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汚部屋って結局無駄なものが多すぎる部屋なんだよね

 うわ~、ここなに?

 ごみ屋敷?

 いや建物自体は普通だから汚部屋か。


 案内されたのは木造の集合住宅のようなところの一室。

 部屋の中は足の踏み場もないという言葉がぴったりのような有様。

 幸いなことにここで食事などはしてないようで、食べ物のゴミが散乱してたりとかはしていない。

 ここは住居兼作業場なのか、工具らしきものや作りかけなのか、わけのわかんない道具らしきものがそこら中に転がっている。


「あははは、座るとこもないだな。今場所をあけるだでちょっと待ってくろ」


 ドンツクがひょいひょいと床に転がってるものを拾っては部屋の隅に山のように積み上げ、どうにかこうにか少しばかりの空白地を作り出す。

 床に座るのもなんか嫌だし、立ったままでいいよね。

 ラパウルに目配せすると、同意とばかしに軽くうなずく。


「う~ん、出来上がってるものって何があるのかな? 使えそうなものだったら買い取るよ。あ、そうそう、虫が寄ってくる魔道具だけどもっと範囲広くならないかな、5メートルくらい。自分達から少し離れたところに置けばそっちに虫が集まるけど、自分達のところは安全になるんじゃないかな。もしくは虫を寄せ付けることが出来るんだったら、来ないようにはできないかな」

「おぉ、虫が来ない様にだか。できるかもしれねだ。やってみるべ」

「あー、プックルや。興味があるんだったら投資ってことで少しばかし融通してやってもいいんじゃないかな。ちなみに父ちゃんは金がないから無理だからな」


 う~ん、何か買うことによって支援しようかと思ったけど、あんましピンとくるものがないんだよな。

 でも、魔道具職人とか面白そうでコネを作っておくのも悪くないと思う。

 お金が返ってこなくても気にしないって範囲で少し投資というか先払いするのはありかもね。


「わかったよ、前払いということで少しお金を払うよ。とりあえず世間一般に出回ってるやつより光量5倍の明かりの魔道具をひとつ作ってよ。あー、父ちゃん明かりの魔道具っていくらくらいするものなのかな」

「確か小金貨2枚とか3枚ってとこだったと思うぞ。あ、それは簡易でも装飾があるもので先ほど見せてもらったほぼむき出しのものだと小金貨1枚てとこかな。あ、店売り価格がだぞ」


「それじゃぁ、小金貨5枚でどうかな。機能さえあればとりあえずコア部分だけでいいからさ」

「そんなにも貰えるだか!?」

「さすがに高すぎないか?」


 実はぼくにとっても全財産の3分の1くらいにあたり、小さな額ではない。


「今日の生活もままならない状態でしょ、今回は大盤振る舞いだよ。次に同じものを作ってもらうとしてもこんなには払えないからね。それでいつ頃できるかな」

「明日、いや明後日にはできるだ」

「それじゃぁ、3日後にまた来るよ。はい、これは前払いの代金ね」


 小金貨5枚を手渡し、さっさとこの部屋をおさらばした。

 こんなとこあまり長居はしたくないんだもん。


 ちなみにぼくの財布と父ちゃんというか家というか家族の財布は別。

 以前婆ちゃんにもらった小遣いを色々やって増やしてるの。

 学園に行くための学費を頑張って貯めてる最中なの。

 これでもそこそこ小金持ちだけど学費高すぎ!




「やぁ、プックルくん、久しぶり。ガジロー君も久しぶりだねって、えーー、もう生後半年くらいは経ってるよね」


 庭先でしゃがみこんで仔狼が餌を食べてるのを見てた僕が顔をあげるとパーチルさんが目に入った。

 パーチル伯父さんと言うとまだ独り身だからパーチルさんって呼べって言われたんだよ。

 この人はうちの父ちゃんの兄さん。父ちゃんが四男でこの人は三男、20代半ばでまだ独身。

 この世界では少し遅いといえるだろう。

 だがそれも気にせず好き勝手にやってるらしい。

 あんまし貴族っぽくなくて馬車ではなく歩いてうちにやって来てる。

 昔の爺ちゃんは凄い厳しかったらしいけど、うちの両親が駈け落ちしてからはあまり煩く言われなくなって助かったってこの人はうそぶいてた。

 まぁそれはいいや。


「パーチルさん、久しぶり! ガジロー君はたぶん生後半年くらいだよ」


「う~ん、もうパピーコートは卒業して大人の硬い毛になっていてもいいと思うんだけどな。それにサイズ的にもその数倍くらいには育っててもおかしくないはずなんだけど」

「そういえばそうだね」


 足元をうろちょろしてたガジローを抱き上げて撫でるが、毛はふわっふわだ。

 狼なんか毛は結構硬くゴワゴワになると思うんだが、どうなんだろ。

 前世で読んだ本で野生の狼や猪や熊とか動物に抱きついて毛が柔らか~いとかいってるのを見て、そんなわけねーよってよく思ったもんだ。

 サイズも飼い始めて1ヶ月くらいまでは少し大きくなったけど、それからほとんどかわってない。


「小さいね。飼い始めて少しして成長が止まったって?」

「あんまし大きくなったという気はしないよ。最初連れてきたときは父ちゃんの両手に収まるくらいで、今でも両手から少しはみ出す程度なんだ」


「この頃だとどんどん大きくなっていくもんだけどね。もうちょっとたってみないとはっきりと言えないけど、パピィ種かもしれないね」

「パピィ種?」


 聞いたことない言葉だ。


「うん、パピィ病とも言われてる。生まれてからほとんど成長しないんだ。体もだけど心もね。だから野生ではほとんどはすぐ死んでしまうんだ。まぁでも物好きなお金持ちなんかが高値でペットとして飼ったりはするらしいね。それでもそれほど長生きはしないみたいだけどね」

「えっ!?」


「いや、まだはっきりとパピィ種だとはわからないよ。もしかしたらということさ」


 抱き上げていたガジローを降ろすと途中だった食事を再開した。

 普通食事を邪魔すると怒るのだがガジロー君は全然そんなことない。

 未だ餌の肉と格闘しているガジロー君だが、これから成長するよね。

 僕のガーディアンになるんだろ。




 その夜ラパウルにパーチルさんが来たことを伝えた。


「パーチル兄さんはすごい優秀なんだけど、自分がこなす仕事量と同じくらいを上司にもやるよう煩く言って煙たがられた末に部署転換ってことを何度かやった後やる気をなくしてしまったんだよ。本人曰く充電期間だとか。で、なにしにきたの?」


 ぼくはパピィ種のことについて話したが、とりあえず様子をみようということになった。




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