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買えないからってそれはないでしょう

「ガウガウ」

「ぐっ」


 ガタンと何か物が床に落ちる音。


「もお~、ガジローくんたら夜なのに遊んでちゃ駄目だよ」


 寝ぼけ眼をこすりながら横を向くと目と目が合う。


「……」

「……」


 お互い一瞬フリーズしたが、先に再起動したのは相手だった。


「キャウン」


 ガジローを振り払い、取り落とした物を再び手に、ドアから部屋を走って出る。

 ぼくの部屋は窓際にベッドを置いてあり、ぼくを超えなければ窓から出ることはできないのだ。


「ど、どろほぉ」


 大声も叫び声もあげることはできず、口からは空気の漏れたようなかすれた声しかでなかった。

 それでも部屋の外ではラパウルが賊と対峙している。

 後ろからでよく見えないが、賊はナイフか何か武器を右手に持ち、左脇に箱を抱えているのが分かった。

 眠気は吹っ飛んでおり、急速に意識がはっきりとしてきている。

 あれはオルゴール?


 賊の意識はラパウルに向いているようだ。隙をついて攻撃するか逃げようとしているのだろう。

 ぼくは部屋に置いてあったナップザックから解体用ナイフを取り出し賊の後ろから近付いていく。


「馬鹿、逃げろ!」


 賊はラパウルに背を向け……つまりこっちへ向かってきた。


 やばっ!


 相手の下半身へ向けて解体用ナイフを投げ、すぐさま横っ飛びで避ける。

 賊は手にした刃物でそれを打ち落とし、そのまま窓へと走る。

 それを追うラパウル。

 賊はもうぼくの横を抜けている。こっちは倒れていて手を伸ばしても届かない。


「捕まえるの無理なら箱だけでも取り返すか壊して!」


 ラパウルは部屋に置いてあった水差しを手にするとそれを投擲。

 小脇に抱えられた箱にぶち当たり、ぼろぼろと部品が零れ落ちる。

 賊はそちらに一瞬視線を移したが、そのまま窓を越え外へと走っていく。


「ちっ、無理か。プックル、無事か?」

「うん、怪我とかもなにもないし大丈夫。オルゴールも……うん、内部機構のほとんどは床に散らばってるね」


 壊れてしまったけど、ほぼ取り返したといっていいかな。

 内側の凸凹の部品と音を鳴らすパーツさえ盗られなけりゃ構造がばれることもないし問題ないと思う。

 ガジローも目を回してるだけみたいだね。


「なんか嫌な気配がしたから来てみたら、どろぼうって声がするんだもんな。寝室に武器を置いておくべきだったよ」


 今の騒ぎでリーグにぃを除く皆が起きてきたが、戸締りを確認して床につくことにした。

 リーグにぃだけ起きてこなかったが、子供は普通一度寝たら途中でなかなか起きられないのよ。


 警察、いや衛兵に来てもらってもなにか出来るわけでもないし、別に呼びにいかなくてもいいやってことになった。

 実質なにもとられてないし。

 いや、そうだよね。

 深夜に家の中から盗まれたものがないか確認するのも面倒だし、賊は箱以外何も持ってなかったみたいだしいいよね、眠いし。




 翌日、ドンツクさんのところへ相談に行った。


 なにか警備システムが欲しいんだ。今のままだと安心してゆっくり寝ることも出来やしない。

 宿屋や以前住んでた小さな家とかだと父ちゃんが不審な気配を感じることができたみたいだけど、この屋敷は広すぎるらしい。

 爺ちゃんが門番をひとり派遣してくれてるけど、昼間のみで夜は警備はだれもいない。

 大きな屋敷に住んでるとはいえ、たくさんお金を稼いでいるお金持ちじゃないから人を雇うことはできないのよ。


「警備システムだか? あいにくおらは作ったことないだ」

「例えば結界を張って入れなくするとか、指定された場所内に入ろうとすると警報がなるようにするとか、なんかないかな」


 この世界の魔道具で出来ること出来ないことって実はまだよく知らないんだよね。

 勉強しておかなきゃ。


「結界だか。魔法使いが使うとは聞いたことがあるだが、魔道具で結界が作れるという話は聞いたことがないだ。人や魔物が入って来れないようにするには結構魔力を使うはずだで、魔石なんかをエネルギー源としてもすぐなくなると思うだ。警報の魔道具というのもピンとこないだ」

「う~ん」


 床に転がっていた紐を大き目のガラクタ2個に結び、ピンと張らせる。

 そして中に何か入ってるのか振ると音がするガラクタを紐に結び宙吊りにし、それを使って説明する。


「ここに紐があるよね。例えば紐が足元にあったとして侵入者が紐に足を引っ掛けるとする。そうすると紐が揺れて吊ってあるものが音を鳴らす。こういった方式でなんかならないかな」


 警報代わりに使われる鳴子の仕組みを説明してみたが、どうだろう。


「ふむふむ、こういうものがあるだな。だば、それをそのまま使えばいいでねか」

「例えば侵入者が一度引っかかって音がしたとする。そうしたらその時は引き返すかもしれないけど、2回目は仕組みがばれてるから引っかからない。初見殺しの罠ってのはまずいのよ。例えば侵入者には音が聞こえないように屋敷の中にいる人にだけ音が聞こえ侵入が分かるようにとかできないかな」


 ドンツクは何やら考えているようだが、いい考えが思いつかないみたい。

 ぼくも何かアイデアが無いか考えてみる。


 塀のすぐ上に紐を張り、両端に瓶とか壷をくくりつける。

 侵入者が紐にかかると、瓶が倒れ塀から落っこちて音がする。

 あれ?魔道具いらなくね。

 なんか違うな。


 塀の上に有刺鉄線張るのもいいかな。中世のヨーロッパでも針金あったから、こっちでも針金あるよね、たぶん。

 でも見張りがいないと有刺鉄線を切るとかされるので駄目か。


 う~ん、それなら塀の上にスイッチみたいなのをつけ、その上にもう一段塀を乗っける。塀を越えようとすると上から力が加わりスイッチが入る。

 スイッチが入ると光の魔道具が近所にある貴族街との門の門番方向へ明かりの魔道具で点滅などして知らせる。

 コンビニの外についてる赤いランプと同じような感じで、問題があると店外に向け事件をアピールするやつみたいなシステム、あれでいいかな。


 他には結界で出入りできなくするのではなく、薄い通過可能な膜みたいなので、だれかがそこを通ったら分かるみたいなのできないかな。それだと燃費が少しはましだろうし。


 ドンツクにスイッチ式の警報機を提案したら、面白いけど相当費用がかかるんじゃないかって言われた。

 あの価値とかお金のことがよく分かってない彼にだ。

 まぁ、彼にもわかるくらいお金がかかりそうってことだ。


 結局いい案が浮かばないまま家に帰ったら、父ちゃんからそんなに心配ならヴァルツォークの爺ちゃんとこにいって泥棒が入ったこと話して来いって言われたんで、爺ちゃんとこ言って相談してきた。

 そうしたら、爺ちゃんとこから夜にも人を出してくれることになった。

 爺ちゃんがぼくには甘いことを知ってるから、父ちゃんもここに来て相談するよう言ったんだろうな。

 警備システムは塀の上に有刺鉄線を張り、敷地内に物見櫓を建て、そこから周囲を監視するといった方法に決まった。

 有刺鉄線は信用できる職人に作らせ、作り方というほどでもないが情報は秘匿し、同じものは勝手に作らせないようにするそうだ。

 そして同じように有刺鉄線と物見櫓は爺ちゃんの屋敷でも採用するつもりらしい。



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