プロローグ①
金糸雀の首都クイーユーの宮廷の中にある中庭の噴水の前で、一人の体格の良い男が赤子を抱いていた。
噴水の水が上がったり、下がったりするのを静かに見つめていた。
いつもなら首都クイーユーなら、夜の静けさはなく、屋台での人の声や、明かりでにぎやかだったが、今日の天気が雨が降り出しそうであったため、静かだった。
噴水の水の音だけが宮廷の壁に響いている。
何回か、噴水を見ていると、そこに髪の長い体格の良い男が現れた。すると、髪の長い男に赤子を抱いていた男は赤子を渡した。髪の長い男は赤子を受け取り、微笑んだ。
「これが正しいのかはわかりません。でもこの子の将来を考えるとこうするしかないのでしょう」
「この子を頼む。この子はこの国の未来を明るくしてくれると信じている。私はこの子に健やかに生きてほしい」
先ほどまで赤子を抱いていた男は涙を溜めていった。
しばらく会話はなく、噴水の音だけが響いている。
噴水の音をかき消すように、赤子がぐずった。
すると髪の長い男は、噴水のふちに座り、赤子をあやした。
もう一人の男も噴水のふちに同じように座る。
髪の長い男が口を開いた。
「奥様の容体はどうなのでしょうか」
「この子を産んだあとで、かなり疲れてはいるが元気だ」
「産後すぐだというのに、暮らすべき場所へ戻さなければならない」
「・・・・この子のことはおまかせください。必ず立派に育てます」
髪の長い男は、そう言うと、頭を下げて中庭を去った。