一章 41 逆転の兆し
俺がじっくり確認する間もなく、ジルヘッドは現れた。俺はいそいで手をかざすだけかざして出てくるのをみた。パット確認したらアイテムが多いが、レアリティは分からないが魔獣っぽい狼も出ていた。狼は銀色の毛並みをしていて、少なくとも戦力が増えたのはありがたい。レイを連れ戻して逃げてもいいし。
「ほう、召喚術。なるほど、あなたの策というのはそれですか。」
ジルヘッドは狼を警戒するようにとまった。お陰で俺自身に僅かな時間ができ、各アイテムの名前だけ確認した。すると、一つ目に止まったものがあった。その名は完全安全強制帰宅玉だ。
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完全安全強制帰宅玉
安全に現在住んでいる家に強制的に帰ることができる。またこのボールを当たった人は、怪我や状態異常も治るため死にそうな人に使っても問題ない。使用方法は投げるなどして、使いたい人にあてること。
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一発逆転はなかったが、この場を脱するにはちょうどいいアイテムだな。俺は詳細の前半部分だけ読んでそう判断した。というか全部読む暇なんてない。正直いって俺はこのまま戦っていられない。理由として血を流しすぎたからだ。今でも立ち上がるとフラっとするくらいだ。止血が遅かったし、元々ぎりぎり状態で戦っていたため、普通より心臓が早く動いてていつもより血液の流れも速かったから。お陰で血をだいぶなくしている。回復魔法系のバフも血液の量は回復しないみたいなので、自然回復を待つしかない。俺はふらつきながら立ち上がり剣を構えた。そのときにジルヘッドが動き出し例の伸びる剣を両手で支えながら、自分自身でまわることにより回転をかけ、俺の胸あたりに攻撃してきた。俺は刀で受け止めていたが血が足りないためか耐えきらず刀が俺のかなり後方に飛ばされ、それをみたジルヘッドが、俺にとどめわさすためにもう一度同じ技を繰り出してきた。狼が俺の前にたち少しでも攻撃を減らそうと魔法をうっていたが、全く意味はなく俺の腹に当たった。俺はまたふっとばされて、大した傷ではなかったが、これまでの出血量もかさばり意識が朦朧としていた。近づいてきた狼に先程でた。完全安全強制帰宅玉を渡して
「ウル。………………これをあいつに…………………ぶつけてくれ。……………あと…………レイの回収も。」
俺はそういったところで、完全に意識が落ちた。
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ジルヘッドサイド
「やっと落ちましたか。流石にしぶとかったですね。」
俺は完全に動かなくなった。結希斗を見た。召喚獣がなぜか消えないことに少し疑問は感じたがおそらく大丈夫だろう。そう思っていたら召喚獣のハズの狼が俺の方に襲ってきた。
「ガルルル」
狼が唸り声あげるとあたり一面が氷に覆われて季節外れの雪が振り始めた。結希斗はまだ死んでないのか?少なくとも召喚獣だけの動きではない。それに召喚獣は術者が死ぬと、消えるはずなのに残り続けている。例え死んでいなくても、気絶した時点で命令系統外れているはずだからその場で暴れだすか、送還されるはずだ。おかしい。疲れて思考力鈍っているがそう感じてしまった。雪が俺に触れるとその雪は溶けず俺の腕に白く残っている。しかも当たれば当たるほど身体が重くなる。俺は目の前の狼を殺そうと一歩踏み出すと後ろに気配を感じた。振り向くと闇の魔法を構えたレイスが立っていた。ここで魔獣まで現れたかと思いながら避けるとその攻撃は狼には当たらなかった。狼の雪もレイスには当たってないようだ。この二匹は仲間なのか。その予想は当たった。二匹は互いを傷つけないように対角の位置を取りながら俺に攻撃してきた。後ろからの闇魔法避けると、前の方から狼が吠えて氷魔法が飛んでくる。
「まさかこんな奥の手を隠していたとは………」
夜もふけてきたのでこれ以上の追撃は無理。結希斗が殿として俺を足止めした理由がわかる。とはいえ、もうこれ以上は俺もきつい。撤退しかないのか?転移したての今に負けるのはきつい。今後の成長では国の脅威になる。今すぐに排除したいが………国守る必要あるのか?俺が一瞬だけ迷ったタイミングで前後から魔法が飛んできた。俺はそれにより上に吹き飛ばされた。と、言っても2、3メートルくらいだが。そして地面に落ちる頃に狼が口に加えていた玉を俺に投げる構えをとっていた。脳があれを受けるとヤバいと警告音が鳴り響く、俺は着地と同時に逃げ出そうとしていると、どこからともなく飛んできた、ナイフと矢が刺さって、俺は強制的に地面に押し倒された。さらに逃げないようにレイスが押さえつけてくる。俺は大人しくそれを食らうしかなかった。
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SIDE ???
俺は自宅で目を覚ました。体の不調は何一つない。それどころか今までの憑き物がとれたようだ。
「やってくれたな。結希斗。だが、助かった。」
俺は自分の身体を確認しながらそう呟いた。今までの命令系統も全てとんだ。
「お嬢は許してくれないよな。それに公爵様も。せめて彼女たちがこの国に攻めてきたときの手助けになればいいが。まずはもう二度と操られないようにしなくてはな。」
俺は体に異常がないかを確かめていると、近くに玉が落ちているのを確認した。俺は近くに落ちていた玉を拾った。
「これが、俺を助けたやつか。」
俺はその玉をポケットに直した。お守りにするつもりだ。なんとなくだがこれを所持していると、もう二度とあの強制的にかかる催眠にかからないような気がする。
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SIDE ???
「やはり、ジルは操られていたのね。」
私は遠目から戦闘のいくすえを見届けながらそう呟いた。
「どうするのぉ〜?手助けするぅ〜?」
サファイアは私に聞いてきた。私はもう一度戦いの方に目を向けた。
「いや必要ないと思う。勝敗見えているし。少なくとも彼は負けないよ。現在気絶しているみたいだけど、怪我も重症じゃないみたいだし。」
私はそういうと、私の部下が反応した。
「腕一本なくなってますよお嬢。あれが重症ではないのですか?」
と、反応してきた。
「言われてるわよ。サファイア。」
私がサファイアにふると、サファイアは腕の断面と、先程彼が出したアイテムを一瞥して、
「軽症かなぁ〜。あれくらいならぁ〜治るしぃ〜。というか、治すポーション持ってるねぇ〜。わたしがぁ〜作るやつよりはぁ〜効果悪いけど〜。それでも〜あれだけきれいなぁ〜断面ならぁ〜問題ないかな〜。」
と、いった。やっぱり私の予想通りだった。流石に本職ではないから詳しくはわからないけど。
「さぁ国に帰ろうよ。これ以上はお父様に怒られると思うし。誰かさんのおかけで出発が3日遅れたしね。」
私が犯人をみながらそういうと、
「さぁ〜誰なんだろうねぇ〜。」
と、とぼけた声が帰ってきた。私は頭を抱えながら進み始めた。
「お嬢様、逆です。」
私の後ろから声がかかり慌てて逆方向に進み始めた。
「はぁどうしてこうも………たちは問題児ばかりなのでしょうか。」
私のうしろから小さい頃から何か悪口のようなものが聞こえた気がするが無視した。
これで一章は終了となります。明日は現在のメンバーのステータスをかきます。そして、その後数話挟んだあと2章に入るかと思います。これまでみてくださった皆様本当にありがとうございました。そしてすこしでも時間がありましたらこれからもよろしくお願いします。




