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海に浮かんでるのはなに?

 夜には村人と広場に集まりキャンプファイヤー。ていうか広場で少し大きめの焚き火した。

 魚なんかはぼくらにとっては珍しくて美味しいものだけど、村の人にとってはありふれたものなので、ぼくらが自分たち用に持ってきてた野菜なんかを全部放出した。

 帰りの食料は魚とかこの村で調達すればいいことだしね。

 リーグにぃがヴァルツォーク家にまつわるというか賛美するような板芝居を披露し、ぼくとリーグにぃは飲まなかったけど、持ってきてたお酒をみんなで飲んで大騒ぎしてた。

 ついでにぼくはいっぱい働いて稼いだら、ここにあるような食材やお酒を簡単に買えるようになるよって村人たちを(そそのか)しておくことを忘れない。みんな頑張ってね。


 そんなどんちゃん騒ぎも終わり、翌日は多くの村人が朝から海草を取りにでかけている。

 この村なんだけど、あんまし個人で資産とかもつ習慣無いみたいなんだよね。

 お金や道具なんかは村人全体のものって感じになってる。

 今回の件がうまくいって人が外から入ってきたら面倒なことになりそうだから、注意するよう言っておこう。


 昼前から昨日乾かしていた海草を種類ごとに分け燃やして灰にしていった。

 どの海草がいいのか正直なとこわからないので試す必要があるんだ。


 テストケースとして貝殻を焼いて炭酸カルシウムも用意してみた。

 そこからもっと温度を加えようとしたが、即席釜用意した上に生活魔法のリトルファイアを加えてみたが、うまくいったかはよくわからない。

 取り扱い注意の上、水を加えると熱くなったのでちゃんとできたのだろう。

 これを混ぜないものと混ぜたものとでどうなるか試してみるとしよう。


 海草の灰に熱湯を加えしばらく放置した後、上澄みの灰汁をとり、貝から作った水溶液と混ぜ合わせて強アルカリにし、熱して温めながら獣から取った脂を加え溶かしていく。


 おっと、容器が無かった。

 伯父さん、石鹸の型にするのになんかいい入れ物ないかな。

 というわけで、竹を半分に割ったものにどろどろの石鹸を注いでいく。

 無事固まりますように。



 最初の数日は色々試したりやることも多かったが、今では少し落ち着いてきて、ぼくは浜辺を散歩していた。

 足元をじゃれながら歩いていたガジローくんが耳をぴくつかせ、鼻をクンクンとすると海の方を見つめながら軽く吠える。


「えっ!?」


 数メートル先の海には羽の生えた小さな人間?がうつ伏せになって浮いていた。


 もしかして妖精か!?


 ガジローくんが海に飛び込み、前足でばちゃばちゃと……ってやめなさい!

 浮いてる妖精を前足でつつくというか、叩いては沈め叩いては沈めって……


 砂浜から海に走りより、足がつかなくなったところでクロールで近寄っていく。

 妖精を下から掬うように持ち上げ、ぼくの頭の上に乗せる。


「ぷはっ、助かったよ。その子が叩いて沈めるから溺れるかと思った。まぁ、僕らは死なないんだけどね」


 耳のすぐ近くで声が聞こえる。いや、頭の上からか。


「とにかく無事でよかった。ガジローくん、戻るよ」


 おもちゃを取り上げられ、海の上をぷかぷか浮いてるガジローくんに声をかけ、帰りは頭が沈まないよう平泳ぎで戻ってきた。

 砂浜まで戻ると妖精はぼくの頭の上から水をブルブルと体を振って払ってるガジローくんに飛び移って、ロデオのような真似をしながら笑っている。


「やぁ、ぼくプックル、5歳! 君は妖精さんかい?」


「あぁ、そうさ。そっちのガジローくんだっけ? 彼と同じ妖精さ」


 振り落とされ、砂の上に腰を落とした羽人間がぼくの挨拶に答えを返す。

 神様から聞いてて知ってたけど、やっぱガジローくんというかパピィ病の子は妖精なのか。


「君はどうして海に浮いてたの?」


「えっ、おいらにそんなこと聞くの? 妖精に意味なんて聞くもんじゃないよ。楽しさ求めてあっちをふらふら、こっちをふらふらなのさ。ちょっ、やめろよな~」


 妖精はガジローくんに体をペロペロ舐められている。


「ふ~ん、そっか君は楽しんでるんだね。それはよかった」


「えっ、もしかしてガジローくんと会話してるの?」


 驚きながらも聞いてみた。


「あぁ、おいらたち妖精同士に言葉なんて要らないのさ。思ったことは通じるのさ」


「がうがう」


 ガジローくんも、その通りっていう風に吠えている。


「よかったらみんなにも紹介したいんで、一緒に来てもらえるかな」


「う~ん、行ってもいいが意味が無いかな」


 ガジローくんの背に乗った妖精とぼくが村へと歩いていると、リーグにぃが村の方からやってきた。


「プックルくん、やっぱりこっちにいたんだ。うちの父さんが探してたよ」


「やぁ、リーグにぃ。それよりあれ見て驚かないの?」


 ぼくはガジローくんを指差してみせると、少し驚いたような顔をした。


「あれ? ガジローくんの背中が少し光ってるような」


「えっ!?」


「やっぱりさ。おいらたち妖精は普通、人の目には見えないし声も聞こえないのさ。こいつみたいに少し光って見えるってやつさえ稀だって聞くぜ」


 そっか、言えばリーグにぃは信じてくれるかもしれないけど、今回はスルーさせてもらおうか。

 でも、後で神様に報告だけは入れとこうかな。




「伯父さんはなんだって?」


 足早に駆けながらリーグにぃに問いを投げかける。


「海草の準備ができたから、試してみたいって」


 伯父さんの所へ行くと、足元に海草のホンダワラっぽいものが積みあがっていたが、それには白い点々がたくさん浮いている。

 塩の結晶かな。

 海草をひと塊手に取り、からっぽの鍋の上でポンポンと手で叩いてみると、小さな塩の結晶がパラパラと鍋の中に落ちていく。


 あれ~?


 もしかしてこうやって塩とれるんじゃね。

 でも量はとれないか。


 日本の藻塩作りを試そうかと思ったけど、やっぱやめた。

 村の人に聞いたら、ここの土地はあまり雨が降らず、じめじめと湿度が高くなることはないとのことで、陸の方に海の水を引き、天日で長い期間かけて乾燥させ塩を取る方法を試してみることにしよう。

 まぁ、今回は色々やりすぎた感じもするし、塩はお試し程度でいいか。


 妖精を乗せたガジローくんが辺りを走り回っているのを見ながらそんなことを考えた。



 ぼくらは漁村で有意義な10日間を過ごした。

 ある程度石鹸が固まったことを見届け、固まるのを待っている途中のも全部馬車に積み込み村を後にする。

 石鹸やその他は急がず少しずつ作って貯めておくよう頼んである。


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