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王都の貴族家めぐり

「いかがでしたか?」


 ぼく、父ちゃん、リーグにぃの3人プラス板芝居管理部署長という役付きのサルモ・ルンモという名の小太りのおじさんと総勢4人で上位貴族の王都の屋敷を廻っている。

 リーグにぃの語りが終わるとラパウルがリーグにぃの隣に移動し、目の前の観客に問いかける。

 大広間には椅子が用意されており、貴族っぽい豪華な衣装を纏っている大人や子供が座っていた。

 そして部屋の壁際や後ろには少数であるが使用人も立ち見で観賞を許される家もあれば、観客は貴族だけの場合もある。

 この家は前者で使用人も多く板芝居を観ていた。


 ラパウルの問いかけに、服を着ていても下には筋肉が詰まっていると感じさせる、中年少し手前の男性が立ち上がり拍手をおこなうと他の皆も続いて手を叩く。

 ここの当主は領地におり、王都にはこの長男が常駐し、国の軍務を担っているらしい。


「我が家の先達の勇猛さが伺える素晴らしい話であった。是非父や領地の人間にも見せてやりたいものだ」

「お気に入りいただきありがとうございます。今回ここで披露させていただきました板芝居は献上させていただきますので、お納めください」


「なんと! ありがたい」

「ですが、作成や広める権利は国にございますのでご注意願います」


「わかっておる。自分たちで使う分には問題ないのであろう。他にも我が家にまつわる素晴らしい話があるので、そちらも是非板芝居にしてもらいたい。わしも何か物語になるようなものがあればよかったのだが、残念でならん」

「平和な世というのは素晴らしいものですが、英雄になるには難しい時代ですからね。私どもの部署はまだ立ち上がったばかりで、新しい板芝居を作るにはまだ少し先になる予定です。ですが、なにかよい物語がございましたら板芝居管理部までお申し付けください」


 ぼくらは付いてきてるだけで、サルモさんがうまく話を進めてくれる。

 この人は男爵ではあるが領民のまったくいない領地のため王都で文官として働いており、どこの貴族とも特に深いつながりをもたずやっていたのをアルル様が引っ張ってきた。


 今まで何件も回ったが、大体この後軽くお茶をいただいて、その時に先ほどプレゼントした板芝居のお礼にとお金をもらって終わりとなる。

 別に売りますとか言って渡したわけでも、お金くださいといったわけでもないけど、なんかお金くれるんだよね。それも金貨100枚とか。今までで一番多かったのは金貨500枚、公爵家だ。

 サルモさんに聞いたら、板芝居の代金と披露した代金、それに板芝居管理部というかアルル様にこれからよろしくっていう意味でのお金らしい。

 実はぼくらの分け前はいくらもらえるんだろうかと、そわそわしてる。


 このお茶のときに板芝居の絵を描いた人を聞かれることもあるけど、それは内緒にしている。

 貴族に頼まれて絵を描くとかめんどくさそうだから、という本人からの申し出でそうなった。



 今回の板芝居の披露が終わり、一度アルル様のところへ戻ってる最中だ。

 まぁ、毎回戻ってるんだよね。

 手間だけど金貨持ち歩くわけにもいかないんだもん。数千万円とか持ち歩きたくないよ。

 移動は馬車だけど、馬車の中に置きっぱなしにするわけにもいかないし、持ったまま次の貴族のところに行くっていうのも重いし無用心だし、というわけでお金を預けるためだけに手間をかけている。


「貴族ってお金持ってるんだね」

「そうだな、毎回金貨100枚以上ポンとだしてくるなんて驚きだわ」

「うちの行商の稼ぎ何年分だろう」

「貴族っていっても、大きな領地を持っている貴族だけですよ、お金持ちなのは。うちなんて男爵って爵位は持ってますが、住むには困難な土地で、何代か前の時に唯一あった村が疫病で全滅して以降、村を立て直すこともできず、代々文官として給金を貰わないと生活もままならないくらいですよ。いっそのこと爵位を返上しようと何度思ったことか」


 サルモさんの自虐的な乾いた笑いに誰もなんて言っていいか分からない。


「でも、貴族ってだけで特権あるからいいよね」

「そうだね」

「まぁ、貴族やめてもいいんじゃね。平民も気楽でいいぞ」


 皆各々搾り出した言葉が終わる頃ちょうど馬車も停まった。


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