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三人の行動と行方(1)  第三者視点

 洋二があの部屋で炎さんと呼んでいる存在と会話をしている時、既に部屋で長きに渡って行動していた椋太、美穂、京子の三人の魂は、魂としての存在に慣れて、自由に活動できるようになっていた。


 洋二を見て、自分もここに来た当時は一切動けなかった事を思い出していた程だったりする。


 四人目、四号と呼ばれた存在が現れて特殊能力を付与してくれる水晶が目の前にあり、直後に異世界に行くと言われている。


 その水晶は3個がある程度固まった場所にあり、夫々がほんの少しだけ離れた場所に置いてあるので、そこを目指してフヨフヨと三人の魂が水晶の前に移動すると、目はないが全員と目が合った気がした三人。


 三人はこの状態()で初めて会っているのだが、これだけ長い時間同じ空間にいればその人柄、そして生前の話を互いにしているので、性格もある程度理解できていた。


 心で思うとこの部屋の主のような存在である炎に全てが明らかになってしまうため、最も短い期間この場所にいる人物でさえ200年弱、ひたすら互いに意思疎通できる技術を磨いていた。


 そこで得た力によってこの場で三人が同意したのは、部屋の主たる炎と新人が話に夢中になっている隙に新人の分の能力も奪ってやろうと言う姑息なものだ。


 主たる炎によれば、自身では直接的に異世界には干渉できないと言っている以上デメリットはないと判断したのだ。


 向こうの世界に言った時、伝えられたとおりに自分の努力で能力を得られるのだろうが、そう言った環境になっているのかと言う不安もあった。


 例えば、ある時に大怪我をして動けなくなるとか、没落貴族の元に生まれて普段の生活すらままならないとか……いくらでも起こり得る為に、対策として一つでも多くの能力を得られるうちに得てしまった方が良いだろうと言う判断だったのだ。


 200年近く行動を共にしていた三人は新人に対してかわいそうと思う事は一切なく、むしろ自分達を散々待たせた代わりに能力を貰ってやると言う気持ちでいた。


 その結果、まんまと三人共に予定よりも一つ多い能力を得て転生する事になっていた。


 あの部屋の主である炎は洋二を含めた四人の転生先である星を創造した神であり、期間は長いが定期的にエネルギーを送らないと崩壊してしまう欠陥を補おうと、地球で亡くなった人物の中で親和性のある魂を集めて送っていた。


 既に何回も実践しているので送られる場所は決められており、冒険を犯して他の地域に送って不測の事態が起こる事を防いでいる。


 指定されている地域とは、異世界の中に存在する国家の一つ、ミラ王国。


 その国家の中で、丁度母体の中で命を授かる所に順番(・・)自動(・・)転生させるのだ。


 もちろん深い干渉はできない為に身分はどうなるかは分からないが、奴隷の様な劣悪な環境にならない様には全力で配慮していた。


 その中で、先行して洋二の分も能力を奪った三人にも一連の流れとして両親には名前を継げていたのだが、この行動もいつもの定例作業から外れる事による不測の事態を避けるためだ。


 洋二と同じく転生前の名前を利用しているのだが、その三人、洋二と比べて身分の高い人材になっている。


 地球で椋太と呼ばれていた者は、リョータとして伯爵次男。

 美穂と呼ばれていた者は、ミホとして伯爵長女。

 京子と呼ばれていた者は、キョーコとして王都ギルドマスターの長女になっていたのだ。


 対して洋二改めヨージは平民の長男で転生時には何の能力も持たない人物であり、身分差による待遇の違いが顕著なこの世界では、ここで大きな差が開いていた。


 とは言っても創造神としての作業は終わってしまったため、これ以上干渉できないので放置する他ない。


『洋二さん、本当に申し訳ありません。貴方のこれからに真の幸せが訪れます事を、あなたの奥様と共にお祈りしております』


 創造神である神の呟きと共に、あの不思議な空間は再び永い眠りについた。

 次なる魂が必要になるその時まで……


 転生は、この場所で創造神による術の行使と共に自動的に行われるが、本来創造神である神はこの空間にいるべき存在ではない。


 創造神自身の言葉通りに洋二の妻がいる場所の神の一人なので、守るべき、保護するべき魂がいなくなった場合には、自ら存在すべき場所に戻る事になる。


 こうなるとヨージ達が転生した世界の詳細は、必要なエネルギーの状態程度しか分からなくなってしまうのだ。


 そんな創造神の心配をよそに、四年後、四歳になったヨージは元気にラーカと森で遊びまわっている。


 一方同じ転生者の内の一人であるリョータは、ライド伯爵次男としての生を受けているのだが、生前から素行が悪く、地頭も良くなかった。


 地球では、無免許で暴走しているうちに若くして事故で……と言うパターンだったため、その性格を受け継いでいる為に伯爵家としての教育は一切受け付ける事が出来なかったのだ。


「リョータ、お前はもっと貴族としての品格を身に付けろ!」


「そうは言っても、親父!兄貴がいるから問題ねーだろ?俺は自由に生活してーんだよ。いちいち干渉してくんな。うざってー」


 と、四歳にしてこのザマだ。


 流石にここまで横柄な態度で他の者達に接するような事があれば、誰が見ても公爵家としての品格が大きく下がるので、捨て置けないと考えたライド公爵だ。

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