伯父さん裏切られる
想像以上の売れ行きを見せた洗濯板。今、このビックウェーブに乗らねばどうするんだ、というわけでぼくは馬車の上。
ヴァルツォーク領の外れにある漁村までの道のりを急いでいる。
爺ちゃんとこの領地で海に面しているのは極一部。そして海に面した街なんかはなく、小さな漁村がひとつあるだけらしい。
実は液体石鹸を作らせてる村なんだが、独占契約を結んでいたはずなのに早くも他の商人に販売したりと好き勝手やられてしまったらしい。
一部の村人が商人に売っただけだと思って、伯父さんが村長さんに文句を言ったら逆切れされたそうなんだ。
なんでもその商人の方が高く買ってくれるから、それより高い金を払えだとかなんだとか。
村ぐるみで横流しをやってたみたいなんだ。
作り方を教えて、作ったものを買い取った最初はすごく感謝されたみたいなんだけど、手のひら返しが早すぎる。
独占の契約も口約束なんで伯父さんも強く言えず、信義に反すると長い間定期的に巡回していたその村へ訪れるのをやめ、縁をきるつもりらしい。
伯父さんから聞いた話はあっさりしたものだったけど、実は結構揉めたみたいなんだよね。
そこでぼくは提案してあげたんだ。
ヴァルツォークの爺ちゃんに相談したらって。
領主の後押しで産業はじめたとしたら、それに反することができる村人なんていないよ。
爺ちゃんの領地も潤い、こっちも信頼できる相手に仕事を頼めるなんて最高だよ。
それにあの村ではまだテスト的に作ってた程度で、まだまだ改良できるのにそのことは教えてないし早い段階で切れてよかったと思う。
そんなこんなで目指すはとりあえずヴァルツォーク領の領都なんだけど、ちょっと寄り道ということで、以前竹を植えて育てるようお願いした村へやって来た。
「ふぇ~」
見上げた竹は既に10メートルくらいはありそうだった。
竹は種類にもよるが、1日に1メートル以上も成長したという記録が残ってたりする。
それにしても、成長、そして増えすぎじゃね。
数ヶ月で青々と成長した竹が10本程度、成長途上のも10本くらい、それにちょぴっと土の中から頭を覗かせてるたけのこがいくつか見える。
「これって、以前根っこを持ってきて植えてもらったやつですよね」
「うん、そうなんだけど、ぼくの想像以上に増えてるね。元あったところではそれほどでもなかったから、こっちの方が土地の栄養がいいのかも。これが増えて竹林になるかもだけど、増えすぎないようにしてもらわなきゃ」
「竹って、以前作った竹とんぼの他にどんな使い道があるの?」
よくぞ聞いてくれた、リーグにぃ。
元日本人としては竹の有用性をよく知ってるんだよ。
竹を編んでカゴやザルも作れるし、コップや水筒も作れる。皮は包み紙の代わりになるし、葉からお茶も作れる。枝も……そうそう、竹といえば竹ぼうきだよ、竹ぼうきを忘れちゃ駄目だね。
この村では1泊することになった。
色々とやることがあるのだ。
「それではこちらが契約書になります」
伯父さんが作った契約書に村長さんと伯父さんがサインをし、双方1通ずつ保管することになっている。
石鹸の失敗で伯父さんも慎重になったんだ。
契約は期間が10年で、村人に竹林の管理をお願いするというものだ。
他所の人間には勝手に持っていかせない、そして売らないという内容になっている。
金額については竹林の規模が大きくなる可能性も見越して、毎年見直すようにしてある。
村長さんは大喜びだった。
伯父さんも洗濯板でまとまったお金が入っているので、金銭的には余裕みたいだ。
あれ?
ふと思った。
これってぼくの案で始めたんじゃなかったっけ?
伯父さんに悪気がないのは知ってる。
大人であり、商人であるから伯父さん主導で進めるのは間違ってないんだけどぼくの方でもなんかちゃんと儲けを確保しておきたいかも。
というわけで、ここの地下茎を切りだした。どうせ、すぐ伸びてくるようだし問題ないだろう。
これは爺ちゃんの領都からそれほど離れてないところの村に植えるつもり。
ここのは王都に持っていくとして、新しく植えるやつは領都に素材として送るようにするんだ。
ぼくは竹林の管理をすることになった村人に色々教えていく。
村の中にまで竹林がこないよう溝を掘ってもらったり、竹林が広がりすぎないようにとか、竹ぼうきの作り方も教え、売ったりしたら駄目だけど村の中で使う分には竹ぼうき作って使っていいよとか。
使うことがないことを祈るけど、竹やりの作り方を教え、護衛のおじさんたちに簡単な槍の使い方を指導してもらったりもした。
あと、竹は数十年に一度しか花を咲かせないことも教えておいた。
竹に花が咲いた、悪いことが起きるんじゃないかとか思ったりしたら可哀想だしね。
村ではリーグにぃが板芝居を見せていたり、伯父さんが秋に行商に来るときに欲しいものはないか、困ってたりすることはないかと聞いていたり、取り過ぎないようにと注意の上タケノコの調理法を教えたりと時間はすぐに過ぎていき、宿も無いこの村でその日は村長さんの家に泊めてもらった。




