表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/21

取り残される洋二

 目の前には、三つの水晶をある程度一纏めにした状態で四つに分けられている。


 あの一際大きな炎さんが頭に語り掛けている通り、三つの能力が得られるのだろう。


 そこに向かってフヨフヨ移動する三つの炎が微妙に可愛く見えるのは、実は私は相当心に余裕があるのかもしれない。


 私は移動する方法が良く分からないし、そんな世界に行くのではなく妻に逢いたいと言う思いが強いので、取り敢えず静観している。


『それぞれの能力は、生前の魂の力……そうですね、経験や性格に応じて上がりやすい能力が決まっていますし上限も決まります。ですが、少々適性がなくとも皆さんは特別に一般人以上の適正は得られますし能力上昇も早いのでご安心ください。各能力の最大レベルは10です。それと、その水晶の力を一つでも得るとこの場に留まれるのは数十秒ですから、即、他の二つの能力も得て下さいね』


 と、炎さんが水晶方面に移動している三人?に伝えると、私の方にフヨフヨ向かって来た。


『洋二さん。残念ですがあなたの奥様はここにもおりませんし、向こうの世界にもおりません。ですが、向こうの世界での生活が終わりましたら必ず洋二さんを奥様の所にお連れするとお約束します。今回は向こうの世界を助けると思って、彼方に向かって頂けないでしょうか?』


 やはりこの炎さん、心を読んでいる。となると、心で思えば会話もできるだろうな。


 いつの間にか炎さんも私の事を四号ではなく名前で呼んでいるし。


 取り敢えず、心で話しかけてみよう。


『二つほど聞かせて頂けますか?』


『どうぞ。何なりと仰ってください』


 おぅ、やっぱり心を読んでいたか……っと、質問、質問!これだけは絶対に聞かなくてはならない事だ。


『……妻は、幸せに過ごしていますか?』


『はい。洋二さんが来る事を待ち望んでおられますが、今回は事情をお話して少々待っていただく事を御了承いただきました』


 少しだけ泣きそうだ。どこに目があるか分からないけど。


 妻も私を待ってくれているなんて……ハッキリ言って嘘か本当かわかり様はないけれど、炎さんの言う事は信じてよさそうな気がする。


『ありがとうございます。安心しました。二つ目ですが、何故私達……適合する魂ですか?その世界に向かう必要があるのでしょうか?』


『あなた方異世界の方は、向こうの世界では常識外の力を得る事になります。つまり、それだけの力を得られる魂であるという事は、同時に膨大な力を彼方の世界に送り込める器になり得ると言う事です』


 これだけで何となく理解できる気がする。


 私達はよくわからないエネルギーの様な物を大量に運び込める、所謂運び屋だ。


『その通りです、洋二さん。彼方の世界に定期的にエネルギーを送らないと、星が崩壊してしまうのです。向こうの世界で順応できる魂程運べるエネルギーが大きくなりますが、一度この術を行使すると最低でも千年は行使できなくなるので、転生させる事が出来る最大の4人が集まるのを待っておりました』


『それが……そのエネルギーがあの水晶の力という事ですか?』


『いいえ。あれは本当に皆さんの力になる物で、エネルギーは全く別物です。皆様は一切気が付く事は無いですよ。向こうに到着した瞬間に星に吸収されますので、害もありません。そのお礼と言う意味でも、あの水晶の力をお渡しするのです。この空間ではエネルギー運搬の術発動直前に最大12個しか出せませんので、皆様にできる事はこれ以上ないのです』


 なるほど。この炎の様な形に見えるのは魂。

 つまり、私も他の人達からは同じような炎に見えているのだろう。


『洋二さんは来たばかりで、その形に慣れておりませんので動けないのです。少しすれば動けるようになりますが、もうこの空間にいる意味もありませんので能力を得て向こうの世界に行って頂けますでしょうか?』


『二つと言って申し訳ないですが、もう一つだけ。向こうでは私はどのような立場になるのですか?』


 そう、ここも聞かなければならない。


 例えば社長……とかは無い世界っぽいが、そう言った立場になると碌な人生ではなくなるだろう。


 身の丈に合った立場が良い!


 でも、立場はどうあれ生涯独身だろうな。愛する妻が待っているし!


『洋二さん、申し訳ありませんがそれはランダムになります。ですが、最低でも奴隷ではないように干渉は致しますが、それ以上は不可能なのです。それと奥様から伝言で、初めての世界に行くのだから、私に気兼ねせずに妻を娶るようにとの事ですよ。安らぎを与えてくれる人は大切だと仰っていました。その方とも、同じ妻として仲良くしていきたいともお話しされていました。素晴らしい方ですね』


『フフ、はい。私にはもったいない妻です。これで全てわかりました。では微力ながら協力させて頂きますよ』


 ここまでくれば、壮大な人助けをした後に妻に武勇伝を語ってやろう位の気持ちで炎さんの言う世界に向かう事にしたのだが、良く考えれば私の知らない内に勝手にエネルギーの様な物は運ばれているらしいので、何の武勇伝にもならないけどね。


『では、洋二さんは動けないでしょうから、こちらに水晶を持って……』


 炎さんの言葉が途中で消えてしまったのは、あの三人の炎と共に特殊能力とやらを与えてくれる水晶が全て(・・)消えていたからだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ