ぼくたちは盗賊ではないよ
「あっ、馬が近付いて来てるよ」
馬が一頭こちらに走ってきており、その後方少し離れたところに馬車が2台停まっていた。
「来てるやつに向かって手を振ってやれ」
ぼくが壊れた馬車から少し離れて手を振ると、馬は足を緩めつつもこちらに向かってくる。
小さな子供がいると分かれば少しは警戒心が薄まるだろう。
馬上の男はまだ50メートルは離れているような場所で止まり声をかけてきた。
「どうしたんだ、故障か?」
「俺たちは盗賊ではないぞ。この馬車の持ち主でもないがな。あそこを見てくれ、倒したオークがいるから」
ラパウルの声に馬に乗った男は剣を抜いてこちらに歩を進めてくる。
ぼくは身体強化の魔法をかけ、ラパウルの後ろへと下がる。
「正しい対処だ。偉いぞ」
ぼくにだけ聞こえるよう小さな声が聞こえた。
「とりあえず説明するから、剣はしまってくれ」
「わかった。だがそこからこっちに近寄ってくれるなよ」
乗合馬車に乗っていたときにこの馬車が襲われてるのをみかけて助けに来たもののあと一歩間に合わず、敵討ちとばかり襲っていたオークを全部倒したこと。
今は持ち物を確認しているところであり、出来れば片づけを手伝って欲しい旨を伝えた。
馬に乗った男は馬車にいる雇い主に状況の説明とどうするか相談してくると言葉を残し戻っていった。
少しして馬車が2台に馬2頭の集団が近くに来て止まると、馬から降りた護衛だと思われる男と馬車の御者席の横に座っていた少し年配の男がこちらに歩いてくる。
「はじめまして、この先の町で商売をやっておりますボウスと申します」
「Cランク冒険者をやってるラパウルだ。そしてこっちは息子のプックルだ」
「ぼくプックル、5歳!」
挨拶はこれじゃなきゃね。でもあと何年使えるやら。
「それであなたは何を希望されるのですか?」
「希望つーか、この壊れた馬車なんかを道の外に出さなきゃ、あんたらも通れないだろうしそれを手伝って欲しいのと、死んだこの三人をこのまま放置するわけにもいかないから、魔法が使える人がいたら穴を掘るのを手伝って欲しいかと」
「馬車を動かすのはこちらとしても必要なので人手を出しますが、墓堀はちょっと……」
「あー、俺はなくなった三人の所持金の半分をもらって、残りの半分はギルドにギルドカードと一緒に渡すつもりだ。それ以外の荷物なんかは全部あんたらが持っていくといい。どうせ俺らは運べないしな」
「そういうことでしたらと言いたい所ですが、あいにくうちのものに土魔法で穴を掘れるような者はおりません。馬車は壊れていることですし、解体してその木で亡くなった方を火葬にするというのはいかがでしょうか」
「あぁ、それでいい。荷物はさっき言ったようにそちらで持っていってくれていい」
「オークはいかがしますか?」
「どうって、森のほうへ運んで捨ててくればいいんじゃないのか」
「全部と言いたい所ですが、さすがに運べないので1体だけでよいので売っていただけませんか」
「それじゃ、銀貨5枚でどうだ?」
「是非! 是非お願いします。そうしますと馬車の荷物よりオークを運んだほうが……」
「銀貨5枚で全部やるから好きにしていいぞ」
「ほんとですか!? おい、私の乗っていた馬車にそこの壊れてる馬車から積めるだけ荷物を積んだら町まで行ってすぐ戻ってきなさい。護衛はふたりで安全にかつ急いでお願いします」
ラパウルは苦笑しながらそれを聞いていた。
「おじさん、オークって高く売れるの?」
「1体で金貨8枚ってとこでしょうか。冒険者がギルドに売る場合はその半値くらいだと思いますが、これでも商人ですから売る伝はそれなりにあるのです。正直なところその馬車の荷よりオークのほうがお金になるくらいです」
さすが商人、お金になるものは無駄にしないその心意気、見習わなきゃね。
ぼくらは馬車を邪魔にならないよう移動させた後、荷台に亡くなった三人を乗せ、馬車ごと荼毘にふす。
火事にならないよう周りに燃えるもの何も無い場所で、そしてより安全に馬車の周囲はぼくの魔法で水をたっぷり撒いておいた。
ひと通り片づけが終わった頃には日が傾いてきており、商人さんは一緒に乗っていかないかと提案してくれたが、ぼくらは道の逆方向の村に乗合馬車の人に宿を取ってもらってることを告げ、その村へと急ぎ足で向かっていった。
暗くなった頃村に辿りつき、なんとか中に入れてもらって宿に向かったら、約束どおりきちんとラパウルの名前で部屋をとってくれてあった。
ギルドカードで本人であることの確認をとると、軽く食事をとってすぐに休んだ。
結構疲れてたみたいで、すぐに瞼は落ち眠ってしまったようだ。




