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改装売り尽くしセール

「ここは爺婆がやってる店だから、利益が出るのは当然だが、それほど忙しくない店がいいさ」

「あんたー、何言ってるのさね。せっかくプックルちゃんが相談に乗ってくれてるのにもっと気張って昔のやる気を取り戻すさね。いまのあんたは枯れちまった感じに見えるさね」


 奥の部屋にいる婆ちゃんにも聞こえてたのか、顔だけ出して爺ちゃんを怒鳴ってる。


「それでプックルくんは何かいい案でもあるの?」

「ない!」

「えっ、ないの?」


 そんなに期待されても困っちゃうよ。


「ぼくが提供できそうな商品は、調理道具、お茶、調味料、魔道具、もう少しすれば竹製品くらいか」

「おぉ、魔道具とか凄そうではないかさ」


「悪くは無いと思うけど、爺ちゃんが魔道具ってのもイメージが違う気がする。魔道具って高額商品でしょ、もっと庶民的なイメージかな」

「ということは、目玉商品を売り出しつつ他の品物も買ってもらうって感じかな」


「そうかな。ぼくは爺ちゃんの希望通りそんなに繁盛しなくて、そこそこでいいんじゃないかな」


 もう若くないんだし、のんびりやっていってもらいたいと思う。




「よってらっしゃい、みてらっしゃい。この奥の通りの店で改装売り尽くしセールだよ。今なら全品2割から6割引だよ!」


 体の前後に宣伝の板をかけ、長い柄の看板を手に爺ちゃんの店がある通りから大通りにでてすぐの場所で呼び込みをおこなう。

 賑やかしに以前作ったラジオ体操のオルゴールも鳴らしている。

 自分でやっておいてなんだが、この音楽は場違いでちょっと変な気分だ。

 もっともどういう時に使ってる曲か知ってるのはうちの家族だけなんだけどね。


 あ、ちなみに看板もちは父ちゃんことラパウルで、ぼくはオルゴールのクランクを回す係。ねじ巻き式ではなく手回しのオルゴールなの。自動で鳴らす目処はまだ立ててない。

 そして地面にはガジローがうろちょろしてる。呼び込み効果があるか知らんが楽しそうなんでいいとしよう。


 さっきから何人かは奥の通りへ行ってくれてるし、不要在庫が売れてることを祈る。


 店では新装開店後に売りたい品は一時的に奥に仕舞い、倉庫として使ってる部屋に山のように仕舞い込まれていた埃をかぶった品を引っ張り出して店に並べてある。

 もちろん分かりやすいように元々の希望価格と、値引き後の価格を同時に表示させたものを商品の前に置き、お安くなった感をアピールすることを忘れない。

 この世界でやってるのを見たことがないけど、効果はあると思う。



「その音を奏でている魔道具を売ってくれないかな」


 そう言って声をかけてくる人が何人かいる。

 ちょっとうっとおしくなってきた。

 そんな気持ちを察したのかラパウルが声をかけてくる。


「それ使うのやめたらどうだ? 音楽なんてなくてもいいだろ。もしくはそれを作るときに試作してた木琴だか鉄琴だかを持ってきて叩くとか、それでいいのでは」


 そういや、そんなの作ってたな。


「しばらく一人でお願い。行くよ、ガジローくん! アルヴァ様、身体強化!」


 ガジローを抱きかかえ、身体強化の魔法を使って走っていく。

 なんか魔法の詠唱文句が教わったものと明らかに違ってきているが気にしない。

 これってお手軽で楽なんだよ。


 歩くのに比べて断然短時間で木琴を取りにいって帰ってきた。

 といっても、直ではなくお店も少し見に行ってきたんだけどね。

 結構賑わってたよ。

 爺ちゃんや婆ちゃん伯父さん、リーグにぃも質問に答えたり会計したりと大わらわだ。

 少しの間、客が来るのを絞ったほうがいいかも。

 一応今までお世話になったご近所様優先ってことで、先に近所で宣伝してから大通り側に移動したんだけど、もう少し時間をあけてから大通り行けばよかった。

 みんなにひと声かけ、客数を絞ることを伝えてから大通りへと戻った。


 父ちゃんを休ませ、ぼくは木琴を奏でていく。

 なんとなく最初に弾いた曲は『ねこふんじゃった』だ。

 小学校のときにちょこっとピアノをかじった人がよく弾いてたのを耳にしたが、捻くれもののぼくはあの曲は習ったこともないし弾いたこともなかった。

 それを記憶を頼りに弾いてみたが、ちょっと楽しい。

 次々に木琴を叩いて曲を奏でていく。

 昔繰り返し弾いて暗譜したものだが、まだ結構記憶というか体に残っているみたいだ。

 簡単な曲から、結構難易度の高い曲まで。でも、ピアノと違って難しい曲は木琴だとやりにくいね。叩くスピードが間に合わない。それに見なくても叩けるほど体が鍵盤の位置を覚えていない。

 気付くと目の前でガジローくんがピョコピョコと踊り?父ちゃんは袋の口を広げておひねりを貰っていた。

 二人とも何やってんだよ。いや、何やってんだよはぼくにも言えることか。


「もう終わり~」


 ぼくの演奏終わりの声に結構な数の拍手が響く。

 娯楽のあまり多くないここで皆が楽しんでくれたのならよかったよ。

 ここで爺ちゃんの店の宣伝をいれれば客がたくさん流れていくと思うけど、今はそこまでする必要ないよね。


「ぼうや、それはどこで買ったんだい?」

「いや~、よかったよ」

「珍しい楽器だね」

「楽しませてくれてありがとう」


 たくさんの声をもらった。

 オルゴールに続いてこれも欲しいって声があったが、自分で作ったの、売り物じゃないのって欲しがる人たちには返しておいた。

 こっちは売ってもいいんだけど、オルゴールと違い、曲を演奏する必要があるから売っても使える人って少ないでしょ。


 また看板を持ってもらって宣伝してたんだけど、しばらくしたらリーグにぃが走ってきた。


「ほとんど品物が売れちゃったから、宣伝はもういいって伝えるように父さんが言ってた」


 そっか、それはよかった。では引き上げるとしようか。




 まだ客は何人かいるが、店の中は随分すっきりしてる。

 ごちゃごちゃと所狭しと並べられていた商品はほとんど売れたようだし、倉庫からもどんどん追加で商品を出してきたようだった。

 婆ちゃんなんかはもう店の奥へと下がってしまっている。


「伯父さん、どう?」

「いや~、倉庫から引っ張り出してきて始めてわかりましたよ。こんなに無駄なものをたくさん在庫として抱えてたなんて。お二人が戻ってきたということは、宣伝ももう止めにしたんですよね。それでしたら今のお客様が皆お帰りになりましたら今日はお店は閉めることにしましょう」


 爺ちゃんも伯父さんも疲れているだろうけど、凄く嬉しそうに接客をしている。

 やっぱ調子よく売れてるって気分がいいんだろうね。



 しばらくして客がいなくなったタイミングで店じまいとした。

 みんなへばっている様だけど、ニコニコ顔だ。

 途中からうちの母親と伯母さんの妊婦組、アンドお付のメイドさんが手伝いに来てくれて、奥で色々とやってくれてたらしい。

 店の奥は人でいっぱいだ。

 ぼくはお疲れ様ということで、作っておいたぬるい麦茶を皆に振舞ったら喜ばれた。

 お茶って高級品扱いだもんね。

 でも、この麦茶って麦を炒って作った自家製麦茶なんだよね。


 少し苦いという声もあったけど、それでいいんだよ。

 日本はお茶をそのまま飲むけど、世界的に見ると砂糖なんかを入れて甘くして飲む国のほうが多かったりする。

 この世界では苦いお茶を主流にするんだ。


 この近辺でチャノキがないのか、遠くの国から紅茶を輸入しているという話で、紅茶は結構な高級品だ。

 チャの葉を完全に醗酵させて作るのが紅茶、半醗酵が烏龍茶、醗酵させないのが緑茶だが、チャの葉を使わない茶外茶、代用茶も結構いろんな種類がある。

 ハーブティもそうだが、草や葉っぱ、花や根などを乾燥させたり炒ったりしたものを煮出せばお茶といえるので、実は代用茶なんて結構容易に手に入るのだ。

 どくだみ茶、かきの葉茶、笹の葉茶、たんぽぽ茶 (たんぽぽコーヒー)、菊花茶、梅花茶、人参茶、そば茶、昆布茶、もうほんとに多くの種類のお茶がある。

 一部チャの葉も使う花茶なんかも混ざってたか。

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