三人の行動と行方(3)
一般人になったリョータの目的地は王都。ミラ王国で最も栄えている王都に向かっているのだ。
実際の所は元実家であるライド公爵の町とそれほど大差ないのだが、そんな事は知らないリョータは、田舎からの脱却と言う無駄に強い意志を持って王都を目指していた。
「そう言えば他の二人、京子に美穂だったか?あいつらも似た様な名前になっているんだろうが、何をしているやら……俺と同じで能力を三つか四つ持っているはずだから相当な強さになっているだろう。クソオヤジ曰く、この状態でも既に別格の強さらしいからその内噂になるだろうな。その後に見つけて挨拶でもしてやるか」
名前の由来、そして能力やレベルについて貴族の立場で得られる豊富な知識を持っているリョータは、他の二人、もちろんそこには新人であり四号であったヨージは含まれていないのだが、その二人との再会も出来れば良いと思っていた。
その残りの二人はリョータの予想通りに名前は似たような形になり、能力もヨージの分が加算されている状態で、一人はリョータと同じく公爵家、一人は王都のギルドマスターの娘として存在していたのだが、リョータのように悪目立ちはしていない。
共に、立場を十分に利用して慎重にこの世界についての知識を得ていたのだ。
そして自分が得ている能力を検討した結果、あの部屋で伝えられたように相当な力を持っていると確信していた。
名 前 ミホ
種 族 人族
能 力 身体強化 レベル1
交渉術 レベル2
隠蔽魔術 レベル1
名 前 キョーコ
種 族 人族
能 力 身体強化 レベル1
魅了眼 レベル1
変装術 レベル2
一部戦闘には一切関係のない能力もあるが、それはそれでこの世界を生き抜くには有用だ。
今の立場を考えると逆に戦闘と言うよりも変装やら交渉やらが必要になる事が多分に考えられるので、非常に助かると考えていたのだ。
更に力が欲しければダンジョンに行くなり魔獣を始末するなり、修行をするなり、方法は幾らでもある。必ず力を得られると言う保証は一切ないが……
一般的にはそう簡単には能力は得られないしレベルも上がらないが、転生者である自分達はその枠には当てはまらないと確信していた。
炎が言っていた、経験や性格に応じて上がりやすい能力が決まっている事と上限が決まっていると言った言葉には少し引っかかる所があるが、この世界の人族よりはどんな状態であっても有利に働く事は間違いなさそうだ。
彼達が得ている能力は異世界で無事に過ごせるようにと言う炎による配慮で、炎側で調整の結果“身体強化”が必ず含まれていた。
残りも炎の配慮で個々人の希望、経験から必要な能力が選択されてその能力を得られており、全てではないが比較的相性が良い能力を得ていると言えるのだが、地上では希望に沿った能力を水晶から得られるわけではない。
既に家を追い出されたリョータを除き、この二人は未だ立派な立場がある。
立派な立場と通常では得られない程の力を既に得ている二人は、今後どのような動きをするのか……
自発的ではないにせよ、親がその力を利用して野心を抱く可能性もある。
炎としてはこの星、この世界に必要なエネルギーを送るために止むを得ず行っている行為だが、今回は対象が両極端に振れてしまっていた。
片や温厚で、平和主義、予想以上に他社に配慮が出来る非の打ち所がない存在と言って良いヨージ。
残りの三人は苛烈で野心家。
前者は良いが後者は世界に悪影響を及ぼす可能性が高く、既にリョータは四歳にして家を追い出されている程だ。
荒れるのは必然だが、前者のヨージとしては能力をひけらかす事もしていないので、両親とラーカと共に今の所は楽しく生活している事が唯一の救いだろうか。
しかし、四人共に同じ国家に飛ばされているので、やがては互いを引き合い接触する事になるだろう。
その後どうなるのか……誰も知る由はない。