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助けられなかった

 あと約20メートル。

 目に映るオークは四体!

 幌馬車に繋がれている倒れた馬を貪り食っているやつ、さっき棍棒で冒険者を倒したやつ、倒れてる人間を踏みつけてるやつ、最初にこちらに気付いたやつの合計四体だ。


「なんかもう駄目っぽくない?」


 ぼくの声に返事も無く、一足飛びに飛び込み、一閃。棍棒を持ったオークの腕を斬りおとす。

 棍棒を持ったままの腕が地面に落ちるより早くそのオークの目の前から消え、馬を食べていてこちらに気付いていないオークの首を後ろから剣で突き刺す。

 ぼくはというと、離されないようにラパウルに付いて動いている。


『ウガァァー』


「遅いんだよ、こっちに気付いたときに仲間へ俺達の接近を教えておくべきだったな」


 腕を切られたオークは蹲って腕を押さえているが、他の二体が両手を振り上げこちらを威嚇している。

 ぼくはラパウルを間に挟んでその後ろだ。

 剣を振るのに邪魔にならない程度は離れてオークを睨みつける。


 そういや、あんまし恐れとかないな。

 ラパウルが近くにいるからかな。それともコボルトと色々戦った経験がいきてるのかも。

 以前殴りあったり戦いというより喧嘩みたいなのをしたコボルトのことを思い出した。

 なむなむ感情制御スキル様もありがとうございます。


 馬鹿なこと考えてる間にラパウルが踏み込み横薙ぎでオークの腹を割く。浅いか。

 ラパウルより頭ひとつ以上背は高く、横も倍くらいあるオークはお腹の辺りに赤い筋が走るが、流れ出る血はそれほどでもない。

 傷を気にしたのか視線を下げた一瞬の隙をつき目に剣を突き立てる。

 細身の剣は頭の後ろに突き抜けてはいないが間違いなく脳にまで達しているだろう。

 崩れ落ちるオークを横目にまだ健在なオークの腕を浅く裂くとそのまま返した剣で喉を深く切り裂く。

 吹き出る血をかわすためかすぐさま後ろに飛び退いた。


「ふぅ」


 ぼくの安堵で吐いた息にすぐ声が飛ぶ。


「まだ気を抜くな。森を見ろ、狼だ!」

「えっ!?」


「あっちだ。泣き風の術を食らわしてやれ!」


 ラパウルの指差すほうを見ると狼が数頭こちらを窺っている。

 漁夫の利を狙ってるとでもいうのだろうか。


「さすらう神よ、我がマナをもちて風よそよげ、リトルウィンド!」


 前に突き出した手の先に出来た空気の渦へ腰ベルトにつけた木の筒を引き抜き中身をさらさらと溢す。

 リトルウィンドの声と共に赤い風は駆け足程度の速さで吹いていき、狼の頭上の木の枝に当たると粉を周囲に撒き散らせた。


『キャウン』『クキャン』


 狼の吠え声というより泣き声、くしゃみの様な吠え声がいくつも聞こえる。


「よくやった。しかしリトルウィンドはないんじゃないか。せめてウィンドだろう。今回は上手くいったがあんまり遅いスピードだと避けられてしまうぞ。それに風に色がついてるから余計にまずいな」

「だってウィンドなんて覚えてないんだもん。だから狼が逃げないように上のほうを狙ったんだよ」


 ほんとは直接ぶち当てる魔法のつもりだったんだけど、さすがに生活魔法であるリトルウィンドは威力もスピードも遅すぎた。

 そのため相手には外れると思わせるように離れた場所を狙ったのだ。


「それより、ウィンドリッパーでもアースボールでもいいからトドメを刺しとけ。俺はあそこまで行くのは嫌だぞ」



 以前市場で買った青唐辛子は陰干しして赤い唐辛子にした後、すり鉢で挽いて細かくした。そしてそれを木製の小さな容器に入れ持ち歩いている。

 食用にするには少し失敗したがもったいないのでいたずら用にとってあるのだ。

 いや~、鉄製でたくさんの筋をつけたすり鉢を作ったのはいいんだけど、それを使ってすりこぎ棒ですると、木製の棒が削れる削れる。

 少しだと気にならないかもしれないけど、唐辛子と同じくらいの量の木の削り粕が混ざってたんじゃ食用にはちと支障がありそうなので遊び用なのだ。

 唐辛子を挽いてるときにガジローがいたずらしてこぼしてしまい、その粉が風で宙を舞い大惨事になった時に被害を受けたのはガジローとぼくとラパウルなのだ。

 あの時泣きながら顔を洗い、しばらく目や鼻が熱く痛かったことがあったので、あの場所の危険性を知っているのだ。

 まぁ、もう地面に落ちて宙は舞ってないだろうけどね。


「ゼフィロス神よ、自由なる風よ、我が前を遮るものを絶ち切り裂く刃となれ、ウィンドリッパー!」

「あっ、馬鹿」


 風の魔法は地面をのた打ち回っている狼にブチ当たったが、風の影響で赤い粉末が撒き上がっているのがわかる。

 その失敗の後石つぶての魔法、アースボールを撃っていたが、それって石投げればよくねの声と共にアースボールの魔法より明らかに速い小石が次々と狼を倒していった。

 ちょっ、投石より威力が低いとかこの魔法役立たずじゃん、

 やっぱ帰ったら魔法の勉強しよっと。


「この道ももう少し森から離して作ればよかったのに」

「そうだな、もう少し離れていればオークが森から出て襲ってこなかったかもしれないし、襲ってきても早く気付けたかもしれない。そしてその戦闘のおこぼれを狙おうと狼が来なかったかもしれない。まぁ、かもしれないっていってもしょうがない。護衛の力が足りなかったのが一番の問題だ。護衛は大事だぞ」


「ドワイト伯父さんとこの護衛はどうなの?」

「あぁ、彼らは結構腕利きだぞ」


「リーグにぃも伯父さんも安心だね」

「そうだな。おっ、なかなか」


 話ながらもあちこち調べている。

 オークの死体は全部で四つ、人間の死体は三つ。

 冒険者らしきものが二人にたぶん商人が一人。

 大きな声でオークを倒したことを周囲に向け叫んでみるが誰も出てくることはない。

 やはり全部で三人だったのだろう、逃げ出したものもいないみたい。

 オークはラパウルが倒した四体のみでこの護衛は一体も倒せてなかったらしい。


「それより、そんなことして罰当たりじゃない?」

「何言ってんだ。敵を討ってやったんだし当然の権利だ。それに俺がやらなくても他の奴がやるから同じことだ」


 この世界、結構シビアだ。

 ラパウルは死体を並べて、懐など持ち物を取り出してはその横に置いていってる。

 ギルドカードもあったので見てみるとランクはEだった。

 ランクはSからGまであり、Gは子供の見習い用なので実際には一番下はFでEはそのひとつ上。初心者を脱したばかりといったところかな。

 商人もギルドカードがあるのか。そっちはCの文字が書いてある。


「商人にも冒険者と同じように商人ギルドカードってのがあって、AからCまでとその上に特ランクがあるんだ。こいつはCだから一番下だな」


 ぼくがカードを見ながら首を捻ってたのを見たのか答えが返ってきた。


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