一章 3 テキストブック
俺がガチャから出てきたスキルの書を開こうとしていると、
「あれ?」
という声が聞こえた。俺が振り向くと萌音から声がもれてた。萌音の視点は俺や琴の方ではなくある一点の位置で止まってた。俺は、その様子に疑問を持っていると、同じこと考えたのか、
「萌音先輩どうしたんですか?」
と、琴が萌音に声をかけていた。琴は萌音の視線が向いているあたりをみて、何もないことを確認すると疑問に思ってたことをきいてくれた。琴に声をかけられた萌音は同じところ見てた視線を外して自分たちの方をみると、
「いや、体操服履いてからね、いつもより目が見えるなって思っていたんだ。ステータスでもあがったのかなと思って、冗談でステータスオープンと心の中で念じてみると、目の前に私のステータス画面出てきて驚いちゃった。しかもさっきはなかったスキルも増えていたし。二人にはこれ見えてないんだね。」
と、虚空を指差しながら萌音は話してきた。もう一度そこをみてもやはり虚空だ。試しに俺もステータスオープンと念じてみることにした。
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黎波 結希斗 (くろば ゆきと)
年齢 16 (誕生日10月4日)
性別 男
Lv 1
HP 78
MP 66
STR 85(+68) DEF 25
INT 34 RES 159(+50)
MDF 25 AGI 78
DEX 89
エクストラスキル
〘ガチャLv1〙
スキル
〘刀術Lv10〙〘弓術Lv6〙〘毒耐性Lv2〙〘料理Lv3〙
〘格闘術Lv10〙〘家事Lv2〙〘威圧Lv5〙〘気配察知Lv7〙
称号
〘黎波を継ぐもの〙〘刀を極めしもの〙〘救済者〙〘異世界からの召喚者〙
装備
頭 無し
上半身 異世界の制服 学ラン
下半身 異世界の制服 ズボン
靴 異世界のシューズ
武器 黒刀
アクセ 無し
所持品 リュック
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と、でてきた。
「どうやら、ステータスオープンを念じると、自分だけみることができるんだな。これは嬉しい誤算だ。あの水晶なくても自分のステータスがわかるというのは使いみちあるだろうしな。」
そういって活用方法考えていると自然と消えた。集中力がなくなると消えるのかな。そう考えていると琴が、
「僕もさっき一緒に体操服着ましたけど、何も違和感ありませんし、ステータスも増えてないです。」
と、いった。
「あれ私だけ?」
そう、つぶやくと再びステータスがあるらしいところ見ながら首ひねっていた。
「俺は、着替えて無いから、どっちが正しいかわからないが、たいていの人が琴と一緒の場合は、萌音のエクストラスキルが関わってくると思う。まぁ検証次第だな。」
「なるほどね。言われてみたらそうかも。私のスキル〘ファションモデル〙だし。可能性あるね。」
「それと……」
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『街から出るという条件が達成しました。これにより常設ガチャが登場します。常設ガチャ登場記念に無料10連をひくことができます。』
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どうやらまた解放されたらしいな。しかも常設か。これでいつでもガチャひけるようになったってことだな。にしても、タイミングだな。追放されたおかげで次々解放されてるわ。
「あれ?先輩、急に黙ってしまってどうしましか?」
俺が言葉を途中できったせいで、不信に思ったのか琴が声かけてきた。
「あっすまんな。このタイミングで常設ガチャが解放されたというアナウンスが流れてきてな。」
「そうなんですか。急に黙ってしまってびっくりしました。でも、萌音先輩のスキルが増えたのが〘ファションモデル〙だった場合、僕だけですね。エクストラスキルが不明なのは…………」
琴はその場ですごく落ち込んだ。何か言葉をかけたかったがエクストラスキルが解放されている俺が言っても焼け石に水だろ。琴のエクストラスキルは〘テキストブック〙つまり教科書だ。教科書といえば学習というイメージが強いが、何か学習していく感じなのだろうか?
「〘テキストブック〙だもんね。私達3人の中で一番わかりづらいよね。説明があったらいいのに。」
萌音も、俺みたいに考え始めた。だがいっこうに答えは出ない。
「もういっそのことさ、好きな教科のこと考えたら?教科書だから何か反応あるんじゃない。」
諦めたのか、萌音はそんなこと言い出した。言いたいことはわかるがそれで出るなら苦労しないと思うよ。
…………などと思っていた頃もありました。
「あっでました。僕のスキル。」
「まさか本当に出るとはな……」
喜んでいる琴のまえにオレンジ色の本が浮かんでた。琴が頭を動かすとその本もすっと動く。どうやら動きにリンクしてるみたいだ。でも邪魔にならないみたいに多少場所を動かすこともできるらしい。わりと自由がきいてた。
「おめでとう〜琴ちゃん。それでどういう能力なの?」
萌音も興味津々なのか、身体を乗り出して聞いていた。俺もそれは同じなので、何も言わず琴を見る。
「えっと今使えるのは地理だけで、効果はマップです。僕を中心に10メートル範囲の状況と今まで通った道の地図を見ることができるくらいです。また、これは一人に教科書の貸し出しもできるみたいで、まず結希斗先輩に貸してみますね。」
琴がそう言うとオレンジの本が俺の前に飛んできた。
「確かにこれはマップだね。しかも外にいる人もわかるのか。やはり四人のようだな。確かにこれは便利だね。」
俺がもっと詳しく見ようとすると、オレンジの本は琴の前に戻っていった。体感20秒くらいか。本人以外だと短いのかな。
「すみません説明忘れてました。貸し出し機能は20秒で同じ人に再使用するには30分かかるらしいです。」
と、申し訳なさそうにいった。
「いやそれはしょうがないよ。とはいえ、20か。これから解放される能力にもよるが、いざってときに貸し出したほうがいいかもな。」
俺がそう言うと、萌音も同意するように、
「確かにそうだね。私も見てみたかったけど一旦いいかな。ないとおもうけど、万が一があるかもだし。それに他の能力が覚醒したときに借りれなかったら困るかもだしね。」
と、少し名残惜しそうな顔をしながらいった。そして、萌音は、気を取り直したように、
「そういえばスキルのことについて話してて忘れてたけど結希斗君に今のうちにねていたほうがいいって言われてたね。気になるけど、私は寝るよ。もともと今日寝不足だったしね。おやすみ。」
「おやすみ萌音。」
萌音はマイペースなのか、馬車内の後ろのほうにいくとそのまま横になった。そしてすぐに寝息をたて始めた。あまりの速さにあきれていると、
「おやすみです。萌音先輩。結希斗先輩、僕も寝ることにします。夜行動しますし、今のうちに寝とかないと足を引っ張りそうですので。おやすみです結希斗先輩。」
と、琴から声がかかった。萌音の寝るところを見たからか、琴も萌音先輩の横にいき、座って俺に挨拶してきた。
「おやすみ琴。」
琴は真面目ゆえか。俺が言ったことを思い出して実行することにしたようだ。俺は話相手がいなくなったし、ガチャを開くことにした。