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1番目だよ

主人公AはBに対して恋愛感情を抱いている。だが、顔はわからない。声も聞こえない。それが誰なのか。私にはまだ、わからない。


あるとき、Bの友人、Cから、Bについて話を持ちかけられる。どうやら、Bは教室の外、扉の裏にいたようだが、顔は見せてくれない。声も聞こえない。


C「Bのことは、もういいの?」

A「いや、わからない。でも、好きな気がする。」


無言。それ以上のことは、私には話せなかった。


C「そう。可哀想に。」


そう言い残して、Cは教室を後にした。


私は何を忘れているのだろうか。今、記憶の断片から得られるものは、Bは女性であること。私はAであり男性であること。Bは昔、どこかの交差点にいたこと。Bの横に、黒い人形がいたこと。


思い返せば、何も覚えていない。そもそも、この世界の構造は、自分の立場は。個々に思い詰めることで、抽象化した世界に形を与えられる。そうだ、ここは教室。白い壁紙、一番後ろの窓際の席で、Cは後ろの扉から入ってきた。私は机にうつ伏せになっていたため、Cは少し前かがみに私を覗き込んでいた。身長は高め。胸も大きい。しかし、誰だ。顔は見えない。灰色、薄灰色のチェックが入ったスカートに、紺色のカーディガンを羽織っている。開いた前面には白く濁ったボタンが縦に並ぶ固めの白いシャツが覗く。胸ポケットは四角く、名札は付いていない。髪は、おそらくポニーテールで、髪色は茶色だったはずだ。


私は当時、Cに何の感情も抱いていなかった。ただ、純粋な疑問、「可哀想に。」という言葉が、誰に向けられたものなのか。ただ、それだけを考えていた。そもそも僕は、Bのことを何も知らない。Cだって初対面だったはずだ。腑に落ちない。きっと、今回の夢アドベンチャーの謎を解く鍵は可哀想に:であるということだろう。


僕は、ふらふらと教室を後にした。彼女らを追うわけではない。ただ、意味もなく歩いていた。いや、歩くというのは速すぎただろうか。何も感じていなかった訳では無い。考えた挙げ句、私は焦っていたのだ。何かを忘れていることに。だから、足取りが軽いわけではない。むしろ、浮足立って、目的を見失っていた。故の、焦り。存在の要として、帰着すべき言葉を探していたのだろう。


気がつけば、私は自転車で走行していた。大きな橋。高速道路のように二車線で、車通りは多く、速い。歩道は狭く、自転車が2台すれすれだろう。橋の下は、海。あまり海を知らないが、水面が不規則に波打ち、水滴が上に跳ねるような挙動をしている。きっと、そうとうに荒れているのだろうか。

この先のルートは、明晰夢によってコントロールされる。私が、そうありたいと願えば叶うわけではない。必要なのは、動機と必然性である。つまり、存在の要として、帰着すべき言葉。動機を認識することで、情景や行動はそうあるべきだと表出される。当時の私が、何を見出したのかは覚えていない。ただ、可哀想に:この言葉に惹かれていたことは確かだ。



続きはいつかの夢で。





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