ。試しに食べてみてくれよ」


 リーナは包みを手に取り、しばらくじっと眺めていた。


 「これ、どうやって開けるの?」


 どうやら包装を開ける概念がないらしい。俺は微笑みながら、包みを剥がしてチョコレートを取り出し、リーナに手渡した。


 「こうやって開けるんだ。ほら、食べてみて」


 「ん……! すごく甘い! 口の中で溶ける……何これ!? こんなの食べたことない!」


 目を輝かせながらチョコレートを味わうリーナ。その表情を見て、俺は少し安心した。


 「お兄さん、面白いね! 服も靴も、食べ物も全部珍しいものばかり。もっと色々聞かせてよ!」


 リーナの興味は尽きないようだった。俺はしばらくの間、この異世界の仕立て屋で、彼女と交流を深めることになりそうだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ