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買い食いだぞ

「おーい、これはどこに置けばいいんだ?」

「ちょっと待ってよー。えーっと、あっちは掃除が終わってるから、とりあえず、あっちに置いといてよ」


 お店の引渡しが終わり、ぼくらはそこの掃除をし、荷物を運び込んでいる。


「掃き掃除終わった。次はなにする」


 友達になったコンセルくんも手伝ってくれていた。

 ぼくとリーグにぃで生活魔法で使い道がないと思ってた、リトルウィンドというそよ風程度の風を出す魔法を使い、部屋の天井や壁、棚などの埃を落とした後、コンセルくんには床の掃き掃除をやってもらっている。

 父ちゃん曰く、肉串が数本買えるくらいのお駄賃をあげるつもりらしい。

 村で畑仕事の手伝いして芋や果物貰っていたって言うし、そんなとこだろう。


「次は拭き掃除かな。あそこにある襤褸切れを濡らして、いや、先に水を汲んできてくれないかな」

「水だったら僕が出すよ、リトルウォーター」


 行商の旅とかではいつも馬のために水をだしたりしてるので、リーグにぃにとってリトルウォーターの魔法はお手の物だ。

 桶に溜まった水に襤褸切れを浸し絞った後、前の持ち主が残していった棚や机などの家具を子供三人で拭いていく。

 高い場所も椅子を使って器用なもんだよ。


「この机を移動するんですか? ラパウルさん、向こうを持ってください」


 大人はうちの父ちゃんとリーグにぃのとこのお父さんの二人だけ。

 引越しというわけでもないので、持ってくるものは板芝居の板くらいだし、お店もほぼ居抜き物件って言っていい感じにそのまま流用なんで人手はあんましいらないんだよ。


 ものの数時間で荷物の運び込みなど、ほぼ店の準備まで終わってしまった。

 一般向けの商売じゃないから、それほど見栄えは気にしなくていいもんね。

 あ、簡単な看板くらいはつけようか。

 何気に芸術肌の父ちゃんに頼めば何とかなるだろ。


「よ~し、これで終わりでいいんだろ、プックル」

「うん、今日のところはこれでいいと思うよ、オープンは三日後くらいでいいかな。伯父さんはできれば利用するつもりの商人さんにオープン日を伝えてくれると嬉しいな。父ちゃんはオープンまでに看板作ってね」


「うわ~、まだやることあるのかよ。それよりちびっ子たちよ、今日はよく手伝ってくれた。約束のお駄賃だ」


 ぼくら三人は各々銅貨5枚ずつをお駄賃としてもらった。

 自分でもっと大きな額を稼いだりしてるけど、父親からお駄賃として気兼ねなく使えるお金を貰えたのはなんか嬉しい。

 リーグにぃもコンセルくんもラパウルにお礼を言ってる。もちろんぼくもありがとうっていったよ。



「これからどうする? あ、まってよー」


 ぼくの言葉を無視してコンセルくんはスタスタとあっちに歩いていくので、ぼくらはそれを追いかける。

 追いつき追い越し、コンセルくんの進路を塞いで問いかけた。


「どこ行くの? もう帰るの?」

「肉串買う。前より美味しいの」

「確かにこの前のはいまいちだったもんね」


 向かってるのは、この前の中央広場か。

 答えるだけ答えて、ぼくらの脇を抜けて歩き出したコンセルくんの後ろをぼくらはついていく。


「どのお店?」

「あれ」


「そんなに美味しいの?」

「食べたことない。でもいい匂い」


 いや、食べたことないんかい。


「ひとつ」


 ぼくらのことをあまり気にせずコンセルくんは屋台のおじさんにお金を払って串を受け取っている。

 この前のは若いあんちゃんだったけど、この店はおっさんだ。


「うまい」


 おぉっ!


「おじさん、ぼくにも一本ちょうだい!」

「ぼくも!」

「ひとつ」


 ただのおっさんではなく、熟練の職人だったか。

 コンセルくんの言葉にぼくらは肉串を買い求める。

 あれ? ぼくと、リーグにぃと、コンセルくん……?

 二本目かー


「うん、この前のより美味しいね」

「そうだね」


 この前のは硬くてパサパサだったけど、ここのはジューシーでいい焼き加減だった。

 何が違うんだろう。向こうにある若い兄ちゃんの屋台を見て考える。


「赤い粉出す」

「ん?」


「赤い粉。この前の」


 あ~、唐辛子の粉末か。

 コンセルくんの手に持った二本目の串に、腰の袋より取り出した容器からパラパラと唐辛子の赤い粉末を振りかけてあげる。


「美味さアップ」


 ぼくとリーグにぃの串にも振りかけ、肉を頬張ると確かに美味い。

 ぼくらがまだモグモグしてるというのにコンセルくんはまた歩き出した。


「待ってよ~」


 リーグにぃとふたり追いかけようとしたら、後ろから声をかけられた。


「ちょっと待ってくれ。ぼっちゃんたちのさっきの赤いのってなんだよ。ほんとにうちの肉がもっと美味しくなったってのか?」


「舌にピリッとした刺激を与えてくれる赤い粉末が平坦な味を変化させる」


 Uターンして戻ってきたと思ったら、おじさんの問いにコンセルくんが答えてくれた。

 そしてすぐに背を向け、また歩き出す。


「ちょっ、ちょっ、待ってくれって。肉串もう1本ずつサービスするから、俺にもその赤い粉ってのを試させてくれ」

「プックル、出す。美味かったら串二本」


 すごい速さで戻ってきたよ。

 唐辛子粉出せって、はいはい。

 おじさんの手にした串に唐辛子粉をパラパラと振りかける。


「おーーー、うめぇ! 俺の焼いた肉がもっと美味くなった! その粉を俺に売ってくれ!」

「唐辛子粉を? 非売品なんだけど」


 あっ、やばっ!

 唐辛子粉って言っちゃった。

 知る人が名前聞けば材料ばれちゃうよ、唐辛子だって。

 ピリ辛粉とでも名前付けておけばよかったかな。


「肉串二本!」


 はぁ、この子はほんとマイペースだな。


「ほらよ、二本! もってけ! それより君からも頼んでくれないかな。おじさんにあの粉を売ってって」

「知らない」


「ほら、もっとあげるから、ねっ」

「プックル、粉売る」

「コンセルくん、これはぼくのなんだから勝手に決めないでよね。買収されちゃ駄目だから!」


「悪かった。自分間違ってた」


 いつもあまり感情を見せないながらも、今はしょぼんとしてるように見える。


「ぼくも売るのはアリだと思うけどな。おじさん以外にも欲しがる人いるんじゃないかな」

「う~ん、売ってもいいんだけど。自分たち用くらいしか在庫がないし、売るにしても値段をいくらにすればいいかわかんないんだよね。おじさんっていつもここにいるの?」

「おう、大体いつもここで売ってるぞ」


「リーグにぃのお父さんが商人だから、相談してからまた来るよ。それでいい?」

「おう、もちろんだぜ。いい返事を待ってるぜ」

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