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コンセルくんのお兄さん

「そういえば、お前が留守にしているときに何度かあの子、えっとぽっちゃりしてあんまし喋らない子」


「コンセルくん?」


「そうそう、コンセルくんだ。彼がなんどか遊びに来たぞ。帰ってきたって言いに一度顔を見せにいってきな」


 父ちゃんのとこに顔を出したらそんなことを言われた。

 なんか夏休みに祖父母のとこに行って留守にしてる間にも何度も遊びに来る子を思い出したよ。

 コンセルくんってどこに住んでるんだろう。お兄さんが学園に通うから王都に一緒に来たって聞いたけど、ヴァルツォーク家で借りてるとこに一緒に住んでるのかな。

 確か学園の近くって行ってたから、行ってみよう。




「こんにちわ~、ここってヴァルツォーク家の管理してる屋敷であってますよね。コンセルくんって子いますか~?」


 王都は塀に囲まれていて、土地が限られているはずなのに、どうしてこうも広い土地をもった屋敷がたくさんあるんだろうか。

 大きなお屋敷の外の門の前に立っている兵士さんみたいな人にコンセルくんのことを聞いてみた。


「そうだけど、う~ん、コンセルって名前の子いたっけかなぁ」


「うちの弟になにか用? 友達?」


 後ろから聞こえた声に振り返る。


「げっ、プックル」


 あ、ハルファス伯父さんの息子のマーカス君だ。でも、かけられた声は違う人のだったよね。

 彼の後ろにいる線が細くて眼鏡をかけた男の子。あ、この世界にも眼鏡ってあったんだ、実は初めてみたよ。

 それはおいといて、その眼鏡をかけたリーグにぃと同じくらいの歳の子かな、声をかけてきたのは。


「うん、コンセルくんの友達でプックルっていいます。マーカス君もこんにちは」


「お、おう、久しぶりだな。ケッセル、こいつは一応俺の従兄弟ってことになるが貴族ではないから雑に扱っていいぞ」


 別にほんとのことだし、気にすることでもない。


「はじめまして、コンセルの兄でケッセルといいます。弟は両親と一緒に家を借りて住んでるから、ここにはいないんだ、ごめんね」


「そうなんだ、それじゃぁ、場所だけ教えてよ」


 そっか、ここは学生寮みたいなものだったか。そりゃ、別に住むわな。


「それより、なんでお前はここに来たんだよ」


「うん、ぼくはしばらくヴァルツォーク領の漁村に行ってて留守にしてたんだけど、その間に何度かコンセルくんが遊びに来てくれたみたいなんだ。昨日ハルファスさんたちと一緒に王都に戻ってきたから、帰ってきたことを伝えようと思ってね」


「マジかよ、昨日父上は王都にいらしてたのか。ということは今日辺り呼ばれるか? それとも観に来るか? ケッセル、裏庭で魔法の練習をおこなうぞ。先に帰っているやつらも呼んで来い」


 初めて会ったときはぼくに突っかかってきたけど、ずいぶん丸くなったよね。


 屋敷の脇を抜けてズンズン歩いているマーカス君の後ろを、ぼくもぴょこぴょこ着いていく。

 そこは広いスペースがあり、向こう側に的も見える。ここが練習場なのかな。なんで学園ではなく住んでるとこの裏にこんなのがあるんだろ。


 マーカス君が呪文を唱え、火の玉を的に向かって飛ばす。

 なんだろ、両手を前に伸ばし、両掌を重ね呪文を唱えると、その少し前の空中に握りこぶしほどの火の玉が現れ、唱え終わった途端飛んでいく。かっこいいよ。

 火の玉は的に当たると弾け、火の粉を撒き散らせて消える。火の玉に破壊力はないのか、的は壊れたりもせずそのままの姿を保っている。


「ユミール神よ、冬を司る巨なる者よ、凍れる礫にて我が前のものを打ち据えろ、アイスボール」


 マーカス君の隣に来たコンセルくんのお兄さんが呪文を唱え、氷の玉を打ち出す。

 氷の玉は的に当り、的を揺らしたが破壊にまでは至らない。ぶつかった氷の玉は砕けるように弾け散り、後には何も残ってはいない。


「ねぇねぇ、魔法って当たったら消えちゃうの?」


「なんだ!? あぁ、プックルくんか。勝手にここに入っちゃ駄目だよ」


 コンセルくんのお兄さんに聞いてみたけど、勝手にこっそり見学してたことを怒られちゃった。

 そんなことより


「ねぇねぇ、どうなの?」


「そうだね、魔法は目標物に当たると、消えてしまうね。でも、火の魔法なんかは当たった対象を燃やしたり、飛び散った火の粉が周囲のものを燃やして火事になったりすることもあるから注意が必要だって教わったよ」


 へ~、魔法って当たった瞬間、対象に異常を与えるけど、魔法その物はすぐ消えるのか。


「生活魔法はちょっと違うんだけどね。水の生活魔法とかって、出した後も消えないでしょ」


 うんうん、なんでだろ。

 氷の生活魔法とかないのかな、あったらこの暑い夏が少しは涼しくすごせるのに。


「ねぇねぇ、氷の生活魔法ってないの?」


「聞いたことないなぁ」


「ケッセル、真面目に訓練しろ! 父上が見にいらしたらどうするんだ」


 律儀にぼくの質問に答えてくれていたコンセルくんのお兄さんに厳しい声が飛ぶ。

 魔法の見学も面白いけど、そろそろコンセルくんの家に行こうかなと思ったが、ある考えが浮かんだ。


 実験だ!


 ここの屋敷の人にマーカス君から頼まれたって言って水を張ったタライを用意してもらった。


「ケッセルくん、お願い!」


 約10メートル先にあるタライに向かって氷の魔法を唱えてもらうよう頼んだ。


「えっ、あれを狙うの? 角度からいって水面を狙うのは難しいよ」


「何を勝手にやってるんだ!」


「目くじらたてることもないだろう、あれを狙えばいいんだな」


「父上!」「ハルファス伯父さん!」


 振り向いた先にいたのは、にこやかに微笑みながらこちらに歩いてきているハルファス伯父さんだ。

 片手を前に突き出し、歩きながら呪文を唱えると、狙い違わず水面に氷の玉が命中し、水しぶきをあげる。

 それを見てぼくは走り寄り確認した。

 タライの水は少し減ったが、水温は低くなり、少しだけ表面に薄っすらと氷が見える。


「マーカス、授業が終わった後も訓練とは頑張ってるな」


「はい!」


 そんなやり取りはどうでもいい、伯父さんの後ろに控えてる兵士さんが小型の盾を小手に装着してるのをみかけ、声をかける。


「ねぇ、その盾貸して!」


「いや、その」


「よい、貸してやれ。こやつはラパウルの息子で俺の甥だ」


「はっ」


 盾を水を張ったタライの上に浮かべる。

『あー』という悲鳴のような声は聞こえなーい、聞こえなーい。

 面倒かもしれないけど錆びないように後で整備してね。


「伯父さん、もういっかいお願い!」


 お願いに快く魔法を唱えてくれたので、結果を確認するためにぼくは走る。


 おぉ、盾の表面にかかった水は凍りつき、タライの表面には薄く氷が張っている。


「ねぇねぇ、この中で一番氷の魔法が得意なのってだれ?」


「ケッセルだ」


 練習していた子は四人いたのだが、その中で一番氷魔法が得意なのはコンセル君のお兄さんらしい。


「続けて何発くらい撃てるの?」


「う~ん、7発くらいかな。それで魔力切れになっちゃう」


「また何か面白いことを思いついたのか?」


「どうだろ、また今度準備してくるから、そのときはケッセル君はちょっと実験に手伝ってね」


「えっ」


「許可する、手伝ってやりなさい」


「それじゃ、ぼくはこれでー」


 伯父さんの後押しの言葉だけ聞くと、ぼくは走ってその場を後にする。



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