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お城に呼ばれたぞ

 あるところに気の優しいコボルトがおったそうな。

 そのコボルトは近くの村に住む人間たちと仲良くしたかったが、村に近づくと子供たちは恐れ、大人達は棒を持って殴りかかってくる。

 それでも仲良くなりたかったコボルトは友達のゴブリン君にそのことを相談しました。

 するとゴブリン君は『ぼくが村で暴れるからそこにコボルト君が来てぼくをこらしめる芝居をしてくれればいいよ。そうすればコボルト君が怖くないって村の人もわかるはずだよ』なんて提案をしてくれました。

 コボルト君はその提案にのってゴブリン君をやっつけるふりをして村人達と仲良くなることができました。

 そのことが嬉しくてゴブリン君にお礼を言おうと会いに行ったら置手紙が置いてあり『ぼくと仲良くすると君も悪い魔物だと思われてしまうので、ぼくは旅に出ます。離れてもぼくはずっと君の友達です』そう書かれていた。

 その手紙を読んだコボルト君はその手紙を読み、涙を流しました。



 泣いた赤鬼をパク、いやオマージュして泣いたコボルトを板芝居のストーリーとして書き上げた。

 もちろん最後にこの物語はフィクションでありではなく、ゴブリンもコボルトも実際は恐ろしい魔物なので近づかないようにとの注意文をいれておいた。


 先日の一件もありこんな話を書いてしまったが、もっとわかりやすいのがいいかもとシンデレラと白雪姫を適当にパク、いやオマージュしたものも書いておいた。

 登場人物とかは適当に代えたけどね。

 シンデレラで魔女がカボチャの馬車とかだしてくれる話だったけど、この世界は魔女というか魔法使いが身近にいるので配役を精霊に代えたりとかね。

 あと、紙芝居といえば黄金バットというイメージがあるけど、残念ながら黄金バットのはなし自体見たことも聞いたこともないから書けなかった、残念。



 そんな感じで色々やってたら、登城するようにとの命令が届き、父ちゃんとおまけでぼくまで城に行くことになった。

 なんか態度の悪い小役人っぽいなんたら準男爵ってのが偉そうに命令書を読み上げてたが、一緒についてきてた兵士が耳打ちすると急にへいこら下手に出始めた。

 さっきヴァルツォーク家とかちらっと聞こえた気がした。


 どうやら以前爺ちゃんを通してお願いしてた板芝居を国が管理するって話に進展があったみたいで、現物も持参するようにとのことだった。


 お城に呼ばれ王様に謁見か、とかびびってたがそんなことなかった。



「まだかなぁ」

「どうだろなぁ」


 約束の時間にお城に来たのだが、1時間以上待たされている。

 一応来客者用の個室みたいなとこだが暇だ。

 あまりに暇なので板芝居を読む練習を始めてみた。

 どうせ披露させられるんだろ。

 リーグにぃがいればやってもらえたんだけどな。

 もう30分ほど待たされたところでメイドさんが呼びに来てぼくらは部屋を移動した。


 移動した部屋では5人ばかし偉そうな人が座って待っていたが、その中に爺ちゃんの姿もあった。


「はじめまして、ラパウルと申します。お呼びとのことで参上いたしました。こちらは息子のプックルです」

「はじめまして、プックルです」


 さすがにこの場面でいつもの『ぼくプックル、5歳!』は言えなかった。

 それと向こうは誰一人名乗ってくれなかった。



「なぜこのような小さな子供が一緒なのだ!」

「我が孫に向かってこのようななどと、口を慎め! そもそも今回の案はその小さな子供であるプックルの提案によるものじゃ。お主らに見せた資料もすべてプックルが用意したものであり、ここに呼ぶことになんら問題はないはずじゃ」

「なんと! ガイネル、冗談ではあるまいな」

「軍を辞めたと思ったら板芝居とやらか。お主も好きに生きておるの」


 なんか勝手にガヤガヤ騒ぎ始めた。

 あ、ガイネルってのは爺ちゃんのことだな。ガイネル・ヴァルツォーク。


「はっ、勝手をして申し訳ございません。ですが、どうしても妻と一緒になりたかったもので」

「よいよい、わしも黙って見ておらずガイネル殿にひとこと言ってやっておればと悔いておったのだ」

「そんなことより本題に入るとしようではないか」

「そうじゃの、ラパウルとプックルだったか。お主らの提案を見せてもらった。その板芝居とやらを使って国内の農民などにも王家をより敬うようにするといった話だったか。本当にできると思うか?」

「ほらっ、プックル。父ちゃんはよく知らんからお前が答えろ」


 ラパウルが肘で小突いて促してくるが、あんたの肘の位置は高すぎてぼくは頭を上からゴツゴツやられることになってんだよ、やめろよな。


「以前私は行商をしております伯父について村々を廻ったことがありゅます」

 痛っ、舌噛んだ。


「いつも通りの話し方でよい。無礼だなどという輩がおればこのわしの拳骨を喰らわしてやるわ」


 爺ちゃんがそう言って他の人たちを見回し、文句ないよなっていう風に睨みつけてる。


「そんじゃ失礼します。えーと、ぼくが村々を見て廻った感想なんだけど、村では王様や貴族様のことを一応敬っているけど今の自分達の生活に精一杯で皆様方であれば当然ご存知のようなこの国の成り立ち、マルタスク侯爵様のご先祖様の竜退治の活躍の話など知りません。それをこの板芝居で皆に語って聞かせようと考えております。

 村には娯楽もほとんどなく、喜んで話を聞いてくれると思います。似たようなもので吟遊詩人などがいますが、板芝居は語り口も簡単で絵もついていることから学のないものにも受け入れられやすいと存じます」


「3代前の我がマルタスクの偉業を知らしめることは大事よの。プックルといったか、まだ幼いのに我が家のことを知っておるとは流石に神童と呼ばれたラパウルの息子だ。もちろんわしは今回の話には賛成するぞ」


 誰も名乗ってくれなかったから知らなかったが、上手くいってるとホッとしてたら『○家、隣国との戦争での活躍、それに』なんて小声でラパウルが話しかけてきたので『それよりここにいる人の家名だけ教えてって』教えてもらった。


「もちろん貴族などの身分が高く学のあるものなら当然知っている隣国との戦争で大軍勢を少数の手勢で押し留め国を守った勇敢ながらも悲しい話なんかも、そして……」


 とりあえずここにいる人たち全員の家の有名エピソードを話し、こういった話はもっと国のみんなが知っていたほうがいいよねってリップサービスをしておいた。

 この前図書館で色々調べておいて助かったよ。


 みんな上機嫌だと思ったら、急に言い合いが始まった。


「マルタスク家からこの件を取り仕切ってもらうものを出してもらう予定であったが、やはり我が家で人を出そう。この話は文官の家系より武門に優れた我が家のほうがいいと思うのだ」

「何をいっておるのだ、うちがやるぞ!」

「そもそもうちの孫が言い出した話しだぞ。やはりヴァルツォーク家主導ででやるのが筋だろう。そもそもお主らはどいつもこいつも乗り気ではなかったではないか」

「まぁまぁ、それよりラパウルとプックルくんだったか、君たちは下がってていいよ、少ししたらまた呼ぶからね」


 控えてた騎士に促されて、ぼくらはまた最初の小部屋へと戻された。


「さっきの話で分かったと思うが、あの部屋には親父の他に公爵が二人、侯爵一人、王族である王弟様がいらっしゃった。ちなみにうちの国は三公五侯といって公爵家が3つと侯爵家が5つあるからあの部屋にいた方以外にも上位貴族の方がいるからな」

「話がまとまるのかな。あそこにいた人たちは最初はあまり興味がなさそうだったのに、自分の家の有名エピソードを世間に広められるって知って随分興味をもったみたいだからね」


 ぼくとしては庶民の娯楽として紙芝居を程度に考えてたんだけどな。

 それプラスぼくも少しお金を稼げればねって。

 同業、競合排除のために権力者に擦り寄るのは間違いだったかな、少しめんどくさいかも。


 少ししたらまた呼ばれるのかと思って待っていたが、暗くなっても呼ばれることはなく、今日のところは帰ってよいとそのまま城を後にすることになった。


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