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いっけぇー

 ぼくは土下座していた。


「君たちもう帰ってくれないかな」


 こいつらにはうんざりだ。

 以前は仲間同士はテレパシーみたいなので意思疎通してるから、喋るということはほとんどしなかったらよかったけど、最近はというかぼくのうちに来てからぼくと喋ったりからかったりするために声を出すようになった。

 それが数が多いから五月蝿いんだ。

 他の人には聞こえてないから、人目のあるところで反応するわけにもいかずやっかいなことこの上ない。


 ほとんどはぼくの言葉を無視して好き勝手してるけど、たまにぼくの言葉に反応してくれるやつもいる。


「ぴりぴり痛いのもらってない」


 あー、そうだった、そうだった。


「こちらをお納めください」


 ウェストポーチから唐辛子の粉が入った細い竹の容器を取り出し、反応してくれた子に手渡した。


「うぎゃー」


「あははー」「いた~い」「熱い、ひりひりするー」


 渡した途端、封をあけ撒き散らしやがった。


「ぴぎゃー」


 目や宙に舞った粉末を空気と一緒に吸い込んで喉にまで襲ってきた痛みで叫び声をあげ、咳をしながら水瓶へと走り、頭から突っ込む。

 水より油で流したほうがいいとはいうけど、ぱにくって頭から飛んでた。

 水の中で目をパチパチし、水をガブガブと飲み込む。

 水から顔をあげるが、痛みは引かないのですぐにまた頭を水に突っ込んだ。


 ぐぬぬ~、やつらは駆除すべき害虫だ!



「父ちゃ~ん、妖精をやっつけるとか追い出すにはどうすればいいのかな」


「少し前から家の中とかで妙な気配を感じるようになったけど、それか?」


 右手をさっと動かすと何かをつまむ仕草をしたが、すぐに指を開く。


「う~ん」


 なんか納得いかないって顔してるけど、ぼくには見えてた。

 父ちゃんが妖精の羽を摘んでたのを。


「今のどうやったの?」


「今のって、手に魔力を流して気配のした場所にやっただけだぞ。なんの反応も無かったけどな」


「えー、妖精の羽をつまんでたよ」


「そうなのか? 俺には見えもしないし、触った感触もなかったんだがな


 父ちゃんに武器に魔力を流す方法を教わったぼくは準備万端だ。

 はたきを手にして妖精を追いかける。

 妖精はキャーキャーと言って逃げ回る。

 それをぼくは魔力を込めたはたきでパタパタとはたいてまわる。

 ピクシーみたいにふよふよ飛んでるやつも、ケットシーみたいな猫型をしていて駆け回ってるやつも目に付く端から追いかける。

 彼らは怖いとか痛いのが嫌だとかではなく、楽しいから逃げ回って追いかけっこを楽しんでる風だ。


「はたかれた子は元いた場所に帰るんだよ。そういうルールだからね」


 そう声をかけながら追い回す。

 他の人にははたきをパタパタさせながら家中を駆け回ってるように見えるが気にしない。


 あっ、あれは!


 前にも見たことがある黒い穴が我が家の廊下の壁に開いてる。

 近くには運よく父ちゃんがいる。


「合体!」


 背中に飛び乗り、おんぶの状態になると指示を出す。


「あの壁に飛び込んで!」


「おう!」


 ためらいも無く走った父ちゃんが壁にぶつかりそうになったが、ぼくの指示した範囲に頭から飛び込んでいった。

 飛び込んだ先は……えっ!? 春?


 目の前には色とりどりの春の花が辺り一面に咲いており、穏やかな風が気持ちいい。


「それでここはどこなんだ?」


「さあ? 家の中に一杯いた妖精を追い返したらここへの通路が開いたんだよ」


「人間にゃん、遊びに来たかにゃん?」


 花々の中にぴょこんと黒っぽい三角耳が現れ、花をかきわけこちらに近づいてくる。

 ふわふわの白い体に顔だけ少し灰色がかっている。ラグドールのケットシー、かな?

 目の前にいるのは二足歩行のネコだ。


「君たちの友達なのかな。うちに妖精さんがたくさん押しかけてきて困ってたから、妖精女王だっけ? 彼女に一言文句を言ってやろうと思って押しかけて来たんだ」


「そうなのか?」


「そうなのにゃん?」


 父ちゃんには説明もしないで付いてきてもらったからな。申し訳ない。

 でも、ひとりで危険かどうかは分からないが、知らないところにいく勇気はないんだよ、ぼくには。


「そうなの! というわけで妖精女王のところに案内してくれないかな」


「え~、これからお昼寝する予定にゃん。だから無理にゃん」


 こいつらは楽しいことや美味しいものが好きなんだよな。

 というわけで、ウェストポーチから取り出した竹の容器に指を突っ込みそれをネコ妖精の前に差し出す。


「美味しいから、舐めてみて」


「甘いにゃん、花の蜜より美味しいにゃん!」


 ぼくの指をちゅぱちゅぱしゃぶって声を上げる。

 そして再び指にしゃぶりつく。

 もう味も残ってないだろうに。


「これは芋飴っていうんだ、美味しいでしょ。ぼくは女王様に会いたいんだ。会わせてくれたらもう一回舐めさせてあげるよ」


 容器に入っていたのは芋飴。

 芋から作った水あめみたいなものなんだ。

 砂糖や蜂蜜が高いから、それを使わないで何か甘いものをと思って作ってみた。


「行くにゃん、すぐ行くにゃん。甘いの食べるにゃん」


 そういうと普通のネコのように四つ足で走り出したので、ぼくらも走ってそれを追いかける。


「ねー、ぼくたち結構草花を踏みつけ荒らしながら走ってるけど大丈夫なのかな」


「気にするなにゃん。すぐ元に戻るにゃん」


 よかった。自然を荒らすものには罰を与える、とかなくてほっとしたよ。

 走っていると、空気がだんだん暖かくなり、花の種類も変わってきた。


「夏の園に入ったにゃん。もうすぐにゃから、ちゃんと着いてくるにゃん」



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