二章 51 最優先報告書
「その後、自分達は、そのまま奴隷の首輪をつけられ売られました。そして領主軍兵は堂々の違法奴隷の出荷を無視しました。それからですね。神父も領主も嫌いになったのは。もともと冒険者にもあまりいい印象なかったですね。」
と、ジェイドはいった。
「ちょっとまて。俺はその依頼知らねーぞ。おい、聞いているか?」
と、ギルド長のジェーダスが険しい顔をしながら、副ギルド長のベクトに聞いた。それに対して、ベクトも首を振りながら、
「私も何も聞いてません。」
と、顔をしかめながら答えた。それを聞いたジェーダスはさらに険しい顔になった。
「聞いていない。ってどういうことだ?」
俺が疑問に思い、聞き返した。
「あーすまんな。言ってなかった。ギルドにはいくつかのルールがある。それは、誰かの命もしくは、その身体が関わること、ギルドが追っている事件に関わることなどの依頼が受付にきた場合、ギルド長もしくは、副ギルド長が同席上で依頼の受付する必要がある。依頼受付時は気づかなかったとしても、あとから気づいた場合は最優先報告書の提出義務がある。ギルド長と副ギルド長はその最優先報告書が上がった時点で必ず最優先報告書を読む義務がある。よっぽどのことがない限り、これより優先度の高いことは少ないからな。これに関しては、どのギルドも共通で受付も新人の頃から口酸っぱく言われることだ。だからこそ。俺だけではなく副ギルド長も知らないとはおかしな話だ。」
なるほどな。奴隷にされそう。もしくは売られそうだから保護して欲しい。という依頼なら命もしくは身体が関わる依頼に当てはまるな。
「ギルドは信頼と信用で成り立っています。市民の安信、安全を最優先で守る。というのは当たり前のことです。だからこそ、上の判断を仰ぎ、最悪緊急依頼にしなければならないため報告義務があるのですよ。それでジェイドさん。その受付をした人は誰だかわかりますか?」
と、ベクトは物腰丁寧に聞いてきた、が、その顔はキレているようだった。
「男性です。ただ、詳しくは覚えていないです。顔を見ればわかると思うのですが……………。」
と、ジェイドは申し訳無さそうに答えた。まぁ仕方ないだろうな。どう考えても依頼のときより、その後が記憶に残っているだろう。2日後奴隷に落ちたしな。
「分かった。それでは君等に指名依頼を出そう。引き続き今回の事件手伝ってくれ。その職員についてもだが、ここの領主も限りなく怪しい。その調査をして欲しい。それとだ。放浪貴族様がこの街にいるはずだ。そのものは公爵様と繋がっているから探して協力を頼んで欲しい。君等は知り合いだしちょうどいいな。領主をさばけるのは公爵様のみだからな。」
と、ジェーダスはいった。それで、放浪貴族とは誰だ?まぁ公爵と繋がっているという時点で絞れると思うけど。
「バールディア男爵様です。門の前で一悶着があり、バールディア男爵様が間にはいったと伺っております。」
と、ベクトが補足した。やっぱりか。俺等のホテルを取ってくれたカイザー·バールディアか。放浪貴族って呼ばれているってどれほどなんだ。
「確かに知っているの。でも場所はしらないの。同じホテルにとまっていないの。」
と、琴葉が説明した。それを聞いたジェーダスは『はぁー』と、ため息を吐いて、
「あの自由人はやっぱり貴族になっても放浪しているのか。まぁいい。それなら露天が並んでいるところに昼間現れるから、その時捕まえてくれ。さすがにここで、俺が動くよりは敵に疑われるかもだが、君等がお礼を言うとかの理由なら疑いは減るだろう。まぁギルドでも徹底して情報操作はするが、念には念をいれた方がいい。」