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謁見の間だってさ

 夏の暑さも落ち着きをみせ、時々涼しく感じる日も出始めた頃、ぼくは王宮に呼ばれた。

 呼ばれたのはぼくだが、父ちゃんも保護者として一緒についてきてくれている。

 なんたって、ぼく、プックルくんは5歳なんだから。


 我が家は貴族でもなく、家にある馬車は伯父さんの荷馬車だけということもあり、王宮から迎えの馬車が来てぼくらはそれに乗る。

 見た目は豪華なんだけど、あんましうちの荷馬車と揺れは変わらんのだな。

 時々ガタコンガタコンと振動がお尻に響いてくる。

 王城への門は馬車の中にいるぼくたちの顔を確認するだけでそのまま通されたが、城へと入るときは武器を預かるといって軽く身体検査をされてしまった。

 父ちゃんは例によって武器はどうせ預けることになるからと持ってきてさえいない。

 ぼくもTPOをわきまえているから、いつものウェストポーチはつけていないよ。


 でも、この服装は肩がこるし暑いし、嫌になってくる。

 コート、ウェストコート、ブリーチズ、上着にはこれでもかと金糸、銀糸で無駄に多くの刺繍がほどこされている。ほんのり水色っぽいパステル調の高そうなこの一式は爺ちゃんが用意してくれたんだ。ほんとめっちゃ暑い。

 最初トランクホーズと呼ばれる詰め物をして玉ねぎ形に膨らませたもの―王子様とかが履いてるかぼちゃパンツみたいなの―を履かされそうになったけど、それだけは断固拒否したよ。


 なんでも今日は謁見の間に行かなきゃいけないらしい。

 お城の人間や父ちゃんに何度も聞いて謁見時の動作やマナーを確認する。

 父ちゃんは一応上位の貴族の子息だったのでその辺の教育は受けてたらしく自然体だ。


 ぼくの口からは「めっちゃ緊張する」自然とそんな言葉が出てきたが、自分の心に問いかけてみるとそんなことはなく、結構落ち着いてた。

 自動発動のスキルの精神制御(微)(自)様のおかげだな。


 何時間待たされただろうか、朝ごはん食べてすぐに出てきたのに呼ばれて着いてくるよう言われたのは昼を大分過ぎた頃だった。

 お茶とお菓子は出してくれたけど、昼ごはん出してくれなかったよ。


 王城内を案内されるまま着いて歩く。その足が止まると再度確認のため謁見の間でどのように振舞うかの説明がなされるので、聞き逃さないようにしっかり心に刻んでおく。

 他にも何人も同じような人がいるみたいで並んで名前が呼ばれるのを待つ。

 前に並んでる人はどこぞの貴族で、新しく当主に代替わりし、その挨拶に来てるみたいだ。

 その人の番が終わって出てきた後、少しするとぼくの名前が呼ばれ、謁見の前へ入っていく。

 人が出入りするたびに大きな扉をバタバタして大変だなぁと思ってたけど、表情を引き締め広間を真っ直ぐと王様と王妃様の方へと歩く。

 部屋の両脇に貴族らしき人たちがたくさんいるみたいで、ちら見したら爺ちゃんと目が合い微笑みかけてくれた。少し緊張がほぐれたよ。

 この謁見の間に来てからどんどん緊張感がアップしてきてたんだ。精神制御スキルがあるとはいえ、効果は微。

 それを超えた分の緊張からは爺ちゃんのおかげでなんとか立ち直った。


 玉座の数歩手前で停まり、片膝を立て頭を下げ、声がかけられるのを待つ。

 頭を下げて床を見ながら止まる場所に目印つけておいてくれてもいいのにと思ったりしている。

 (おもて)をあげよの声で跪いたまま顔を前に向けるが、慣れない姿勢によろめき横にいる父ちゃんに寄りかかってしまった。しっぱい、しっぱい。

 王様は50歳くらいだろうか、(いかめ)しい顔でまっすぐこちらを見ているが、喋っているのは全部隣に立っている初老の男性だ。これが宰相様とかかな。


 謁見の間でのおこないはあくまで儀礼的なものであり、勝手な行動、発言は許されない。

 ほぼ形式どおりに事が進んでいく。


 ぼくがここに呼ばれたのは王国技術開発管理院の設立に尽力したので褒めてやるって内容だった。

 実はなんで呼ばれたのか知らなかった。作法のことばかり気にしてたよ。

 次いでハンモック式の考案者で、初の特許取得者であると言われたところで、周囲の貴族たちからざわめきがおこった。


「我が家の馬車もハンモック式への改造へ依頼しているところなのだ」

「あれはいいぞ。馬車での移動は腰と尻が痛くて困っていたが、ハンモック式にしてそれがなくなった。ついでに家内も喜んでおったわ」

「なんでも許可を受けたところでしか製作、改造をおこなってはいけないとかで、うちのは順番待ちでいつにわからんと言われた」

「ヴァルツォークの神童、20年近く前にその噂はよく耳にしたが、そいつの息子か」


 そのような声がざわめきの中から聞こえてきたが、カツーンという床を叩く音が広間に響き渡り、静かにするようにの声でピタッと騒ぎが収まる。


「既にこの中にも知っているものはいるだろうが、王国技術開発管理院については後日正式に発表をおこなうものとする」


 褒美に金貨100枚を与えるの言葉で(うやうや)しく受け取り、下がってよいの言葉でぼくと父ちゃんはその場を後にする。

 ちらっと横目で爺ちゃんの方をみたら、こそこそとあっちも部屋を出ようとしていた。



 謁見の間を出ると案内の人に連れられ、城内を歩いていく。

 来た時と違う通路を歩いてる気がする。


「これからどちらへ?」


 父ちゃんが聞いてくれた。


「私はお二方をお連れするようにと申し付かっており、案内させていただいております」


 なんか答えになってるようななってないような返事が返ってきたので、黙ってついていく。

 案内された部屋の扉を開けてもらい中に入ると、そこにはアルル様とハルファス伯父さんが待っていた。




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