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叫べ「ステータスオープン」

「ステータスオープン」


 左の拳を天に突き上げ叫ぶ僕にママが声をかけてきた。


「あらあら、今日はなんのお遊びかしら」


「ステータスを見ようと思ったの」


「プックルちゃんはよくステータスなんて知ってたわね。ギルドカードとかに表示されてるやつよね」


 ん???ギルドカード?


「ステータスを見ようと思ったの、それよりギルドカードって何?」


「冒険者ギルドのギルドカードのことよ。あれにはステータスの数値なんかが書かれているの。商人ギルドなんかにもギルドカードはあるけどステータスの数値は書かれてなくってスキルとかだけって聞いたわね」


「おぉっ、冒険者ギルド!!というかステータスって今ここでみれないの?」


「そうよ」


「ステータスを見るにはステータスオープンっていって叫ぶんだって聞いたけど」


「あらあら、あの人ったらまた適当なこと言ってプックルちゃんをからかって」







 拝啓 神様



 ステータスオープンって他の人できないんでしょうか。


 みんな普通にできるんだと思ってました。




「報告受理。該当内容は転移者もしくは転生者のみのものである。冒険者ギルドや神殿で調べてもらうのが一般的である。次回以降対象者への説明に追加予定」






「あらあら、またステータスオープンごっこかしら」


「うん、ポーズを決めてステータスオープンって叫ぶのがマイムーブメントなんだ」





 ちなみに頭の中に浮かぶステータスは




 名前 プックル

 レベル 0


 HP3

 MP1


 力1

 魔力1

 耐久1

 敏捷1

 器用さ1


 スキル なし

 隠しスキル 自動翻訳 精神操作(微)(自)



 とある。

 悲しいくらい最低値だ。

 ちなみに未だに魔法は使えない。


 このステータスオープンってのは声を大きく張り上げ手を上につき出さないと見ることができない。

 そう教わった。

 意味不明な仕様だ。


 そして赤ちゃんの頃はしゃべれず、話せるようになっても、すてーたちゅおーぷんみたいな赤ちゃん言葉だと反応しない。

 そのため今まで忘れてた、もとい使っていなかった。




「プックルちゃん、お買い物にいくんだけど一緒にいく?」


「はーい、いきましゅ」


 手を繋いで露天を歩いていく。


 葉もの野菜に蕪、いや大根か。

 ん、大根?

 サンマが食べたい。

 大根おろしにしょうゆを垂らしサンマと一緒に。

 あー、よだれでそう。



「テス、テス、サンマ、大根おろし」


 翻訳をオンオフ切り替えながら小声口にしてみる。


 サンマは翻訳されてこの世界の言葉になっているようだが大根おろしは翻訳されない。


「大根、おろしがね、すりおろし」


 今度は大根は翻訳されるが、おろしがねもすりおろしも翻訳されない。


「ママー、料理で大根やリンゴを擦ってドロドロにしたりしないの?」


「うーん、ママはプックルちゃんの聞きたいのがどういうのかわからないわ」


 文化的にすりおろすって言葉がないのかもしれんね。


 あー、サンマの塩焼きが……そうだ、大根おろしだけは作っておこうか。


 おろしがねなんか簡単だもんね。




「ママー、この前焦がして穴が開いちゃったお鍋あるでしょ。あれちょうだい」


「あらあら、お鍋なんかどうするの?穴が開いたといっても鍛冶屋さんで直してもらってまだ使うつもりなのよ」



 そっか、この世界でこの時代では鍋といえども使い捨てじゃないんだ。


 現代でもこんなになんでも使い捨てにするようになったのはここ数十年くらいだものな。



「内緒っていいたいんだけど、さっき話した道具を作ってみたいんだ」


「もーう、プックルちゃんったら。もったいないけどママ、プックルちゃんの頼み聞いちゃう。だって可愛いプックルちゃんの言うことなんだもん」


 甘々な母親、もといママなんだから。


 帰ったら早速おろしがね作ってみるかな。






 ・・・我が家には大工道具どころか金槌のひとつも無かった。


 鍋を抱えて現実に呆然とするしかなかったorz

 とりあえず鍋を逆さまにしてポコポコ叩いてたら楽しくなっきてそのまま叩きまくってたらハイになってたが不意に現実に意識が戻った。


 前世と併せればいい大人がなにやってるんだろ。

 やっぱ精神が大分年齢相当に引っ張られてるよな。

 まぁ変に大人大人した子供じゃないほうがいいと思うけど。


 話を戻しておろしがねを現実的にどうすれば作れるかというと。


 ヒゲもといパパに作ってもらう、鍛冶屋に作ってもらう、大工に作ってもらう、といったとこだろうか。


 鍋の裏側から釘みたいな尖ったもので穴が開かない程度に打ち付ければ突起ができるだろう。

 この突起が三角であればなお良いと思う。



 よし、早速



「パパー、お願いがあるんだけど」


「ふむふむ、まかせておけ」



 僕の説明を聞いたパパことラパウルは鍋をもって鍛冶屋に連れてきてくれた。


「プックルよ、パパがそんな器用な真似できると思うかい?」


 線が細く頼りなく見えるラパウルだが、見た目通り頼りないみたい。


 鍛冶屋はドワーフではなく、普通に人族だった。


 この世界に産まれて3年だが未だに人以外の種族は見たことがない。


 聞いた話によるとエルフやドワーフ、獣人なんかもこの世界というかこの町にも少数はいるらしいが、まだ交流範囲が狭くお目にかかれてはいない。


 鍛冶屋は僕の拙い説明を受けながら、鍋の穴を塞いだ後トントントンとリズムよく器具を打ち付け突起を作っていった。


 ラパウルと一緒に鍋をそのまま持ち帰るついでに大根とリンゴを買って帰った。




「ママー、見ててよ」



 鍋の中でリンゴを前後に滑らせるが鍋状なので壁が邪魔して思うように大きく動かせない。


 そのため小刻みに早く動かすしかなかった。

 が、ものの1分もしないうちに僕は力つきてしまう。

 3才児には少しハードだった。



「もうダメ。あとはパパお願い」


 早々に諦めラパウルに頼むとしょうがないなといいつつ猛スピードですり下ろし力尽きていた。

 ちなみに鍋なので少しすりおろすと、たまったすりおろしを別の容器に移す必要がある。

 既存の材料で簡単に作れるということですりおろし鍋になったが形状は再考の余地大いにありだ。


「おちゅかれ。頑張ったパパにすりおろしリンゴどうぞ」


「うぉー、ママ。プックルが俺に優しいぞー」


「はいはい、あなたとプックルちゃんはいつも仲よしさんよ」



 馬鹿言いながらラパウルがすりおろしたリンゴをスプーンですくって食べ……目を見開いてる。


「ほぅ、面白い。そのままかじってシャリシャリした食感とは違い目新しい。あと、この汁もうまいな」


 底に残っているジュース状の液体も飲んで満足気だ。


「あらあら、パパったら全部ひとりで食べちゃって。わたしとプックルちゃんの分もちゃんと作ってくださいよね」


 あきれたママの声にラパウルはうぉーとか言いながら再度すりおろしリンゴを作っている。





 後日知ったことだが、おろし鍋はこの鍛冶屋がいくつか作り近所の奥さんや料理屋に勝手に販売していたそうだ。


 そしてうちのパパことラパウルにはおかげで儲かったと鍛冶屋から(くだん)の料理屋で飯を奢ってそれで終わりだったらしい。


 もっともうちのママがプックルちゃんが美味しい食べ方を考えついたのよとご近所様に吹聴したのが広まった原因らしいが。


 この世界この時代は人の作ったものを真似しても特に問題はないみたいだ。


 日本も数十年前はパクリまくってたし権利がどうこう煩くいい始めたのは最近のことである。


 現代知識でチートするにしても考えないと真似されてくたびれ損になるに違いない。


 特許はないしこの世界は真似放題、ショック。


 世間の厳しさを知ったプックル3歳だった。



 とりあえず報告はあげとかなきゃね。

 権利関係がない社会だよって。

 バグか仕様かは運営(神)次第。

 ちょっとした抜け道をバグと言い張る運営や、自分たちの考えの上をいったと賞賛してくれる運営もいる。

 抜け道をついて楽に生きようというつもりはない。

 この世界に転生させてくれた神様には感謝でいっぱいなんだから。


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