一章 2 自己紹介&確認
とりあえずおれらは自己紹介することにした。後輩の女の子の言う通り互いを知らないからな。実際頭の中では後輩の女の子と同級生の女の子だからね。
「まずは、俺からかな?俺の名前は、黒波 結希斗だ。まぁ適当に結希斗とでも呼んでくれ。見てたとおり俺のスキルは〘ガチャ〙だ。だが、未だに条件不明でいつでもまわせるわけじゃないからこれについてはあまり期待しないでほしい。一応地球にいるときは、道場で鍛えてたから刀はある程度使える。まぁこんなところか?なにかあったら、またあとから聞いてくれ。」
俺は、これ以上思いつくことがなかったため、ここで締めた。そもそも、クラスの奴らとか俺が無抵抗なことをいいことにいじめてきてたから、そんなやつにわざわざ自己紹介する必要もないため、自己紹介というのに慣れていないのだ。だから自分で考えるより質問してもらったほうが楽。まぁそれを自己紹介と言っていいかは疑問だがな。
「わかったよ。」
と、同級生の女の子が返事をして、
「了解です。」
と、後輩の女の子が返事した。
「じゃー、次は私だね。」
そういって同級生の女の子が今まで手に持っていて、たまに頬擦りしてた、巫女服を置いて話し始めた。いやまだ、持ってたのかよ。と、突っ込みたくなるのを抑えてまった。ここで突っ込んでしまうと話が進まなそうだったし。
「私の名前は、白雪 萌音っていうんだ。学校の友達からは白雪って名字からだけど、姫って呼ばれてた。まぁその友達には見捨てられちゃったんだけどね…………」
同級生の女の子改め白雪は、先程のことを思い出したのかまた、落ち込んだ表情をした。まぁ理解はできる。理由はともあれ裏切られたみたいなもんだからな。俺がそのことについて説明しようとすると、まだ自己紹介途中だからか、表情を少し笑顔にもどすと再び口を開き、
「まぁ過去は過去だね。一旦そのことおいておいて、呼び方だけど萌音でいいよ。ここ異世界だから、姫呼ばわりだと色んな人に迷惑かけそうだし。家族構成だけど、一人妹がいるんだ。妹は中学生で学校が違うから、今回の召喚?でこっちにこなかったんだ。だからできる限り、速く地球に戻りたい。さっきの城には戻る方法とかありそうだけど今も連行の最中だし無理だよね………あっそうだ、私のエクストラスキルなんだけど、〘ファションモデル〙っていうんだ。まだ私も使い方わかってないだけどね。とりあえず、お互い追放された同士なかよくしようね。」
萌音はそう自己紹介すると、俺と後輩の女の子に手を伸ばしてきた。おそらく握手だろう。そう考え俺は、手に取った。
「よろしくね。」
萌音はそう挨拶して、後輩の女の子の方をむいた。俺も同様にそちらを向いた。
「こちらも、よろしくおねがいします。結希斗先輩、萌音先輩。」
と、返したあと、後輩の女の子は正座に座り直して、一礼して顔をあげた。。俺とかと違って元が真面目な性格なのだろう。
「はじめまして、先輩がたの1つ後輩で、青葉 琴葉といいます。あらためましてよろしくおねがいします。先輩たちが下の名前なので僕のことも琴と、読んでほしいです。家族構成ですが、もともと孤児院育ちなのでちゃんとした意味での家族はいないです。そして、エクストラスキルは、〘テキストブック〙です。僕も使い方がわからないです……」
最後は尻すぼむような声で琴葉は呟いた。確かに〘ファションモデル〙も〘テキストブック〙もはじめて聞いたのではわからないよな。俺も無料10連来るまでわからなかったし。他の奴らもそんな感じなのかね。まぁ流石にないと思うが、追放されなかったやつらに俺らを消させようとしてきてもしばらくは問題ねーな。使い方わからないなら。
「まぁ確かにふたりともわからないよな。俺も思いつかないし。とにかくさ今後の予定決めようか。今夜この馬車から逃げ出そう。少なくとも俺らは追放された身。このあと、どうなるかわからないからな。動き出すのは夜中くらいかな。とにかく二人は今のうちに休んでいてくれ。寝るなら寝てもいい。その間俺が起きとくから。」
萌音と琴葉は顔を見合わせて軽く首をかしげた。なにか言葉足らずだったのだろうか。そんなこと考えていると、
「夜中抜け出すのはいいとして、全員で寝ないの?結希斗君も寝ないと夜が辛いだろうし。」
「そうですよ。そのほうが何かと安心できますし。」
と、二人がいった。一緒に寝たほうが安心できるってなんだ?まぁ少なくとも二人はこういうことになれてないんだろうな。俺もサバイバル経験ないなら、一緒に寝てただろう。むしろ夜中抜け出すことも伝えただろうか?
「少なくとも1人は見張ってなきゃ。全員寝てたときやられて全員お陀仏なるかもだからな。ふたりが休んでいる間は俺はガチャの景品の詳細でも調べているよ。」
俺は、諭すようにいった。少なくともここは、敵地。まぁ移動中だけど。外の兵士が完全な味方とは言えないし。むしろいつ殺しにきてもおかしくない敵だろ。サバイバル訓練のときも周りは獣ばっか。常にどっちか起きてたしな。
「確かにそれはそうかも。うーんでも……まぁいいか。わかった先に休むよ。ただ制服だし一応下に体操服着るね。結希斗くんこっち見ないでね。」
と、萌音がいった。俺は萌音と琴葉のいる方から逆を向いて座った。そして目もとじた。
「これでいいか?」
そう聞くと、うん大丈夫と聞こえてきた。その後、後ろに気配を感じた。おそらく琴葉が俺の後ろに移動してきたんだろ。まぁ体操服のズボン履くだけとはいえ、着替えだからな。本来男である俺と一緒にいるときにするものではない。万が一振り返っても遮れるようにだろ。琴葉は気が利くんだな。
「結希斗先輩。すみません。先輩は気を使って休んでいいよ。と言ってくれたのに疑ってしまって。僕、男の人に慣れてなくて……」
と、後ろから聞こえてきた。琴葉ちゃんはほんとに真面目だな。と思ってしまった。普通そんな事言う人は少ないだろ。それでも少しは信用してもらえたってことなのかな。
「別にいいよ。召喚されたばっかでさ、まだ混乱もあるだろうし、あの追放見てたら人間不信なるよね。操られていたとはいえさ。」
と、未だに目をつむりながら俺は、答えた。
「よし、履き終わったからもう大丈夫だよ。ところで操られてって何?」
と、萌音が聞いてきて、琴葉は
「ありがとうございます……」
と、呟いた。俺は振り返りながら、
「確証はないけどな。でも、俺召喚されたときからずっと周りを冷静に見てたんだよ。いきなり召喚されると、混乱したり、もとに戻してと騒ぐやつがいると思うんよ。多少騒いでたやつもいたが、大抵のやつは流してた。しかもさ、その後の流れもまるで台本読んでいるような展開だったと思う。
萌音と琴もさ、疑問に思っただろ。でもまわりは声あげないから、おかしいのは自分だけか。とかかんがえたんじゃないの?」
俺がふたりのかお見ながら聞くと、ふたりとも頷いてた。
「確かに。私も異世界召喚系の小説読んだことあるけど、よく思い出して見たらみんなテンプレみたいなことしか話してないよね?」
そう萌音がいうと、琴もなにか思い出したように
「そういえば一番最初に別の場所に連れて行かれたのは僕ですけど、そのことについても誰も触れなかったですね。さも当たり前かのように。でも、僕たちはそんなことなかったと思いますが。」
首をかしげながら、琴は一生懸命思い出そうとしてた。
「だからの追放だろ。向こう側からしたら、言うこと聞くかどうかわからない爆弾抱えるよりは追放という名目で追い出したほうがいいからな。あの水晶触れたとき自分たちに催眠かなにかがかかってないことに気付いたんじゃね。」
俺がいうと、ふたりとも納得したように頷いた。これは確証がないし、今となっては調べようもないためどうしようもないことだけど。
「なるほど。てことは私達友達に裏切られたわけではないんだ。」
と、安心したような、どこか複雑そうな顔しながら萌音が呟いた。確かに裏切られたわけではないが、今の状況的にすぐ許すというのも無理な話だよな。