二章 55 奴隷商
俺はテラたち以外の奴隷を見たことがなく、奴隷達の環境については少し思うところがあった。奴隷達は布1枚の服をきていて、アスファルトの床の上に敷布団のような物が敷かれているだけの場所に座っていた。もちろん布1枚の掛け布団もある。奥の方にはおそらくトイレと思われる壁に区切られた一角があり、そこから出てきて敷布団のような物に座りなおす。逃亡防止とは思うが檻の中にいる奴隷達はどこか犯罪者のように見える。少なからず奴隷達はこちらをきにしており、中にはものすごく檻のギリギリまできてアピールする奴隷もいた。
だが、少なくともテラ達と出会った頃のような絶望に近い顔はしていないし、首輪もつけていない。まぁおそらく奴隷紋はあるだろう。もちろん店主もアピールしている奴隷達を止めたりせず、俺等の判断にまかせている。そう考えると、ここの奴隷達は俺達が召喚された国、デッドリアの奴隷商人よりはマシなんだろう。
「オークションに出ていた子たちよりこちらがイキイキしてる気がするの。」
と、琴葉も呟いていた。オークションはテラ達をメイが助けてきた場所だったな。やっぱり俺の想像通り、なのかな。
「ふむ。オークションですか。私はしませんが、オークションで見える部分だけ、きれいに見せて後の環境は劣悪。さらに売れ残った奴隷を破棄するという奴隷を人間だと思わない商人もいるらしいです。ほんとにゆゆしき問題ですよ。ですが、うちでは奴隷達を差別してません。ですので、しっかり栄養とかもいきわたるように考えています。」
と、琴葉のつぶやきが聞こえていたのか、店主が答えてくれた。
「ちなみに参考に聞きますが、どんな感じです?」
と、聞いた。これから他の奴隷商いったときの参考とかにもなりそうだし、聞いてて損はないだろうという思いからだ。
「そうですなー。毎日共通として、朝晩の2回に、黒パンと野菜、朝には2日に一回牛乳も出してます。そして週一くらいに肉を一口サイズのものをだしてますな。後は近場の露店などにいいものが安くで売られていると、そちらを出したりですな。」
と、店主は答えた。なるほど。地球の常識で考えると、栄養バランスはいいな。まぁ一つ言うとしたら、エネルギーになる肉が少ないというところか。それに一日2食というのも少ないかもしれないが、それが常識なのかもな。
「なるほど。それは奴隷商の大体の基本みたいな感じです?」
「おそらくうちだけでしょうな。ひどいところなど、2日に一回にパン一つなど、他から移ってきた奴隷が言ってました。」
俺の質問にもスラスラ答えてくれた。おそらく嘘はついてないんだろうな。言葉に突っかかりがなかったし、スラスラ話す言葉に違和感も感じなかった。そうやって進んでいる間に、だいぶ奥の方に来たのか、扉の前にたどり着いた。
「ここから先は欠損奴隷となっております。お客様によっては気分を害する方もいらっしゃるので、オススメはいたしませんが、いかがなさいますかな?」
と、店主は扉の前で振り返りいった。
「見ていくの。」
琴葉が迷わずに呟いた。おそらく俺のせいで見慣れたからかな。まぁオレ自身も欠損のある奴隷の待遇は気になるところだし止めない。
「かしこまりました。それでは案内いたします。」
そういった店主は扉を開け進んでいった。その先にいた人達は、生活環境は変わっていない。ただ、やはり顔は先程いた奴隷たちに比べると沈んでいた。やっぱり欠損のある奴隷だからだろうか。
「ちなみにだが、値段はいくらくらいになるんだ?」
全員救えるとは思っていないし、それだけポーションもない。
「そうですな。奴隷は用途によって金額が変わります。女性の前では言いづらいですが、性奴隷ならそれは見た目がいいものほど高額になります。エルフとかなら白金貨500枚とかもしばしば。戦闘奴隷ならば見た目に限らず強い者が高い。戦闘奴隷の中でも魔法が使える者は取引額は白金貨5枚が最低となっています。一般的な奴隷ですと、大体金貨5枚から白金貨1枚ですかな。まぁあくまで大体となって降りまして、長く店にいる奴隷は食費などがかさむため高くなることもあります。そして、欠損奴隷となりますと、欠損がひど過ぎる場合、安いものでは銀貨とかもありますな。とはいえ、一概には言えないことですが、欠損奴隷の中にも性奴隷もいますし。」
なるほどな。高い奴隷だと5000万。一般的な奴隷は5万から10万。欠損だと、1000か。常識が狂いそうになるな。だがさっきの露店は高くても銅貨2枚とかだった。つまりこの世界の100C=日本円にして100円。って考えると、一般人の取得金はだいぶ少ないのかもだな。まぁひど過ぎるっていうのがどれくらいかはわからないが、もしあのポーションがまた手に入るなら、購入も検討していいか。そもそもそれだけ安い意味もあると思うし。
そうして進んでいるうちに最奥まで到達して、俺等は絶句した。