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魔道具職人と出会う

 今日は父ちゃんと雑貨屋さんへお買い物。

 父ちゃんが絵の具が欲しいんだって。


 貴族街に画材屋さんがあるらしいけど、あちらはびっくりするほど値段が高いため、品揃えはいまいちだけど庶民街の雑貨屋の隅に売られている絵の具を買うんだって。

 お店の人が言うには庶民で絵を描く人は少なく、あんまし売れてないらしい。


「これとこれとこれをお願いします」

「銀貨34枚だよ」

「はい、小金貨3枚と銀貨4枚」


 この世界は貨幣10枚で上の貨幣になるが、低い単位の貨幣で金額を言う人も少なくない。

 例えば銅貨125枚みたいにね。

 実際は小金貨1枚と銀貨2枚、銅貨5枚なんだが、いちいち分けて言うと面倒くさくてしょうがないってことらしい。

 まぁそれには同意する。


「お客さんは値切らないのかい?」

「は? いや、だって銀貨34枚ってあんたが言ったんだろ」

「なに? おっちゃんはぼったくろうとしたの? ぼくらはおっちゃんが適正だと思う値段で買ったつもりなんだけど。もっともその値段が他所と比べて高かったりしたら二度と来ないだけだけどね」

「あー、くそっ。お釣りの小金貨1枚だ。これで文句ないだろ」

「???」


 うちの父ちゃんは貴族から庶民に転向したけど、値切ることには無縁だったらしい。

 実はぼくもあんまし好きではないんだけどね。

 誰にでも表示価格で同じ値段で売るほうが好ましいと思う。

 もっとも商売人同士だと値段交渉もしょうがないかなとは感じるけどね。



「いらねーよ、帰った帰った」


 絵の具を買った後、適当に店の中のものを見てたときに店の人のきつい声が耳に入った。

 何事だろうとそちらに目をやると、どうやら売り込みに来てた人が追い返されようとしてたようだ。


「待ってくんろ、これなんかどうだすか。明かりの魔道具だけんども、出回ってる品より光量なんと2倍、すごいだべ」

「いらねーよ、帰ってくれ」

「へ~、すごいね。出回ってるのと比べて持続時間というか、魔石の消費量はどんな感じなの? それと値段は?」

「坊ちゃん、申し訳ないけどうちの店の中でよそ様と商売の話をするのは勘弁してもらえないかな」

「は~い。買い物も終わったし、父ちゃん行こっ。それとさっきの答え教えてよ」


 成人までまだ数年あるような男の子を促しぼくらは店の外に出た。


「さっきの質問だけんど、計測機器持っとらんのでわからんだすが光量2倍で、消費魔石魔力3倍くらいだと思うべ」



 余談だが、実はこの世界に高価だが時計というものがある。

 この時計は魔石の魔力を常時一定量放出して、その消費により時を刻むという構造になっている。

 砂時計の砂の代わりに魔力を使っているのだ。

 それが出来るのも、魔石の残存魔力を数値化して表示させる道具を作った天才のおかげである。

 この前爺ちゃん家で時計を見つたので聞いてみたら、そんなこと教えてくれた。


「光量2倍で消費魔力2倍じゃないんだ、ふ~ん。その光量ってもっと増やしたり明るさって変えることできるの?」

「もっともっと明るくすることはできなくはないけんど、消費量はぐんと上がるだ。それと一度作った魔道具は後で明るさを切り替えたりとかは難しいべ」


「それじゃぁ、光量5倍以上で小魔石で1時間くらい保つのはできるかな?」

「5倍だと小魔石で10分くらいだと思うだ」


 結構短いな。


「それでいいや、5倍のを作ってもらえないかな。えっと、爺ちゃんがお店やってるから、出来上がったらそこに持ってきてもらおうかな」

「うぅぅぅ、すまん、できねーだ。魔石を買う金がねーだよ。今日もなんとかお金を工面するために魔道具を売り歩いてただ」


 はぁ、しょうがないか。えっと手持ちはっと……


「その灯りの魔道具以外にはどんなのを売るつもりだったの?」

「重量軽減の効果をつけた皿とか音があまりしない火打石だろ、それに1メートルくらいの範囲の虫が寄ってくる道具だな」

「なんかパッとしないものばかりだな」


 父ちゃんの言うとおりだ、しょぼいよ。


「材料がなかったで、うちにあるものを使って作っただ」

「お兄さんの家行ったら他にもなにかあるの?」


「お兄さんだなんて、こっぱずかしいだな。おらはこれでも30過ぎだど」

「ということはハーフリングかな」

「惜しいだ。ハーフリングとドワーフのハーフだ」

「父ちゃん、ハーフリングって?」


「人族より小柄で俊敏、手先が器用ってのが特徴かな。ドワーフも人族より小柄でがっしりとして器用だが少し鈍重でひげもじゃだな」

「そんなとこだべ。おらは髭も薄く見た目はハーフリングよりだな」


 ほう、ドワーフの血を引いてるのか。物づくりは得意な種族だな、たぶん。

 でも武器とかってイメージだけど魔道具とかもいけるんだろうか。


「うちさ来るだか?」

「どうする? プックル」

「行ってみようか。それよりお腹空いてるんじゃない? さっきからギュルギュルお腹が鳴いてるのが聞こえるよ」


 そう、さっきからこの人お腹押さえてるし、そのお腹はギュルギュル、グウグウ鳴ってて気になってたんだよね。

 お金が無いって言ってたし少し恩を売っておこうか。


「実は一昨日の夜からなんも食ってないだ。水を飲んで腹を膨らませてるだが腹の虫が時々泣いてるだ」

「わかったよ、露天で何かご馳走するよ。お腹に優しそうなものはっと」


 肉の串焼き、パン、肉の串焼き…… ん? 麦粥か? やけに安いが胃には優しそうだな。おっ、あっちには豆のスープがあるな、あれでもいいか。


 麦粥と豆や野菜の入ったスープを買い、麦粥はひと口味見させてもらった後……に渡した。

 って名前聞いてねーや、それに名乗ってもねーや。


「そういえば名前名乗ってなかったね。ぼくプックル、5歳!」

「おれプックルの父ちゃんラパウル、23歳!」


 さっき買ってきたエールを口にしながら、とぼけた事言ってるラパウルを睨みつけてやったら目を逸らしやがった。

 真っ昼間からエールを飲んでるが酔ってるわけではないと思う。

 一杯目だし、このエールはアルコール度数が低く未精製だからすぐには酔わないと思う。

 以前、ちょこっと味見してみたからね。

 エールは水代わりに飲んだりするし、栄養源としても重宝されてるらしかった。


「おら、ドンツクだ」


 匙で粥をかっ込みながら、合間に口から麦粒を飛ばしながら名前を名乗るのは、ちょいとばかしばっちぃ。

 名乗った後、ドンツクは一気に食べてしまい、皿と匙をお店に返しそこをぼくらは後にした。


 麦粥は塩味のシンプルなもので悪くは無かったが、白飯は無理にしても麦飯でいいから食べたいな。

 一時期健康ブームに乗って、発芽玄米だとか、押し麦だとか、雑穀ご飯とか色々食べたことはあるけど、実は麦だけの麦飯って食べたこと無いんだよな。


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