二章 29 入国
一泊した次の日、ゆっくり道なりを進んでいると、ちょっと豪華な門が見えてきた。どうやら街についたみたいだ。門の奥に広がる街並みも整っていて、抱いた感想はキレイだった。俺は御者台から振り返り、
「ついたぞ。」
と、1言つたえると、琴葉と萌音、萌夢はわれさきにと顔をだして、感嘆の声を上げていた。その後入口の方へ馬車を進め、入国手続きまちだ。
「そういやさ。ジェイドやソウヒナって身分証みたいなの持っているの?」
俺が気になったことを聞いた。まぁ当たり前の話だが、俺、萌音、琴葉、萌夢、ソウタは身分証は持っていない。もしかしたら、ソウタの身分証はあの洞窟にあったかもしれないが、探し出せていなかった。全員持ってないと、もしかしたら入国で疑われるかもしれない。
「申し訳ございません。一応持っていたのですが、奴隷に落ちた時点で、盗賊達に奪われて処分されました。」
と、ジェイドは謝ってきた。そして、それはソウヒナも同様だった。もし持っていてくれたら、とは思ったが、持っていないのはしょうがないな。
「了解。まぁそれなら仕方ないよな。とりあえず身分証なしでも入れるよね?」
悪いのは全て盗賊ということにして、頭の中を切り替えた。世の中身分証持たない人も少なからずいるだろうし、その人達が街に絶対入れないとかなるとスラムが形成されるだろうしな。
「もちろんですわ。一人につき銅貨一枚払うと問題ないですわ。」
と、ソウヒナが答えてくれた。ソウヒナは経験者なのかな?とにかく助かる情報だ。そんな話をしていると、自分らの番になった。門の前には門を守るように立っている2人の兵士がいた。一人はのっぽで歴戦の兵士のようなガタイのいい恰好をしていた。そして、もう一人はチャラそうな感じに着崩して着ている若く平均的な身長のやつだ。
「確認する。全員馬車からおりたまえ。」
と、少し高圧的な態度で、門を守っていた二人の兵士のうちガタイのいいほうが命令した。そして、全員降りたのを確認して、再び俺達に話しかけようとしていると、門の中から貴族みたいな服を着た人がでてきた。門番であろう2人も慌てて膝をついた。そして膝をつかない俺達に殺気をとばしてきた。
「君らでしょ?バルガーの言っていた旅人は。このまま街に案内してもいいが、それじゃ納得しない奴らもいるだろうから。まぁあれだ一応確認のためにさ、サザカからもらった手紙の封筒見せてくれ。あいつの字はわかるからな。」
でてきた貴族みたいな人は馴れ馴れしく俺に話しかけてきた。こいつがどういうやつかわからないが、敵意はなさそうだ。チラッと琴葉の方を確認した。琴葉は首を横にふって、全く警戒してなさそうにしていた。全くしないのもどうかと思うが。
「これでいいか?」
俺が渡すと、その封筒を軽く裏表見た後に、
「問題ないな。なぁお前らコイツラの入国金俺が立て替えるからさっさと通しな。」
と、二人の兵士に命令した。二人とも
「「はっ」」
と、短く返事したあと、立ち上がって俺等の方を向き直して、
「さっさと通りたまえ。」
と、あいかわらずこちらには上から目線で偉そうにいった。まぁ俺等に地位など無いからこれでいちいちキレたりすると、めんどくさいことになるだけだしな。俺もだが、琴葉や萌音も別になんとも思っていないらしい。これくらいデッドリアのバカ王に比べたらなんともないからな。萌夢はちょっとムッと顔をしかめたが、体格差もあり、口に出さなかった。そんななかこの態度にキレた人がいた。
「ねぇお前らさ。俺が立て替える意味わかっている?こいつらは俺の客人なんだけど、なめた態度取るっていうなら俺にも考えがあるぞ。」
俺等を迎えてくれた貴族みたいな人だ。その声を聞いた兵士たちは土下座を慌ててしてその貴族に、
「「申し訳ありませんでした。」」
と、謝った。俺等にに高圧的な態度を取ったのは、両方ともガタイがいい方だったため、チャラい方はとばっちりだろ。ほんとに貴族だとしたら、この国は明確な身分の差があるみたいだな。
「謝る相手違うくない?」
そう貴族みたいな人がいうとこちらに慌てて頭を下げてきた。俺そこまで頼んで無いんだけどな。それを見て満足したのか、
「それで良し。問題あるやつで無いかぎり、普通の対応する。これは基本だろ。いつか貴族に気づかず同じことするよ。その時お前らが殺されようが俺は知らんからな。まぁバカ共の兵士への説教終わりにして、この街一番の宿泊所に案内するからさっさといくよ。」
そう言って貴族みたいな人は俺等の馬車に乗り込んだ。自分の馬車とかないのか?
「それでどこ向かえばいいんだ?」
初対面のやつが先に馬車に乗ってくつろいでいるというツッコミどころ満載のシーンをスルーして、御者台に乗りながら聞いた。
「大通りまっすぐ広い十字の交差にでたら右ね。それから5番目の場所に宿泊所あるから。まぁそこで俺は、自己紹介するよ。まぁ君らのことは、俺は、知っているけどね。」
と、堂々と休んだ状態で座りながらそういった。それを見た萌音達は全員呆れて声が出なかった。




