プロローグ 1 異世界転移
俺は隣をみた。そこには二人の女の子。一人は茶髪のセミロング制服のリボンの色を見る限り同級生だ。一応見覚えはあるし間違い無いと思う。もう一人は黒のボブだ。リボンの色見る限り後輩にあたるため詳しくは知らない。二人は怯えているようだ。それもしかたないことだろう。俺らの座っているところを囲むように鎧を着た中世の騎士のような人が立っている。そして俺達が逃げないように、俺達にむけて剣を構えたいた。
そしてまわりをちらっと確認すると、金髪をはじめとしてクラスの大半の男子が侮蔑を含んだ視線を送ってきていた。そして口元を見るとニヤけているのだろう。俺が消えることを喜んでいるようだ。
そしてその外側にきらびやかな服装を着た、おそらく貴族であろう者たちが興味なくした目でみていた。こちらも中世の貴族のような服装をしているからそう判断した。とはいえ間違いはないだろう。ここは異世界だ。
最後に前の方を見ると、周りにいる騎士より豪華な鎧をつけた騎士が鋭い眼光を飛ばしていて、頭よさそうな雰囲気で手には黒い本みたいなものをもち態度が大きいやつがその騎士とは逆側にたっていて、そしてローブを着ていて顔にしわがある老人が騎士の横に立っていた。そしてその3人の中央の玉座に座っている王様らしきひと。この王様らしき人は先程自らを聖王といっていた。その聖王と名乗っていたやつが、肘をつきながらこちらをみていた。
どれくらいたっただろうか?もしかしたら数秒かもしれないが、そんな中やっと聖王が口を開いた。
「チートスキルを持たないその3人を国外追放処分とする。」
聖王の言葉により、俺達の近くで剣を構えていた兵士たちがむりやり腕を引っ張って立たせて、俺らに歩くように指示を出した。自分一人なら抵抗できたかもだが、一応目の前にいるのは聖王というこの国のトップだから、ここで抵抗するともしかしたら即処刑もありえる。それに、同じ目にあってるふたりの立場も悪くなるだろう。俺はそう考え、何もせず大人しくしたがった。それにしても数時間前までは普通の学校生活だったのになんでこうなったのだろうか?
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はぁ。俺、黒波結希斗は自分のもってるスマホをみながらため息をついた。なぜなら本日から開催されるイベントガチャで大爆死したからだ。この日のために数日前から石をため臨んだ100連が水の泡となった。朝から授業も聞かず、実装される★5の新キャラのことばかり考えてた俺としては、このショックはかなりでかかった。思わずもう一度はぁーとため息をついてしまった。そこに追い打ちをかけるように、クラスで俺の方見てた金髪とその取り巻きが俺に近づいてきて、
「黒オタ陰キャのくせにため息なんかつくんじゃねーよ!!クラスの二酸化炭素が増えるだろーが!!」
と、金髪が俺に向かって言ってきた。それによりクラスの男子は爆笑し、一部の女子も見下したような目線で俺をみてきた。その一部の女子はこの金髪とその取り巻きの誰かの彼女とかの奴らなので、そういうふうな扱いしてくるのだろう。むしろそれ以外の女子は逆に熱い視線を向けてるやつもいる。それによりクラスの男子が敵にまわるという悪循環である。仲いい男子もいるが別のクラスだしな。
ちなみにだが、黒オタ陰キャとは名字に黒という漢字があり、休みの日も黒一色服を着ていたことによりつけられた。
まわりの声に調子乗った金髪は、さらにおれに、
「聞こえてるのか?聞こえてたらその場で四つん這いになって3回回ってワンと泣きやがれ!!」
と、言ってきた。合理性を感じなかったので俺はこれも無視してたら、その金髪の取り巻き1が俺の頭を掴んでむりやり金髪の方にむかせると、
「光輝さんの話聞けや黒オタ陰キャ!!お前みてーなクラスカースト最下位のやつが無視してるんじゃねーぞ!!」
と、言ってきた。そもそもの話、カーストが最下位であったとしてカーストが上のやつに媚びる必要はないだろう。そして周りにいたクラスの男子もそれにのって、
「そうだー。そうだー。」
「調子にのるな。」
と、声あげてた。いつもならこれも無視するのだが、今日に限っては爆死もあり、無視してもずっと言ってくる金髪一味に若干イライラしてた。そのこともあって掴まれてたその手を払いのけると、金髪一味をにらみながら、
「群れなきゃ言葉にできない奴らが、ゴタゴタ抜かさず黙ってろ!」
と、思わずこえをはりあげていってしまった。もしかしたら軽く殺気も出てたかもしれない。少なくとも、一般人に向ける目ではなかった。騒いでた男子はもちろん、遠くの方で普通に話してた女子もクラスにいた全員がおし黙ってしまった。その、光景をみて若干自己嫌悪におちてしまった。
(はぁ。面倒事になる前にかえるか。これくらいでキレてしまうとか死んだジジイに顔向けできねーな。)
俺は、リュックを手に取り、変える準備しながら、そんなこと考えていると、いち早く正気に戻った金髪が胸ぐらを掴んで
「てめー調子に乗りやがって」
と、言ってきた。自分からふっかけた手前どうするかと考えていたその時に、急に足元が光りだした。それは俺だけじゃなくて、金髪やその取り巻き、騒いでた男子や無関係な女子もクラスの全員の足元が光っていた。一度静かになったクラスが再び騒がしくなった。誰もが混乱したのだろう。そういう俺も混乱してるが、ジジイの教えである
『どんな状況が起きても騒がず、冷静に考えること』
その教えがなかったら俺も同じようにしていたかもしれない。俺はその光を観察した。よく見れば魔法陣みたいな形をしており、より一層光が強くなったときに俺の視界は暗転した。
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気がつくと、豪華な装飾がされた部屋にいた。そこは今までいたクラスよりかなり広く、周りを見渡せば、金髪を始めとして、クラスの人はもちろん、クラスや学年の違う生徒や教師の姿も見えた。さっきの光は学校中を巻き込んだのだろう。そして奥をみたら、きらびやかな服装を着た人たちがいて、正面には、豪華な鎧を着た騎士っぽいひとや、態度のでかいやつやしてる頭の良さそうな人、ローブを着ていて顔にしわがある老人、そして偉そうな人がいた。そして偉そうな人は満足そうな顔しながら口を開いた。
「よくぞきてくれた。ワシはこの国の聖王バルジア・アク・デッドリアという。勇者諸君よくきてた。混乱もあるだろうがこちらの大臣の話を聞いてほしい。」
これを聞いたおれは、どこまでも偉そうだな。と感じてしまった。よく来てくれたと言ってる割には無理やり呼び出したし、さらに説明は部下任せ。それにしてもこの聖王のおかげで少しは理解できたが、ここは異世界で俺たちは召喚されたんだろうな。まるでアニメやマンがみたいな展開だ。そんなこと考えたやつが他にもいたらしく、
「異世界召喚キターーーー」
と、声上げたやつも一人ではない。まぁそういうやつはまわりから少しきつい目で見つめられて、小さくなってるが。そしてその様子見てた態度のでかい頭の良さそうな人改め、大臣とやらが口をひらいた。
「何人かは気付いているようだが。ここはそなたらの住んでいた世界とは異なる世界だ。そなたらを急に呼びたてしてしまったのは本当に申し訳なく思う。しかし、われわれにはどうしようもなかったのだ。隣の国の公爵家が悪魔と契約し、我々の国を攻め落とそうとしている。我々は国民を守るために異世界から勇者を召喚して迎え撃つしかなかったのだ。」
と、いかにも被害者づらして語りかけてきた。自分は冷静にまわりを見ていたから気づいたが、これは真っ赤な嘘だろう。その大臣やローブの老人などはいかにも被害者ヅラしているが、肝心の聖王は笑顔とまではいかんが、これからのことについて考えてか口元がわずかに上がってる。本当に国民を思うような表情ではないな。生徒の大半とかは心打たれてる人も多いが、俺はどんどん信じられなくなってきた。そんななか、教師の主任が立ち上がり、
「そのような危険なことに生徒を巻き込まないでほしい。私達は戦う力を持たない!」
と、叫んでた。教師としては当たり前だろうな。生徒を守るのは、でも当の大臣は待ってましたと言わんばかりに、
「異世界召喚されたものには必ずスキルが与えられる。それに今すぐ戦えとは言わない。我々の国の兵士とともに訓練してもらい強くなってもらう。そしてスキルもだがこの世界に生まれる人より数段強いのが付与されるためこの世界で死ぬことはない。」
大臣は息巻くようにそう話した。すでに信用なくしてた俺からしたら、その言葉も信用できなかった。なぜなら死ぬことないなら訓練などいらないからな。そして、一度大臣は口を閉じると、
「これよりスキルの確認を開始する。」
と、いった。すると兵士たちが水晶をいくつかもってきた。
「さぁ、そなたらは、こちらの水晶に触れてくれ。付与されたスキルはこれで確認することができるのだ。」
生徒は困惑していたが先程の先生が、
「万が一に備えて自分から受けよう」
と、歩いていった。なんだかんだいって、あいつもワクワクしてるじゃねーかと俺はその教師に冷ややかな視線を送った。そして生徒たちもそれに続いて並んでいたので、仕方なく自分も並ぶことにした。