二章 49 孤児院の裏事情
ジェイドは改めて姿勢を正してから、話し始めた。
「知っていると思いますが、自分は元々孤児院出身でした。年が一番上だったこともあり、孤児院でリーダー扱いされてました。神父はその時は、優しくて、貧乏ながら不自由のない暮らしをしていました。自分もいつか見習いの神父として、神父の手伝いできるようになろうと、思ってました。状況が変わったのは二ヶ月程前です。12人の奴隷が孤児院に来ました。年齢はバラバラで、全員女性でした。最初は神父が救ってきたのかと、思い気にも止めてませんでした。その数日後、何か胸騒ぎしてたまたま夜眠れなかった自分は、夜中にトイレ行きました。その時、こういった話し声を聞きました。」
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「ふわぁ。なんで眠れないのでしょうか?」
自分は夜中、何故か嫌な予感がしてなかなか眠れなくて自分の掛け布団から抜け出そうとしていた。音もたてずに抜け出しているつもりだったが、どうやら自分の隣で寝ているセツナは気づいてしまったみたいだ。セツナが目を擦りながら、チョコンと座りこんで、
「ジェイド?どこかいくの?」
と、俺に話しかけてきたセツナはまだ眠そうにしている。やっぱり、眠い中自分が離れそうになったから、慌てて起きたのかな?セツナのここにきたときの状況的に心配のかも知れない。
「自分はトイレに行くだけです。セツナはまだゆっくり寝ていても大丈夫ですよ。」
自分の声に安心したのか、セツナは再びコテンと寝付き再び夢の世界へと旅立った。俺はそれを確認してから、セツナの頭を撫でて、今度こそ布団から抜け出した。
ちなみにだが、セツナの方が歳下だけど、自分が敬語なのは、自分は神父を見て育ったからだ。いつか自分もなろうと思っていたためか、いつの間にか、話し方が誰に対しても敬語になっていた。
そして、掛け布団から抜け出した、自分は、長い廊下を歩いてトイレのある方向に向かっていた。すると、途中で話し声が聞こえた。片方は神父の声だ。相手は誰かわからなかったけど、こんな夜中に話していることが気になり、コソッと近づいた。入口の空いている部屋で話している神父にバレないようにドアの影に隠れながら、自分は様子を伺った。きっと孤児院の財政が悪いとかで、神父が頭を下げているのか。と、思っていたから、自分は、これから聞こえることを自分の中におしこんで、自分自身なにか手伝えることは無いのかと、その時は考えていた。だけど、聞こえてきた内容は180°違った。
「それで、例の奴隷たちはバレて無いのか神父さんよ。」
と、神父の前に座っている男が神父に聞いてきた。
「えぇもちろんですよ。私が運営しているのは孤児院ですからね。早々に監査など入りませんよ。それに奴隷たちは自分のこと話さないことを厳命していますからね。」
と、神父は答えた。自分は最初なんのことかわからなかった。けど、少し考えると、
「あぁ。このあいだきた方達ですね。でも彼女達がどうしたのでしょうか?」
僕は2人に気づかれないように、ボソっと呟いた。おそらく聴こえてはなかったと思うが、その答えを答えるように、
「あの違法奴隷販売には、いい隠れ蓑だな。今までも協力していたが、これからも出荷までの隠れ蓑にさせてくれ。最近、領主とは別の勢力らしきものも動き出しているのか、違法奴隷業者の一部が潰されたらしい。神父お前も気をつけることだな。」
そんな話を聞いた神父は、少し顔をしかめ、
「それは困りましたね。隠れ蓑にする分は問題ないですが、今後、少し時期を開けた方がいいでしょう。私の孤児院からの商品も買って貰わねば困りますので。」
と、返した。自分は『商品』という言葉に頭をひねった。この孤児院はなにか出荷しているのかな。それにしても神父はなんで、こんな悪そうな人とつるんでいるんだろう?それだけ生活が厳しいのかな?自分が、説得してこんなこと辞めさせた方がいい。そして、しっかり罪を償い、神父に戻って欲しい。そんなこと考えていた、自分の思考は次の言葉で全て壊された。
「ククク。神父お前も悪いやつやなぁ。手に塩かけて育てた孤児共を出荷して金にしているんだからな。そんなこと、神が許すのか?教会の人間がやることではねーだろ。」
「おやこれは人聞きの悪い。私のやっていることは農家と一緒ですよ。ただ育てるものが違うだけで。」
と、いう2人の会話が聞こえた。自分は、頭が真っ白になった。今までの思い出が全部崩れるような感じがした。今まで自分に向けていた優しい声音や顔は嘘だったのか?そうわかると、自分が今まで見ていた世界が壊れていくようで、その後、しばらく何も聞こえなかった。そして、俺が再起動したときは、
「それじゃーまた明日だな。スコーピオンもくるし、奴隷を引き渡す瞬間は俺も見届けるからな。」
「えぇ。お待ちしております。その次は3週間後ですね。生きのいい孤児を引き渡しますよ。」
と、言う声が聞こえたときだった。自分は急いで皆が寝ている部屋に戻り掛け布団をかけて寝たふりをした。しかしさっき以上に眠れる気配がなくそのまま朝になった。