妖精の女王
「君が妖精の女王? ぼくぷっくる、5しゃい!」
挨拶は基本だよな。
ぼくと同い年くらいの女の子が体を抱え、丸くなってごろんごろんして遊んでた。
他の妖精たちは小さくてすらっとしてるのに、この子はふっくらとして人間の子供みたいだ。
背の大きさもぼくより少し小さいくらいかな。
体にぴったりと張り付くようにフィットしたシルクのような白い服は土の上を転がっても汚れひとつついていない。
「女王? うんとね、あちし女王さまなの」
「他のは気配くらいしか感じなかったけど、この子だけはしっかりと見えてる。あ、俺はラパウル、よろしくな」
ここまで案内してくれたネコ妖精がぼくの指をちゅぱちゅぱやってる。
ざらざらとした舌が指を撫で回す。
「最近、妖精たちがうちの屋敷に大量に来て困ってるんだ。君は女王様だろ、どうにかしてくれないかな」
「わかんない、みんな好きにやってるだけなの」
首をこてんと傾けて、そう呟く。
「いや、そうじゃなくて、なんか勝手にでかけたらいけないルールがあるとか、人に見つかったらだめとか……そんなのない?」
「知らない。皆楽しいの好きなの」
「美味しいのも好きにゃん。ぼくも着いていくにゃん」
まだ増えるというのか。
あー、神様、どうすりゃいいのよ。
『ふむ、妖精の女王を見つけ出したか』
別に呼びかけたつもりはなかった。なんかあると神に縋る日本人の口癖みたいなものだったんだけど……神様との回線繋がりやすくなってねーか。
『セキュリティホールの場所の特定とウィルスを隔離することに成功』
『よくやったぞ。あやつらは他所の神の世界とこの世界を勝手に行き来することができておったが、きちんとそれを出来ぬように遮断してあるな。この世界の近くに少し違う小さな世界を作ってこの場所を隔離したのか。とりあえず仮称妖精界とでもしよう』
機械的なアナウンスにアルヴァ様が答えている。
ていうか、あの機械的なのってぼくのバグ報告や問い合わせに答えてくれてた声だよね。
えっと、新しく作った神様だっけ。
『何かお主に目標をと妖精女王の探索を頼んでおったが、無事見つけたようで何よりじゃ。そしてこの世界の管理の補助をおこなうために作り出した新神もよく対処した、上々じゃ。プックルや、引き続きこの世界を楽しみながら問題がないかみていってくれ、よろしく頼むぞ』
わかったよ。
そう心の中で唱えたところで、神様の気配みたいなものが消えてしまった。
よくわからんけど、うちに妖精が増えて困ってる事件は解決したのかな。
「この世界の神様からお叱り受けちゃったの。元の世界に戻るか、この世界の住人として一緒に暮らしていくか選べって。わかんないって言ったら、妖精界を作って隔離するから決まったら言えって言われたの。あたしだけで決められないもん、知らないよねそんなの」
「そうなんだ。でも女王様なら決めなきゃね」
「わかんないもん。あと、この世界と妖精界とがつながってる場所の近くしか行けなくなったみたいなの」
それはそれは。神様ありがとうございます。
あっ、返信不要です。
ぼくらがそんなことを話してる間に父ちゃんはというと、ぼくから受け取った芋飴を使ってラグドールの猫妖精と仲良くなったみたいで、その妖精から加護をもらって妖精たちが見えるようになってた。
「これがプックルの見えていた世界か。妖精ってほんとにいるんだな。そしてたくさんいるんだな。これからは俺もお前の気持ちを共有してやれるから安心しろ。あ、でもミュレに隠し事はしたくないな」
「ラパにゃんのつがいにゃんか? にゃらそいつにも加護を与えるにゃん」
「そうかそうか、ありがとな。さてと帰るか」
「そうだね」
「……」
「……」
ぼくと父ちゃんの間になんともいえない沈黙が訪れた。
「来た時通った穴まで行けば帰れるんだよな」
「……たぶん」
「無理にゃんよ。ぼくらは結構いろんなとこへ行けるにゃけど、行けなくなったにゃんよ」
あちゃー、神様がこの辺を隔離して妖精界としちゃったとか言ってたもんな。
「でも、ここと繋がってる場所へは行けるって女王様が行ってたよね」
「そうなの、いくつかは場所があるみたいなの。どこも森の中らしいの」
その森ってのがうちに近ければいいんだけど……。




